戻ってきたクラスメート
【なんなの! なんで私がこんな事するの? できないよ! 最初はできたのに、今はできない! 頭が痛い! もう嫌だ! 大体、この人たちは何者なの? 文部科学省? その文部科学省がなぜ?】
一人の娘が窓のない白く前面を塗られた部屋で机の前に座り、蝋燭を手に必死な形相で力を込めている。
「あの娘は駄目だな。これ以上、覚醒することはないだろう。」
短く切りそろえられた髪のメガネをかけたインテリジェンスの匂いのする男は、壁にもたれる透き通るような色白なサングラスの男に話しかけた。サングラスの男は無言で頷いている。
「そもそも、あの娘の超能力は何だったか。」
誰に言うともなくメガネをかけた男が呟く。
「発火能力。」
サングラスの男はぶっきらぼうに答えた。
「発火能力か、珍しい部類に入る超能力だな。しかし覚醒しなければ意味はない。もう一日、やってみて覚醒しなければ、処分するしかないな。」
そう言ってメガネの男は部屋を後にした。
★ ★ ★ ★
「もう、いつもは暇なお店なのに、今日はなんで忙しいの? えっと、ミルクティー幾つだっけ?」
「4つだよ。あとアイスレモンティとオレンジペコ1つづつ追加だよ。」
【あげは】ではひかると僕・優太はてんてこ舞いだった。マスターは僕らに店番を頼むと、二日ばかり留守にしている。きっと『あの男』と『消えた生徒』の件で色々調べてくれているんだと思う。
忙しいけど、僕はちょっと嬉しかった。文化祭で喫茶店をやっているような感じがしてね。何よりひかるが髪を後ろで束ねて、そうポニーテールで、よく似合っていてね、とっても可愛いんだ。
「ふう、やっと落ち着いたわね。」
「ご苦労さん。」
「もう舞さんも手伝ってよ~。」
「無理だ。私には向かないさ。私が手伝っていたら、そのカウンターの中は今頃カップの破片だらけだと思うぞ。」
舞先輩はカウンターに座って、笑って僕らが忙しくしているのを見ていたんだ。
ともかく、お店が落ち着いて、一息ついて、僕ら3人はニルギリを飲んでいたんだ。舞先輩はライムを絞ってね。でもマスターの入れてくれるニルギリの味には、ならないんだ。マスターの入れてくれたニルギリはとっても美味しい。
7時になってお店にお客さんは誰もいなくなった。いつもは9時まで営業しているらしいんだけど、ひかるはさっさとお店の看板を消しちゃったんだ。
お店の後片付けをして、僕らが帰ろうとしていた時……。
『からんっ』
倒れ込むように人が入り込んできた。
「マスター! どうしたの? 大丈夫? 」
ひかるが叫ぶ。入り込んできたのはマスターだった。マスターは一人の少女を抱えている。
「南さん!? 」
その少女は行方不明…… というか文部科学省に連れて行かれたと言う僕のクラスメート・南明菜だった。
南さんは、小刻みに震えていて、目の焦点が合っていない。ぶつぶつとなんか呟いているんだ。
「もう大丈夫だ、大丈夫だよ。ひかる、瞬を呼んでくれ。」
「分かったわ。」
「あ、それとな……。」
「なあに? 何でも言って。」
「暖かいニルギリを2杯だ。」
マスターは笑顔を見せて言った。
「OK! 」
一瞬『きょとん』としたけど、ひかるも笑って答えると、どこかに電話をして、ニルギリ2杯を持ってきたんだ。
ひかるはマスターに何があったか聞いたんだ。
「まあ、ちょっと待て。少し落ち着かせてくれないか。」
そう言うとマスターはニルギリを美味しそうに飲んだんだ。
「さあ、話してあげようか……。」
マスターは南明菜を救い出した顛末を話してくれた。
マスターはまず蔵内静…… そうメガネの男を探すことからはじめたんだって。
この間、この店を誰かが見てるってひかるが言っていたよね。それでこの店が見える範囲を調べて、そこから少しづつ、あの男がどこを拠点としているか調べたんだって。
『残留思念』の後を追いかけたって言っていたけど、僕にはよく理解できないんだ。
ともかく、その『残留思念』ってやつを追いかけて、また別の場所に辿り着いて、そこでまた『残留思念』ってやつを拾って、追いかけて…… ってたどり着いたらしいんだ。そこまで1日半かかったらしいよ。辿り着いたのが、ある街にある白い建物だったんだって。窓のない建物らしい。
その建物は入口も分からなかったそうなんだ。そこでマスターは友達を呼んで、その友達の力を借りて建物の中に入った。どうやったかって? マスターは笑っただけで教えてくれなかった。そこで彼女を見つけて連れてきたらしい。
マスターのズボンやシャツを見ると所々破れていて、きっと戦ったりしたんだと思う。苦労して危険な目に会いながら連れ帰ってきたのは間違いないと思うんだ。それにマスターはやっぱり超能力を持つ人なんだと思う、その『残留思念』っていうのに関する力なんじゃないかと思ったんだ。
その話を聞いていたら、9時過ぎになってた。僕は慌てて家に電話して、今日は友達の所に泊るって言ったんだ。ママは怒っていたけど、マスターが電話を代わってくれて、納得したみたいだよ。マスターは何て言って説得したのか、隣りの部屋で話していたから分からないんだけどね。
話を聞いている間も、今も南さんは震えて、なにかぶつぶつ呟いている。可哀そうに…… 。
僕達は交代で南さんを看ることにして、順番に寝ることにしたんだ。
『からんっ』
お店のソファーでうとうとしていた時、お店に人が入ってくる音がした。
僕は店の入り口を見ると、そこには小学生の女の子が立っていた。
…… つづく




