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へなちょこESP倶楽部  作者: 鳥越 暁
連れ去られる超能力者
11/18

4人目のメンバー

 【あげは】に入ってきた少女は、いきなりこう言った。


 「ひかる姉! 何? 用って? あたし、これでも忙しいんだけど。」


 おお。こまっしゃくれている子だなぁって思ったんだ。


 「ああ、久しぶりね、瞬ちゃん。待ってて、今、マスター起こすから。マスターが呼んだのよ。」


 「マスターか。なら仕方ないわね。」


 その少女は腕を組んで、目を『ぱちくりっ』っとさせて、店内を見渡したんだ。

 そして、僕の傍で震えている南さんに気付き、とことこって寄って来たんだ。

 僕はその子に、挨拶をする。


 「こ、こんばんわ。僕は…… 。」


 自己紹介をしようとする僕を手で制して、その子はこう言った。


 「挨拶は後! この娘ね。マスターがあたしを呼んだ訳は……。」


 「そうだ。瞬、よく来たな。悪いな、こんな時間に呼び寄せて。」


 起きてきたマスターがその子に言う。

 瞬と呼ばれた子は、にこっとマスターに向けて、笑うとこう言った。


 「ううん、いいの。マスターの頼みは断れないわ。あたしも暇だったしね。」


 え~っ! さっきは忙しいって言ってたじゃん! それに態度が違う! 今までの『つんけんっ』した態度じゃなくて、なんか女の子って感じだ~っ!


 「じゃあ、早速、取りかかるわね。」


 そう言うと瞬と呼ばれた少女は、そっと南さんに近づいた。気がつくとマスターが大きなシーツを持って来て、ふわりと二人を包むように掛けたんだ。

 シーツから顔だけ出した瞬はこう告げた。


 「少し時間がかかるわ。たぶん1日は。」


 「そうか。焦らないでくれ。明日は店は休むから、じっくりと頼むよ。」


 そうマスターが言うと、瞬は黙って頷くと、シーツの中に入り込んでいった。





 その後、僕はひかるに教えてもらった。

 あの瞬って子は、体は小さいけど、高校一年生なんだって。どうみても小学生高学年って感じだったから僕は驚いたんだ。そして、あの瞬って子は、『へなちょこESP倶楽部』のメンバーなんだって。


 天川瞬(あまかわしゅん)…… 隣町の公立高校の1年生。彼女が持っている超能力は『治癒の力』なんだそうだ。怪我とかを治しちゃう力って事だと思う。

 そうか、きっと瞬は、南さんを元気にしてくれるんだなって、僕は思ったよ。



 「ねえ、ひかるちゃん。聞いてもいいかなぁ? 」


 「ん、何を? 」


 「彼女の事なんだけどさ。『治癒の力』って凄いんじゃない? そんな娘がなぜ『へなちょこ』なの? 」


 「ああ、その事ね。確かに彼女の力は凄いわ。時間をかければ末期ガンの人でも治癒できるの。でもね、瞬はその力をあまり使えないの。彼女が力を使うと、彼女の成長が止まってしまうのよ。彼女は私達と一つしか違わないわ。でも身長は140cmくらいしかない…… 。」


 ひかるは瞬の能力と、その代償について話をしてくれたんだ。


 「瞬のあの身長は、彼女が人を救った証なんだよ。」


 いつまに起きたのか、舞先輩が呟いた。

 ここで僕はふと気付いて、言ったんだ。


 「じゃあ、南さんを救うって事は……。」


 マスター、ひかる、舞先輩は、悲しげな顔をして、黙って頷いた。

 僕はなぜか、悲しかった。自分を犠牲にして南さんを救おうとしているなんて。瞬は理由を尋ねず、すぐに手を差し伸べたんだ。僕が瞬の立場だったらどうするだろうか……。


 僕は天川瞬と南明菜がくるまったシーツをただ眺めていた。


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