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へなちょこESP倶楽部  作者: 鳥越 暁
連れ去られる超能力者
14/18

絆創膏

 「物体移動能力と重力操作能力ね。」


 ひかるは僕が出会った二人の『消えた生徒』について、そう言ったんだ。


 「僕のはなんて超能力(ちから)なの? 」


 「優太君は物体加力能力だよ。物体移動能力も物体加力能力も念動力というカテゴリーに分類されるわ。舞さんは空間移動能力と超運動能力。私は自己消失能力と能力感知能力。瞬ちゃんは治癒能力。」


 「ふうん、色々あるんだね~。」


 「うん、ドイツの超能力を研究しているアウグスト・ケンベルという学者が、98の能力に名付けたのよ。彼によると殆どの能力者は二つ以上の力を持っているらしいわ。ひょっとしたら優太君も持ってるかもね。」


 「はははっ。多分それはないと思うよ~。」


 「あら、どうして? 」


 ひかるは僕の目を覗き込むようにして言った。大分、女の子に慣れてきたけど、ひかるにこんな間近で見つめられると、どきどきする。


 「だ、だ、だって僕の超能力(ちから)なんて、スプーン曲げられるだけだし……。」


 「優太は鍵も曲げたじゃないか。」


 舞先輩が言う。


 「お、同じだよ。スプーンも鍵も。」


 まだ、どきどきしている僕は答えた。


 「違うのよ。スプーンと鍵は。」


 ひかるがにっこりと笑いながら言ったんだ。


 「そうなの? 」


 「うん、昔TVでスプーン曲げを披露していた少年は、決まったメーカーのスプーンだけしか曲げられなかったわ。多分、その材料? その何かに反応して超能力(ちから)が出るのだと思うわ。優太君は色々なスプーンを曲げられるでしょ。最近では500円硬貨も曲げられる。それって凄い事なんだよ。」


 ひかるに言われるとちょっと嬉しかった。


 「でもさ、葉月健二にしろ、あの女生徒にしろ、急に超能力が使えるようになるものなの? 」


 「そこなのよね~。」


 ひかるは下唇を噛んで斜め上を見ながら言った。


 「『能力増幅』さ。」


 ふいにマスターが言った。


 「あ、なるほどね~。さすがマスターね。」


 ひかるの説明によると、多分、能力増幅能力を持つ何者かが、彼らの超能力を強めているのではないかと言うことだった。その増幅させる力の効力が切れれば、彼らの力も弱まると言っていた。


 「ただし、その超能力(ちから)が、増幅されている間に本当に覚醒する可能性はあるわね。」


 「つまり、彼らの力が、本物になる事もあると言う事だな。武術でも同じような事があるな。師範の真似をしていて、いつの間にか自分のものにしている事が多い。」


 「そ。そう言うことね。」


 「僕はどうすればいい? なんか怖いよ……。」


 僕が言うと、ひかるも舞先輩も考え込んでしまったんだ。


 「なあ、ひかる。瞬はどうだ? 」


 舞先輩が、急に言った。


 「あ、そうね。頼んでみるわ。」


 ひかるはすぐに電話をかけはじめた。


 「あの、舞先輩。どういう事? 」


 「ああ、瞬の能力は分かるな? 」


 「うん、治癒の力でしょ。」


 「そうだ。怪我をしている時は、怪我を治してくれる。怪我をしていない時に、瞬の力を与えてもらうと、ガードしてくれるんだよ。」


 「? ? よ、よく分からないんだけど……。」


 「うーん。私は説明が苦手なんだが……。 つまりだ、怪我をした時に絆創膏を貼るだろう? その絆創膏は傷を治してくれる。だが傷のない時に絆創膏を貼る。その後で、その場所をぶつけても怪我はしないだろう? つまり怪我しないように守ってくれるわけだ、絆創膏が。分かるか? 」


 「舞さん、下手な例えね~。」


 ひかるは電話を終え、笑って言った。言われた舞先輩は『だから説明は苦手だといっただろう』ってむくれてた。


 「な、なんとなく分かったよ。つまり瞬ちゃんの力が、絆創膏なんだよね? 」


 「そ。そういうこと。」


 「あの、瞬ちゃんは力を使うと、成長が止まっちゃうんじゃないの? 大丈夫なのかな? 」


 「大丈夫って、言ってるわ。傷を治すのは凄いエネルギーを使うんだって。でもガードするのはさほどじゃないみたいだよ。ひょっとしたら違う能力かもしれないわ。今度調べてみるね。」


 「そう。なら良かった。」


 それからほどなくして瞬がやって来て、僕に手をかざして言ったんだ。


 「ほい、終わったよ。でも5日くらいね、ガードできるのは。」


 「あ、ありがとう。」


 「いいわ。ちょうど、マスターのニルギリ飲みたかったから。」


 瞬はそう言って笑った。いい娘だな、瞬て娘はって思ったんだ。




 次の日、登校中にやっぱり葉月健二が現れた。


 「おはよう。君には仲間がいるんだって? 教えてくれないかな? その仲間の事。」


 「だから、何の事だか分からないよ。」


 「ふ~ん。とぼけるんだ!? 昨日より痛いと思うよ。」


 葉月健二は冷たく笑った。

 すると、また道の石がたくさん僕めがけて飛んできたんだ。僕はぎゅっと目をつぶって、顔を腕で覆った。体にばちばちと石が当たると思っていたけど、そんな気配がしない。

 顔を覆っていた腕をどかすと、葉月健二の茫然とした顔があった。そして足元をみると、葉月によって僕に向けられたと思われる石が落ちていた。

 この時、僕は絆創膏が守ってくれたんだなって思ったんだ。葉月の顔色が変わり、さらに石ころが飛んできた。今度はしっかりと目を開いてみたんだ。石ころは僕の直前で、僕に当たることなく地面に落ちた。

 葉月は悔しそうな顔をして、呟いた。


 「なるほど。それが君の能力か。僕の力はまだ強くなる。いつまで耐えられるか楽しみだよ。」


 葉月はそう言って去っていった。瞬の力がガードしてくれたとは知らないで、僕の能力と勘違いしたままで……。

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