超能力、学園決戦 其の弐
僕らの居場所を感ずかれて、やばいんじゃないかと思っていた時だった。僕らの目の前の超聴力少女の髪の毛が突然に炎に包まれた。
僕はびっくりして
「うわっ! 」
と声を上げてしまったのだった。
隣でひかるは僕の手をぎゅっと握ると小さな声で
「慌てないで。明菜さんよ」
と言って校舎の入口の方を指差したんだ。そこには右手を超聴力少女に向けて伸ばした明菜さんが立っていた。目の前の超聴力少女は自分の頭を手ではたいて必死に火を消そうとしている。ひかるは僕の手を引いて明菜さんの元へ走り寄って行ったんだ。そして明菜さんの手を取った。
つまり、ひかるを真ん中にして左右に、僕と明菜さんがいる。三人が手をつないでいるんだ。敵の生徒たちには僕ら三人が見えなくなったってことさ。
僕は明菜さんが味方してくれた事が嬉しかったし、ほっとした。けれども、僕は助けてもらってばかりで情けないとも強く思ったんだ。僕にも何かできる事はないだろうかと考えたよ。
超聴力少女は駆け付けた敵の仲間達にようやく火を消してもらっていたけれど、髪の毛はほとんど無くなっていた。それでも整った顔にやけどしていないのは不思議だった。
「どうやらやつの仲間が来ているようだな 」
葉月健二は辺りを見回しながら言っている。そのうち、ぞろぞろと健二の周りに数人の生徒達が集まって来た。全部で七人。僕は頭の中で敵の事を整理してみたんだ。石を飛ばす葉月健二、重力を扱う者、髪の毛を飛ばす者、超聴力少女、どんな力を持っているのか分からない者が三人ということになる。
対してこちらは、ひかる、明菜さん、役に立たない僕、今のところ三人で、攻撃に適する力を有しているのは明菜さんだけだ。ここは分が悪いんじゃないだろうか。
『今、舞さんと瞬君が付いたわよ 』
頭の中にあかりさんの声が聞こえた。振り返り校門の方を見ると舞先輩と瞬君がこちらに歩いて来ていた。その姿はピンチを救いに来たヒロインの姿で凛々しくて格好良かった。
「よっ! 遅くなった。大丈夫か? 」
舞先輩が片手を上げてこちらを見て言った。僕はなぜか感動してうるっときたんだ。
でも、健二達には僕ら三人が見えていないので、不思議そうな顔をして舞先輩たちを見ていた。
「これは日向舞先輩じゃないですか。今日は臨時休校ですよ 」
健二は訝しげに見つつ、校庭を近づいて来る舞先輩に言う。舞先輩は聞こえないとでも言うように歩を進め、校舎に入って来た。健二の仲間達が舞先輩に向けて居並んだ。
「君たちはくだらないことに超能力を使うな。超能力を持っているからと言って他の者より優れている訳ではないのだぞ 」
舞先輩は健二に言う。あまりに堂々とした振る舞いと言動に健二達はざわついた。
「ほう。ちからとは超能力の事ですか? ならば文字通り普通の能力を超えた力を有している我々が、他の者達より優れているんですよ 」
不敵に笑いながら言う健二は醜く見えた。人の事を見下す姿勢が僕にはどうしても好きになれない。僕はひかるから手を離し健二の前に立った。どうしてそんな事をしたのか分からない。だって僕は弱虫だ、それは僕自身がよく知っている。それでも、健二にちょっかいを出されて、みんなに助けてもらっている自分が情けなかったからかもしれない。
「おっ! 望月! いつの間に! そうか、君の仲間と言うのは日向先輩とそこの子供と言う訳か。どんな力が貴様らにあるか分からないが、俺は組織に認められた者だ。貴様らには灸を据えてやる。そして我らに従ってもらうよ 」
健二がそう言うと、健二に従うやつらは僕の周りを遠巻きにぐるっと囲んだ。今更ながらとても怖いっ!
「山崎! 望月の足を止めろ! 」
健二が小柄な男子生徒に命じた。男子生徒は一歩前に出ると僕を鋭く睨んだんだ。僕は何をされているのか分からない。瞬君の力が効いてくれているので分からないんだ。僕がきょとんとしていると健二は得意そうに言った。
「ふふふ。この山崎は人の動きを止める事が出来るのさ。まだ能力的に弱いから足の動きしか止められないけどな。それでもお前が姑息に逃げることはできないってわけさ 」
ご丁寧に山崎とか言う生徒の能力を教えてくれた。健二って案外おしゃべりなんだなぁ。僕は平然とした顔で、舞先輩の所へ歩み寄ったんだ。
「や、山崎! 動けるじゃねえか! お前、そんなに力がないのか! 」
健二は驚いて山崎を怒鳴った。怒鳴られた山崎は顔を真っ赤にしている。そしてぼそりと言った。
「健二さん。多分、僕のせいじゃないよ。僕は力を出している。嘘だと思うなら健二さんは動ける? 」
「何!? ん!? う、動けない……。わ、分かった。お前の力を認めよう。早く俺の足を元に戻せ 」
「ふん。分かったよ」
山崎は反抗的な視線を健二に送り、ぷいっとそっぽを向いたのだった。
健二は改めて僕らの方に向き直ると目を見開いた。次の瞬間、近くにあったたくさんのスチール製の下駄箱が僕らに迫った。
『がっ、ががががーっ』
すごい音がして、僕らの周りを下駄箱が取り囲む。僕らから距離にして三メートルほどだ。きっと、その三メートルの範囲を瞬君の力でガードしてくれているんだろう。ふと横を見るとひかると明菜さんがちゃんと僕の傍にいてくれていた。
これからどうなっちゃうのか、僕は不安だった。だけれど、僕も逃げずにきちんと立ち向かおうと思っていた。




