倶楽部加入
高校へと向かう駅へ降り立った時、僕は視線を感じた。ふと、そちらを見ると何て可愛いんだろう! 黒い髪を腰まで伸ばした美少女がこちらを見て微笑んでいる。
僕か? 僕を見て微笑んでくれているのか?
そんなことはあるわけないよな~。僕はもごもごとつぶやきながら周りを見渡した。周りには誰もいない! 。えっ! ということは僕を見てるんだ! ドキドキしながら上目づかいで改めて少女を見た。あれ!? うちの制服だ。あんな可愛い娘いたかな~? 目を離せないでいると少女はつっ~と寄ってきた。おもわず後ずさる。僕はほとんど女の子と話したことがないのだ。
「おはよう! 」
「あ、おはよう! 」
「一緒に学校いこっ。」
「う、うん……。」
ドキドキしながら一緒に学校へと向かうことになった。学校までおよそ10分、その時間が僕にはとても長く感じられた。
「あ、あの、何年生? 」
「2年よ。」
「あれ!? 僕も2年だよ。ご、ごめん君のこと、み、みたこと、な、ないや……。ぼ、僕はC組の……。」
僕の言葉をさえぎるように少女が言った。
「知ってるわ。望月優太君でしょ。去年の学年別マラソン大会3位だったよね。」
こちらに微笑みながら…。優太のドキドキはとまらない、笑顔もとっても可愛いんだ!
「うん、あ、あの名前はなんていうの? き、聞いてもいいかな? 何組かな? 」
消え入るような声でたずねると
「星野ひかる。B組よ。あら、もうついちゃったね。放課後ちょっと時間頂戴ね、優太君。迎えに行くね、じゃあね~。」
まぶしく輝く美少女が走り去って行った。
その日の授業、僕は全く身が入らなかった。あの美少女のことばかり気になっていた。放課後って言ってたけど来るのかな?でもあんな可愛い娘いたんだなぁ。うちの学校にも…。
待ち遠しい放課後がやってきた。
「おい優太、帰ろうぜ、うちに来いよ。いいゲームが手に入ったぜ。」
幼馴染の大輔が声をかけてきた。
「あ、ご、ごめん大輔、今日は用事があるんだよ。えっとさ、え、英語の岬先生に質問があってさ。」
「ふ~ん」
大輔は僕の顔をじっと眺めて、やがて一瞥すると
「OK、じゃあ明日またな。……それとさ、お前って嘘下手だよなぁ。」
って笑いながら大輔がドアから消えた。
入れ替わるように美少女・ひかるが現れた。残っていた数人の男子生徒がまぶしそうに少女を眺めている。
「優太君、お待たせ。行こう。」
とびきりの笑顔で僕の手を引いていく。背後に羨望と嫉妬の視線を感じながら教室を後にしたんだ。
「今日は時間ある? 」
「う、うん、あるけど、何するの? 」
「内緒っ。今日は付き合ってね。」
「う、うん。」
ひかるは僕を引っ張るように学校を出て、細い路地に入って行った。何度か路地を曲がって、小さな喫茶店に僕を連れて入って行った。
「あの、ぼ、ぼく3000円しかないけど……。」
「クスッ。大丈夫よ。お金なんかいらないから。」
にっこりひかるは笑うと席に案内した。
「優太君。君さ、スプーン曲げられるでしょ? 」
僕は飛び上るほど驚いた。
「な、なんで知ってるの!誰にも言ったことないよ! うちのママだって知らないんだ!」
「ふふふ、優太君もちゃんと話せるのね。いつも俯いて小さな声で話してるから話するの苦手かと思った。」
「は、話せるよ。君があんまり可愛いから…」
おもわず言ってしまって、自分の発言に顔を真っ赤にした。
きょとんとしたひかる。
「あら、ありがとう。嬉しいな。」
ひかるも少し顔を赤らめている。
「あのね、私はこういう人なんだよ。」
そういうと角の丸い薄いピンク色の名刺を手渡した。
「へなちょこESP倶楽部? ……なにこれ? 」
「えっとね、そのうち分かるわ。」
再びにっこり笑うとこんなことを告げた。
「今日から優太君も倶楽部のメンバーだからね。」
「えっ! 」
なんだこの娘は? 怪しい勧誘なのか? おかしいと思ったよ。僕なんかがこんな可愛い娘に声かけられるなんてありえないもんなぁ。
その時、喫茶店のマスターが紅茶を二つ持ってきてテーブルに置いた。そしておもむろに僕の耳に口元を寄せて囁いたんだ。
「違うよ。優太君。ひかるは純粋に君に興味があるのさ。」
「マスター、何話したの? 私の悪口? 」
ひかるが声を上げると、マスターはにやりと笑って返した。
「ははは、そうさ。ひかるは驚くほど大食いだって言ったのさ。」
「もう、嘘だからね、優太君気にしないでね。」
ひかるは『ぷっ』と膨れて見せた。
優太はなんとなくこの喫茶店が居心地のいい空間だと思い始めていた。
「あの、どんな活動するの?会費とかいるのかな? 」
心配そうに尋ねると
「いらないわよ~。あ、分かった!私のこと怪しい勧誘だと思ってるんでしょう!? 」
ずばりだった…。
肩をすくめて、ふ~っと大きなため息をつくとひかるは説明を始めた。
その説明によると、会員は全部で優太を入れて5人。みんなそれぞれ小さな超能力を身につけているそうだ。協力し合って小さな力を集めて、正義を行うんだって。漠然としてるよな~。
優太は完全には理解できていなかったけど、一緒に活動することに決めたんだ。だってこんな可愛い娘と一緒にいることなんてもうないかもしれないからさ。
「うん、なんとなく分かったよ。僕は何もできないと思うけどよろしくお願いします。」
僕は頭を下げた。
「ううん、優太君はもっと力が伸びるわよ。保証する!」
そういうとひかるは右手を差し出した。僕は照れながらその手を握り返した。
「君も力を持ってるの? 」
「私の能力は2つ。一つは存在を消せるわ。学校では私のことを気にかける人はいないでしょ?優太君も私のことを知らなかったでしょ。」
「ああ、そうか、それでか…。君みたいな…。」
可愛い娘がと再び言いかけて慌てて言葉を飲み込んだ。
「ん?私みたいな?なに? 」
「な、なんでもないよ。」
「ふ~ん。ま、いっか。であと一つの能力は力のある人が分かるの。それで優太君に声かけたんだよ。」
「なるほど。なんとなく納得!」
こうして僕はへなちょこESP倶楽部の一員になった。この後色々な事件に巻き込まれるようになるなんて思いもしなかった。ただ美少女・ひかると一緒にいる時間が楽しかったんだ。




