4人目のメンバー
【あげは】に入ってきた少女は、いきなりこう言った。
「ひかる姉! 何? 用って? あたし、これでも忙しいんだけど。」
おお。こまっしゃくれている子だなぁって思ったんだ。
「ああ、久しぶりね、瞬ちゃん。待ってて、今、マスター起こすから。マスターが呼んだのよ。」
「マスターか。なら仕方ないわね。」
その少女は腕を組んで、目を『ぱちくりっ』っとさせて、店内を見渡したんだ。
そして、僕の傍で震えている南さんに気付き、とことこって寄って来たんだ。
僕はその子に、挨拶をする。
「こ、こんばんわ。僕は…… 。」
自己紹介をしようとする僕を手で制して、その子はこう言った。
「挨拶は後! この娘ね。マスターがあたしを呼んだ訳は……。」
「そうだ。瞬、よく来たな。悪いな、こんな時間に呼び寄せて。」
起きてきたマスターがその子に言う。
瞬と呼ばれた子は、にこっとマスターに向けて、笑うとこう言った。
「ううん、いいの。マスターの頼みは断れないわ。あたしも暇だったしね。」
え~っ! さっきは忙しいって言ってたじゃん! それに態度が違う! 今までの『つんけんっ』した態度じゃなくて、なんか女の子って感じだ~っ!
「じゃあ、早速、取りかかるわね。」
そう言うと瞬と呼ばれた少女は、そっと南さんに近づいた。気がつくとマスターが大きなシーツを持って来て、ふわりと二人を包むように掛けたんだ。
シーツから顔だけ出した瞬はこう告げた。
「少し時間がかかるわ。たぶん1日は。」
「そうか。焦らないでくれ。明日は店は休むから、じっくりと頼むよ。」
そうマスターが言うと、瞬は黙って頷くと、シーツの中に入り込んでいった。
その後、僕はひかるに教えてもらった。
あの瞬って子は、体は小さいけど、高校一年生なんだって。どうみても小学生高学年って感じだったから僕は驚いたんだ。そして、あの瞬って子は、『へなちょこESP倶楽部』のメンバーなんだって。
天川瞬…… 隣町の公立高校の1年生。彼女が持っている超能力は『治癒の力』なんだそうだ。怪我とかを治しちゃう力って事だと思う。
そうか、きっと瞬は、南さんを元気にしてくれるんだなって、僕は思ったよ。
「ねえ、ひかるちゃん。聞いてもいいかなぁ? 」
「ん、何を? 」
「彼女の事なんだけどさ。『治癒の力』って凄いんじゃない? そんな娘がなぜ『へなちょこ』なの? 」
「ああ、その事ね。確かに彼女の力は凄いわ。時間をかければ末期ガンの人でも治癒できるの。でもね、瞬はその力をあまり使えないの。彼女が力を使うと、彼女の成長が止まってしまうのよ。彼女は私達と一つしか違わないわ。でも身長は140cmくらいしかない…… 。」
ひかるは瞬の能力と、その代償について話をしてくれたんだ。
「瞬のあの身長は、彼女が人を救った証なんだよ。」
いつまに起きたのか、舞先輩が呟いた。
ここで僕はふと気付いて、言ったんだ。
「じゃあ、南さんを救うって事は……。」
マスター、ひかる、舞先輩は、悲しげな顔をして、黙って頷いた。
僕はなぜか、悲しかった。自分を犠牲にして南さんを救おうとしているなんて。瞬は理由を尋ねず、すぐに手を差し伸べたんだ。僕が瞬の立場だったらどうするだろうか……。
僕は天川瞬と南明菜がくるまったシーツをただ眺めていた。




