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へなちょこESP倶楽部  作者: 鳥越 暁
連れ去られる超能力者
12/18

目覚めた南明菜

 南明菜がマスターによって助け出されて1日が過ぎた。それは土曜日の夜だった。

 シーツにくるまっていた天川(あまかわ) (しゅん)と南明菜がそっと目を覚ましたんだ。


 「目が覚めたかい? 」


 マスターが優しく問いかける。


 「あの、私…… 。あの……。」


 南さんは不思議そうな顔をして、みんなを見渡している。


 「今は何も考えなくてもいいよ。」


 舞先輩が、南さんに言った。


 「あ~っ! お腹すいた~っ! マスター、オムライス作って~っ! 」


 甘えるような声で言ったのは瞬だ。


 「まあ、みんな、とりあえずこれを飲みなさい。アッサムだ。」


 マスターの入れてくれたアッサムと言う紅茶を飲むと目がすっきりと冴えてくる。



 それからマスターはオムライスを作ってくれて、みんな一緒に食べたんだ。

 やがて、落ち着いた南さんは、僕らに尋ねた。


 「どうして、望月君や日向先輩がいるの? 私は文部科学省の人といたんだけど……。」


 どうやら、南さんは昨夜の事をよく覚えていないらしい。

 僕らは、昨日、マスターが南さんを助け出した事、精神が錯乱していて、それを瞬が癒した事なんかを説明したんだ。僕らって言ったけど説明したのはひかるだけどね。

 それから、僕達『へなちょこESP倶楽部』のことを説明したんだ。その時に改めて僕と瞬は自己紹介した。瞬は生意気そうな目で、挨拶したんだ。



 ゆっくりと、とてもゆっくりと南さんは今までのことを説明してくれた。


◆       ◆       ◆       ◆       ◆


 私は『あの声』を聞いて、体育準備室に行った。そこには私を含め11人の生徒が来ていた。

 その11人は一人一人、呼ばれて体育準備室の隣りの倉庫に案内された。私は7番目だった。

 倉庫に入ると、そこには薄暗い部屋だというのにサングラスをかけた男がいる。色白で薄気味悪かった。その男はサングラスを取ると、私の目をじっと見た。そこで私は意識がなくなった。


 気がつくと、全面が白い部屋にいた。その部屋には白い机と白い椅子があるだけだった。ドアも何処にあるか分からないし、窓もなかった。気が付くと、学校に文部科学省から視察に来たという『蔵内』って人がいた。蔵内は私にテストがあるからと椅子に座らせたわ。そしてテストを受けたの。そのテストは裏返されたカードの絵柄を当てるものや、複雑な紋様の絵を見せられ、その中に隠された文字や、記号などを当てるという物だった。ちょっとしたクイズみたいだなって思ったわ。


 そのテストが終わりしばらくすると、蔵内が現れて、『君には人にはない能力がある。君の能力は選ばれた人しか持ち合わせていない。やがて君の能力は世の中の人のためになる。その才能を活かすため、文部科学省は君のサポートをする。ただし、君の能力はまだ小さなものであり、これから訓練をしなければならない。』と言ったの。今考えると突拍子もない事を言われているのだけど、その時は何も考えていなかった。ううん、考えてないというより、考えられなかったのかもしれない。


 それから、どこから現れたのか小柄な小太りの少年がやって来て、私の背中に手を添えた。すると指先が熱くなり、机の上のボールペンが燃えたの。びっくりしたわ。1時間後には蝋燭を手渡されて火がつくように念じろと言われた。私は言われるまま念じると蝋燭に火がついた。それからは1時間ごとに蝋燭を手渡されたけど、火が着いたのは、はじめの2回だけだった。私にはできないと思ったけれど、1時間ごとに念じろと強要されて、なぜか嫌だとは言えなかった。火をつけなくちゃいけないって思っていた。とにかく、とても長い時間に渡って蝋燭を手に念じていたの。


 どれ位の時間がたったのだろう。私はひどい頭痛と吐き気がして、休ませてくれと懇願した。だけど、受け入れてもらえず、『念じるんだ』と蔵内は言うだけだった。どんどん頭痛がひどくなり、頭の中で意味不明の声が聞こえたりした。『もう、やめて! 』と心の中で叫んだの。視界が狭くなり目眩が襲い、辺りが白くなった。そして気づいた時にはここにいた。


【ここにいる人たちはこんな話を信じるだろうか? 自分でも夢のような気のする話だ。いや、この人達は信じてくれる気がする。私もこの人達を信じよう。】


◆      ◆       ◆       ◆       ◆


 南さんの話を聞いて、ひかるはとても難しい顔をしていた。僕には、とんでもないことに南さんが巻き込まれたんだという事くらいしか分からなかったんだ。



 「さあ、寝よう。明日はみんな家に帰るんだぞ。」


 マスターはそう言うと、みんなが雑魚寝する店内の明かりを消した。

 僕は眠りの世界に落ちていきながら、ふと思ったんだ。『あの声』を聞いて集まったのは11人。あと10人はどうしたんだろう……。

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