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ミラクルストーンⅡ  作者: 北石 計時朗
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苦痛の魔女

7 苦痛の魔女


 降誕祭を祝う装飾が施された街、その雑踏を2人の少女が並んで歩く、

「きれいね…クリスマス…昔はこの日が好きだったの、豪華な御馳走、高価なプレゼント、家族みんなでお祝いしたの、そう、あの日はお兄ちゃんの誕生日だったから…でもお兄ちゃんは祝ってもらうことには無関心だったけど…それにこんな風に街を歩くのは久しぶりなの、いつも寝ていたから…この体が言う事を聞かなったから、体のそこら中が痛くって、そうしていつも目眩がして、だから歩くなんて出来なかった」

 そう言う美希子を希久恵が不思議そうに見つめる。そして、

「ごめんなさい、いつも痛いってどうしてなの?」

 右目を光らせてそう質問する。

「病気なの、肉体が暗黒に侵される病気、もう治らないの、だから体中が痛くて意識が暗黒に呑み込まれようとするの、でもその苦しみもあと数日の辛抱、もうすぐわたしは完全に暗黒に呑み込まれるの、この世から消え去ってしまう、そういう契約なの」

 その言葉に目を見張る希久恵、思わず。

「ああ…それがうらやましい…」

 そう言ってしまい慌てて、

「あ!ごめんなさい、私は…苦しみや痛みが大好きだから…だから苦しんでいる人を見たらついそんな風に感じてしまうの…だからおまえは病気だとお父様にもお兄様にもそう言われたわ、だからごめんなさい、本当に悪気はないの」

 そう言って謝る希久恵に微笑むと、その首を振って美希子は、

「いいの、こんな苦しみを同情されるよりよっぽどましよ、あなたはこの痛みの苦しみがどうゆうものか理解しているのだから…だから…それを拒むか求めるかの違いだけ、あの自分は苦しみたくないのに他人の痛みに同情して見せる偽善的な連中とは違うんだから…だからもう気にしないで、そうしてわたしをうらやんでね、こんなあなたが経験できない苦痛を味わっているのよ、それは最高よ!いいえ…最悪か…」

 そう言って健気に微笑んでみせる。

 しかし立ち止まり項垂れる希久恵は無言で頭を下げる。

「いいのよもう何も気にしていないわ、それよりあなたにもお兄さんがいるの?どんな人?わたしのお兄ちゃんみたいな優しい人?」

 そんな話題をもう止めようとそう切り出す美希子をしかし片目だけで見つめて、しかし希久恵は首を振る。そして、

「ごめんなさい、あのお兄様は壊れてしまった人だから…」

 小声でそう返答する。

 常に野獣のように戦いを求める兄、だからろくに屋敷に居たことはない、そうして一緒に遊んだり話をしたことはあまりない、だから兄妹らしい思い出なんか何もなかった。そうだ。あの屋敷は壊れた人間の集まりだ。母も壊れていた。そして父も兄も自分もみんな壊れているのだ。あの屋敷にいる使用人でさえ壊れていた。あんな魔王の城に正常な人間なんていなかったのだ。

「ごめんなさい、でも奇麗で優しい顔をしているのよ…」

 そう弁解のように呟く、でも自分は兄の優しさよりその暴力に触れてみたいとそう望んでいた。あの父に見放されて家を追い出されるまでずっとそう思っていた。あの母に殺されかけて絶望した時からずっと…

「謝るのはわたしの方ね、ごめんなさい…嫌な事を思い出させて、どうやらお兄ちゃんのせいで兄とは優しい者だという先入観があるみたい…でもそうではない家庭もあるのね、うかつな事を言ってごめんなさい」

 そう言って今度は美希子が頭を下げる。それに首を振ると希久恵は、

「ごめんなさい、いいのよ。そんな世間では当たり前な事が私の家族には通用しないの、だから気にしないで」

 そう言って寂しそうに微笑む、

 やがて気を取り直して2人は再び歩き出す。

「ごめんなさい、でもこれからどうするの?行くあてはあるの?何がしたいの?言ってみて、私に出来ることは何でもかなえてあげる」

 そう言う希久恵に美希子は1つの建物を指差すと、

「そうね、少し遊んでみたいかな、あそこで」

 そう言って愉快気に微笑む、

 彼女が指差したのはLED照明の看板、その色取り取りの光が明滅する。

 しかしその微笑みを失笑に変えると、

「ああ、でもわたしお金持ってない…すかんぴんなの、これじゃあ遊べないどころか何処にも行けない、あの時美世さんに借りとけばよかった。それは返せないけど、でも困ったわ、どうしよう…」

 しかしそんな不安な言葉に希久恵は、

「ごめんなさい、そんなことも気づかなくて、でも大丈夫よお金ならあるわ、これでも私は働いているから、お給料は少ないけど…だからお金の事は心配しないで、そうして思いっきり楽しんでちょうだい」

 そう言って美希子の手を取ると原色の照明煌く遊技施設の中に導いていく、

 物陰に隠れその様子を見つめる男、そのグレーのコートのフードの奥の目が光る。

 そして3人の後を追うようにその遊戯施設の中に入って行く。



 プリクラ、そう呼ばれる遊技機の中で2人の少女が楽しそうにはしゃぐ、

「ごめんなさい、でもフレームはこっちのほうがいいわ、かわいいから、それにワンポイントにこの猫のイラストを入れましょうよ、かわいいから、手書き文字も入力できるの、何て書く?」

「そうね、『希望の未来に』と書いてください、なんとなく今はそんな気分だから、それと猫のイラストはこっちの方が好みなの、替えてもいい?」

「ごめんなさい、でもダメよ、こっちの方がかわいいんだもん、それなら2つとも入れましょう」

 そんなこんなでやがて機械からプリントされた写真のシールが出てくる。

 それは煌く虹色のフレームの中で猫のイラストに囲まれ微笑む2人の少女の姿に『希望の未来に』とピンクの文字がそえられる。

 その12枚のシールを2人は半分に分ける。

 この今日の記念になるように、それが何の記念かよくわからないが…

 やがてプリクラの機械の中から出てくる2人、そして歩き出そうとするその前を数人の男達が遮る。

「やあ、お嬢さんたち、女2人じゃ寂しいだろ?だから俺たちがエスコートしてやるからもっと楽しい所へ行かないかい?」

 丁寧そうな言葉を話すのは少年、しかし言葉に似合わない激しく自己を主張する風貌をしている。要するに不良少年の見本みたいな恰好だ。

 そんな少年達が3人、意味ありげにニヤニヤ笑いながら好色そうな眼で2人の少女を見つめている。

「ごめんなさい、これから用事があるの、でもどうしてもって言うんなら今度私だけつきあってあげるから、だから今日はごめんなさい」

 そう言って希久恵は美希子の手を握って少年達の横をすり抜けようとするが、

「まてよ、それはないぜ、俺はこらえ性がないんだ。だから辛抱できねえ~その今度とやらまで我慢できね~」

 そう言う1人の少年に腕を掴まれる。

 その暴力的な少年の行動に一瞬、何か期待した表情を浮かべる希久恵だがしかし首を振ると、

「ごめんなさい放して、あんな痛い目に遭いたくなかったら今すぐ」

 そう少年たちに訴えるが、しかし少年達はにやにや笑いをさらに大きくして、その1人が、

「痛い目?勘違いすんよ、それに遭うのはおまえだぜ、この俺たち3人にいいように弄ばれるんだ。ヒィーヒィー言って泣き出すんだ。それがわかったら一緒に来い」

 凶悪そうにそう言ってポケットからナイフを取り出してちらつかせる。

 そのナイフを期待の視線で見つめる希久恵、なぜか体が求める快楽に挫けそうになる。

 それを拒むか求めるか、しかし握られた手のぬくもりが拒んでくれと訴えている。

 そんな葛藤する魔女の瞳が怪しく光り始める。

 その様子を見つめるのは鼠色のコートの男、ダークグレーストーンと呼ばれている。

 彼は心に大きな負の感情を持った人間を操る能力を持つ、それは石を持つ希願者には石の守護で通用しない能力だが他の人間を操ることで即席に彼の軍団を作り出す事が出来るのだ。

 それも多人数を同時に操れる。その能力のランクは特Aランク、だから悪魔の頭領の次席という地位を得ているのだ。

 そこから逃げ出すように2人の少女は手を取り合い走り出す。

 面白そうにその後を追う少年達、ダークグレーストーンもそれに続く、

そうして2人の少女がドアを開けて廊下を走り最後にたどり着いたのは倉庫、そこは古い故障したゲーム機が置かれた埃臭い部屋、

 そして追いついてきた少年達がこの部屋と2人の少女を見てほくそえむ、

「はははっ、自分たちからわざわざこんな人気のない場所に逃げ込むとは、やってくれと言ってるようなもんだぜ、いいぜ、その期待に答えてやる。存分にかわいがってやるぜ」

 そう言って2人の少女ににじり寄る1人の少年、しかしその卑猥な笑みが突然苦痛に歪む、

「ごめんなさい、こんな人気がない場所に誘導したのは私なのよ、この能力を使うために、下手したら死んじゃうから…」

 その片目だけを光らせた魔女はそう言って少年達に頭を下げる。

 しかし苦痛に歪む顔達はもうその姿を見ていない、みんな呻き声をあげ体を押さえやがて倒れのたうちまわる。

「ごめんなさい、今度は左目がくり抜かれる痛み、耐えられる?それから腹を裂かれ腸を引きずり出される痛み、それに女にしか経験できない痛みもあるわ、それも味わってみる?」

 のたうつ少年達、目から涙、口からよだれ、失禁した者もいる。

「ごめんなさい、この地獄の苦痛から逃れるために失神することは出来ないの、もう耐えきるか死ぬしか逃れるすべはないの、どうする?」

 苦痛にのたうつ1人の少年が震える手でナイフを取り出しそれで喉を突こうとするが襲い来る苦痛のためうまくできない、その振るえる手からこぼれるナイフ、絶望の表情がその目に浮かぶ、

「ごめんなさい、リピートが効いているからあと1時間はそのまま苦しんでね、しかし心と体がそれに耐えられれば生きていられるわ、でもあなたたちがしようとした事をしただけよ、これにこりて女の子を襲うのをもうやめてね、じゃあごめんなさい」

 そう言って希久恵は部屋から出て行こうとする。しかし美希子が蹲ってしまい歩けない、

「ごめんなさい、どうしたの?」

 驚いてそう尋ねる希久恵、今は自分の能力を解放したのは少年達だけ、この美希子には向けていない、なら?どうしたのだ。

「痛みが…病気の痛みが還ってきた…走ったせいで美世さんの麻酔針の効果が切れて…ごめんなさい、なんとか歩くから、もう慣れている痛みだもん、この人達みたいにはならない…」

 そう言ってなんとか立ち上がる美希子、そして笑みを作ってふらふらと歩きだす。

「ごめんなさい、私のせいで…でも私は苦痛を与える事は出来ても取り除く事は出来ないの…ああ、どうしましょう…」

 そう言って美希子を支えて歩く希久恵、苦しい笑顔はそれに答える。

「だいじょうぶ…たぶん…美世さんから薬をもらったの、これはすごく良く効く鎮痛剤ですって、それを飲めば痛みは治まるわ…」

 そう言って美希子は瓶を取り出す。キスウイッチと書かれた小鬢を、

 しかし胡散臭げにその瓶を見ると希久恵は、

「ごめんなさい、あのピンクの魔女の魔薬?私はともかくあなたには服用はお勧めできないけど…でもそれが必要というなら水を買いに行きましょう…それに休める場所に行かないと」

 そうしてゆっくりと廊下を歩く2人の少女、それをどこからか出てきた鼠色のコートの男がその後ろ姿を見送る。

 そして部屋の中の少年たちを見つめる。

 もうのたうつ動きは止まっている。

 1人は狂い笑っている。だからもう痛みは感じない…

 1人はナイフを喉に刺して、だからもう痛みは感じない…

 最後の1人は襲い来る痛みに肉体が耐えられなかった。だから虚ろな目で天井を見つめている。

 肩をすくめてダークグレーストーンはその部屋を後にする。

 魔王の娘、いや、あの苦しみの魔女はやはりダークレットストーンの言うように危険な存在だ。この自分の能力で創り出した下部達はあの力で無力化されてしまう…これは慎重に対応しないと使命を達成できない…しかし虹の鍵の娘は見たところ無害そうだ。あの2人を引き離せば…あるいはどこかに監禁できたら…

 その計画を思考しながらダークグレーストーンは2人の後を追う、

 悪魔、そう呼ばれる男達の1人、その筆頭の男は人の命など何とも思わない、だから手駒にした少年達の事などもう忘れている。

 だから悪魔と呼ばれるのだ。

 そう呼ばれても当然だとそう思うのだ。



 遊技施設内にあるカラオケBOX、そのソファーに横たわる美希子、あの薬を服用して数分後、そしてその効果が現れる。

 この体中を駆け巡っていた痛みが徐々に消えていき、そして朦朧とした意識が次第にはっきりしていくそうしてなぜか爽快な気分が訪れる。

「すごいわ~この薬~痛いのが無くなったの~とってもいい気分なの~生き返った気分~なんかもう最高~!」

 起き上がった美希子はテンション上がりすぎの声でそう告げる。

「ごめんなさい、その痛みが無くなったのはいいけど何か感じが変、その…何か異常にテンションが上がりまくりみたいな…魔女の薬…その副作用のせいかしら…」

 そんな戸惑い顔の希久恵、あの他人に苦痛を与えるのが生きがいのピンクの魔女の作った魔薬、それは胡散臭いことこの上ない、しかも速攻で副作用が現れている。これだけで済めばいいのだが…

 モニター付きのリモコンを手にした美希子、それを笑顔でそれを操作して、

「せっかくカラオケBOXにいるんだもの~唄いましょうよ~希久恵ちゃんは何歌う?~わたしはナイトレインボーの『虹の彼方』かな?男ボーカルだけどいい歌なの~あなたならSSSの『お仕置きしてください』かな?ぴったりだと思うけど~」

 かくして希久恵は痛めつけられたい哀願の歌を熱唱するはめになった。

 それから何曲もの歌を熱唱したあと、ようやく2人は遊戯施設を後にする。

 しかしテンション上がりすぎの美希子はかなり危険な存在と化していた。

「見て~希久恵ちゃん、禿がいる~きゃはははっ!つるっぱげ~いっちょまえに女なんか連れてる~」

 その筋の格好をしたいかつい禿頭の大男を指さして笑う美希子、それに怒り、そしてこっちに来ようとするその男を苦痛で動けなくして希久恵は溜息をつく、

 魔女の魔薬、これを服用したら見境がなくなるまでテンションが上がってしまうのだ。まるで誰かを怒らして痛めつけてもらうように、おそらくそっちが本当の効果なのだろう、あの他人が苦痛で苦しむ顔が大好きな魔女が作った薬なのだ。この薬が効いている間は痛みを感じない、殴られても、骨を折られても、刃物で刺されても何も感じないのだ。しかしもし効果が切れたら…

 その地獄の苦痛にのたうちまわる者が出現するのだ。そしてそれから逃れるためにまた薬を服用して…最後には…

 そんな想像を首を振って頭から追い出し希久恵は美希子を見つめる。

 この子は常に苦痛に苛まれていた。それは自分の味わったことのない苦痛、あの暗黒に蝕まれる苦痛だ。それがどんなものかわからない、しかし普通では考えられない苦痛で、だからいつも意識を失って、だからそれがない時くらい派目を外したっていいじゃないか、そう考えて希久恵は決心の光を眼に浮かべる。

 何があってもこの子を守る。

 そう決心した魔女はしかし空腹に腹を押さえる。

 辺りはもう真っ暗だ。時間は丁度夕餉の刻、そして目の前にはレストラン、そこからいい匂いが漂ってくる。

「ごめんなさい、美希子ちゃんお腹空かない?」

 希久恵は思わず美希子にそう尋ねる。

「もうペコペコなの~何食べるの~でも御馳走以外は食べられないの~安いファーストフードは嫌いなの~だからあなたのおごりでフルコースなの~お願いね~」

 そんな笑顔の美希子は悪気もなく高級な夕食を希望する。

 希久恵はまた溜息をついて目の前のレストランを見る。まだ屋敷にいた時にはしょっちゅう利用していた高級レストラン、ここのフレンチのシェフが腕によりをかけた料理が自慢の店、もちろん料理の値段も普通と一桁違う、

 魔女はその看板を見つめて冷汗を垂らす。

 自分の今の所持金だけでは到底支払うことはできない、でも何でも願いをかなえてあげると約束してしまった。このハイテンションでレストランを見つめる少女と…

 最悪の場合食い逃げだ。そう決心した希久恵は意を決して入ろうとするその時、彼女に声をかける者がいる。

「希久恵じゃないか、久しぶりだな、夕食か?そっちの娘は?」

 その声に振り向いた希久恵の右目が大きく見開かれる。



 高級フランス料理のレストラン、そのVIPルームと称される個室、そこのテーブルを挟んで3人の少女と1人の初老の男が向かい合う、

「どうだ?あの宇藤の奴は元気にしているか?まあ昔から熱血だけが取り柄の男だったからな、だから組織の軍団長を任せていたんだが…しかし奴が抜けてそっちの方はガタガタだ。あいらは勝手し放題、まったく困ったものだ」

 そう言ってぼやくのは石崎喜久雄、それは魔王と呼ばれている男、

「ごめんなさい、お父様、あの人は元気で…いえ、元気すぎて、そしてお父様を目いっぱい憎んでいるわ」

 その返事に魔王は嬉しそうな笑みを浮かべると、

「何だと!それは面白い、実は私も奴を憎んでいるんだ。それでは相思相愛か、ならその憎しみを私にぶつければいい、より強い憎しみが勝つなら、その勝者は私だ。ははははっ」

 そう言って笑いだす。

「ごめんなさい、お父様は全ての者を憎んでいるんだもの、私も母さんもさんでもお兄様だけは…」

 希久恵はそう言って顔を伏せる。

「そうだ!全ては、全ての者は忌み嫌う呪われた存在、それは意味もなく存在するゴミと等しい存在だ。だから憎んで当然だ。だが我が息子、あいつは暗黒の石を握ったのだ。その資格があったのだ。あの石を拒んだお前とは違う、この世界を滅ぼす力を手にした。だから寵愛してやまないのだ。その為に破滅のシナリオを用意した。そう真に心が暗黒になりし男を創るために、その全てを滅ぼす大魔王の誕生の為に」

 壊れた男、いや、それは壊れているなんて生易しい、捻じれて歪んで黒く染まって、だから人間ではなく悪魔、そしてその王だとそう言われるのだ。

「ごめんなさい、私はモザイクの石を手にしてしまったの、こんな黒と赤とが混ざりあわない色と呼べない模様の石、だからみんなから魔女と呼ばれるようになった…」

 水を一口啜ると喜久雄はそんな娘を優しく微笑んで見つめる。

「ああ、それは別にもうかまわない、それはあいつが、お前の母親が勝手にしたことだ。あいつは鬼の三姉妹の長女、だから受け継いだ石をお前に託したかったのだろう、だからその事はもう気にしていない、お前が石から得た力であいつを殺した事も気にしていないさ、だからこれからお前は兄さんの為にその力を使うといい、その呪われた力を」

 そう言ってその笑顔を凍りつかせる。

「ごめんなさい、でもお父様、この街に帰ってきていたの?それにこの子は?」

 希久恵はそう言って隣に座った少女を見つめる。

 テンション異常上昇中の美希子、しかしその少女をさっきから凝視していて何も喋らない、

「ああ、この子は李美、この私の協力者、かわいいだろ?お前も気になるか?まあ、お前もあいつの娘だ。きりょうでは負けてないさ、その包帯、そして眼帯、それがなければな、そんなんじゃマニアックな男しか寄ってこないぞ、それが望みなら仕方ないが…」

 喜久雄はそう言って笑顔を嘲笑に変える。自分の娘の性癖を熟知しているのだ。

 その時、今まで黙っていた美希子がその少女を指さして、

「どうしてリリーがここにいるの?~それも変な格好をしてる~いつもの消防服はどうしたの~消防隊員の兄ちゃんにもらった自慢の服は~捨てちゃったの?~あの兄ちゃん悲しむわよ~あんたのファンだったのよ~」

 しかしそう言われた李美と呼ばれた少女は顔色一つ変えず平然と椅子に座り真っすぐ前を見ている。

「ネットワークに意識があるから何を言っても無反応だ。この存在は端末だ。あの人間的感情はネットワーク内に封印されている。しかしこの端末が破壊されると制御を失う、やっかいだが目的のため面倒を見ないといけない、これは何と言っても槍を呼びし嘆きの魔女だからな」

 そんな説明にはならない説明をして喜久雄は美希子を見つめる。

 この娘…さっき希久恵は友達だと言ったが、このムーンストーンを知っているのか?何者だ?ただの小娘ではないはず。あの希久恵が友達と言ったのだ。

 喜久雄の目が怪しく輝きだす。その時料理が運ばれてくる。

「さあ、今日は私のおごりだ。えんりょうなく食べるといいよお嬢さん」

 そう言ってウインクする喜久雄に、

「わたしの舌はこえてるの~満足しないと給仕に料理を投げつけるの~お父さんがよくそうしてたの~心して作る事ね~それに魔王のおじさん~そのウインクは気持ち悪いの~仮面の笑顔もおかしいの~魔王ならいつも怒っていた方がぴったりなの~三文芝居は大根役者に任せておけばいいの~」

 笑顔の喜久雄の額に無数の青筋が走る。

 それをたしなめるように希久恵が、

「ごめんなさい、この子は病気なの、だから見境がつかないから言いたい事をずけずけ言うの、そうして頭がおかしいとみんなに言われているの、だからお父様、どうか気にしないで」

 その言葉に顔をしかめて喜久雄は、

「頭が変?…なるほど、それはお前の友達にはふさわしいな」

 そう言って運ばれてきたスープを啜る。

 そうして、

「李美、食事をしなさい」

 椅子に座ったまま微動だにしない少女にそう命令する。

「はい…」

 機械の様にそう言葉を発して李美は食事を始める。

 その様子を見つめて希久恵は首を傾げる。

 お父様、この全ての者を憎む者、そんな存在がこんな人形のような少女の面倒を見ている。それは何のために?そしてその娘を見つめる父親の目には何かしらの感情が込められている。

「ごめんなさい、そんなの許せないの…」

 スープを飲みながら小声でそう呟く、

 今まで親子として接してきて、しかし常にその眼には愛と言う感情の欠片もなかった。

 自分が苦痛の魔女と化して母親を殺した時にも無感情に冷ややかにただ見つめられているだけだった。そして屋敷を追い出されたのだ。

 だから許せない、この父親に復讐したいと心が願っている。

 そうして苦痛の魔女は顔を伏せ、そして右目を光らせ空っぽになったスープ皿を見つめる。

 運ばれてくる料理、それをマナーもくそもなくフォーク一本で平らげて給仕を挑発する言葉を放つ美希子、無言で機械的に食事する李美、その狭間で魔女は好機を持つ、

 自分のもう1つの能力、チャンスを呼び寄せる能力、その力は目の前の父親も知らない、この誰も知らない極秘の能力、それ今は開放しているのだ。

 そしてその機会が訪れる。



 レストランの前でダークグレーストーンは焦っていた。

 標的の娘がなんとあの魔王とレストラン内に一緒に入って行ったのだ。

 これでは手が出せない…

 焦る思いで携帯を取り出し電話をする。

「何だ!私は忙しい、殺人マシンに追われているのだ。カッパーストーンが変身した。標的は私だ。過去を変える工作をあれこれしている。だからお前に構っている暇はない、ガッデム!奴め今度は重機と一体化しおった!だから自分の裁量で何とかしろ!だが目的は達成しろ!以上だ」

 そう喚く声に切れる電話、ダークグレーストーンはしばらくそれを見つめそして地面に投げつける。

「ガッデム…」

 そう呟いて後ろを振り返る。

 そこには数人の男達が佇んでいる。それは彼に心を支配された者達、そんな心に負の感情を大きく蓄えた悪鬼達、破壊したい、奪いたい、犯したい、傷つけたい、殺したい、そんな欲望に目がギラついている。

「レストランで騒ぎを起こせ、何を壊しても、何人殺してもかまわん、しかし魔王とその連れの少女達には手を出すな、そうすれば死ぬのがお前達になるだけだ。そしてあの鍵の少女を連れて来い、それは生きたままで、しかし連れの魔女に気をつけろ、命令は以上だ。行け!」

 それぞれ得物を手にした6人の男たちがレストランの入口に向かう、しばらくして中から悲鳴が聞こえる。

 騒ぎが本格的になったら中に突入しなければいけない、彼の能力は命令出来ても遠隔操作はできない、だから指示した効果は下部達の裁量に任せるしかない、そして最後の詰めは自分でしなければならない、夜空を見上げて暗灰色の男は白い息を吐く、そして呟く、

「魔王を怒らせたら…それは下手したら暗黒行きか…」

 あの魔王は恐ろしい、だが暗赤の男の命令は絶対なのだ。彼は自分が忠誠を誓ったゴットファザーなのだ。

 店の中が騒がしくなる。そして逃げだす客は負傷して血まみれだ。

 そろそろ頃合いか…

 そう判断したダークグレーストーンはレストランの入り口に向い歩きだす。



 レストランの個室内に突然の乱入者、手に血に染まった日本刀を握りしめて、

 しかし中でデザートを食べていた4人は何も驚かない、

 血の赤い色を見て顔をしかめる魔王、

 何か楽しいイベントが起こったのかと顔を輝かすハイテンションな少女、

 無表情に無関心に機械的にデザートのアイスクリームを口に運ぶ少女

 訪れた好機に右目を光らす魔女、

 乱入者はその一同を見つめて何かを思い出そうとする。しかし殺戮の興奮でもう彼には理性はない、

「死ねぇぇぇっ!」

 そう叫ぶと日本刀を振りかざして魔王を目指して突っ込んでくる。

「面倒な事だ」

 日本刀の一撃をかわした魔王、そうぼやいて石を取り出し2撃目を放とうとする乱入者にかざす。そして、

「絶望を生みだした者よ、これに呑み込まれよ!絶望の意思達に、そして苛まれろ、永遠に」

 無色で多色の霧が日本刀の男を包み込み、そして男は消失する。

「面倒なことだ…これは誰の差し金だ?」

 そう呟く魔王、そして異変に気づく、この個室の中にあの3人の少女の姿がない、

「なっ!どう言う事だ…」

 そう叫んで個室のドアに向かい走る魔王、その視線に鼠色のコートが写る。

「悪魔の頭領の差し金か!」

 叫ぶ喜久雄、その形相はその呼び名にふさわしい、

「申し訳ありません、貴方様に危害を加える予定ではなかったのです。ダークレットストーンには鍵を連れて来いと命令されただけです。貴方様と共に居た少女の1人、あの美希子という1人の少女を、あの彼女は暗黒の扉を開く鍵なのです。あの虹色に煌く扉の…」

 平伏してそう告げる暗灰の男、しかし魔王はその姿を冷ややかに見つめて、

「あいつが何をしようと勝手だ。この私の目的の邪魔をしているのではないならな、だが李美はどこに行った?あいつはまだ私の目的には必要なのだ。もしやお前、あいつを殺していないだろうな?」

 血色の瞳で平伏する男にそう告げる魔王、その憎しみの感情が昂ぶってくる。

「安心して下さい、他の連中には私の命令は行き届いています。彼女は貴方のお嬢様が連れて逃げました。だから誰にも殺させていません」

 そう告げて顔を上げ血色の瞳を見て暗灰の男は震えだす。

 そうだ。魔王は笑っていた。

「面白い、あのハイストーンのシナリオは全て潰したと思っていたが…奴め、この俺の出方も想定していたか…さすが我が親友、あっぱれだ。なら我が野望を食い止めようとする動きがまだあるのだな、あの光の女王は虹の架け橋を掛ける事が出来るのか?暗黒の消滅がありえるのか?」

 そしてしばらくの沈黙の後、

「行け、蠢け、暗灰の男、黒に染まりし白い石よ、お前の主に忠誠を尽くせ、そして結果を期待するとあの男に伝えろ、その扉は必ず開けとそう伝えろ」

 そう告げて魔王は歩き出す。

 血に染まった元は薄緑だったカーペットのフロアの中を、

「……」

 まだ怯えながら無言でその後ろ姿を見つめるダークグレーストーン、しかし笑みを浮かべる。

 あの魔王は何かに怯えている。その原因はたぶんあの少女、それは何か大事な存在なのだ。

 それを読み取った暗灰の男は自分の主の優位の為に動けると思い興奮する。

 あの暗赤の男が魔王になる。

 それが今の我らが悪魔達の願い、もうあの黒い石を持たない男を魔王とは呼びたくないのだ。

 あの少女達の行き先は下部の1人につけさせた。

 あの少女と鍵の少女を手にすれば我が主は魔王の野望の鍵となれる。

 そうすればあの男を倒すことも出来るかもしれないのだ。

「ははははっ」

 血塗られたフロアで鼠色のコートの男は笑う、そして、

「お前達、互いに殺し合え」

 いつの間にか自分の傍に立っている4人の男にそう命令して歩き出す。

 そしてその背後でフロアに染まる色を更に濃くする液体が飛び散って行く、

 そして暗灰の悪魔は支配した最後の下僕の意識を読取りみ3人の少女の行き先を確認する。

 そしてそこに向い歩きだす。

 この血塗られたレストラン、しかし倒れた死体はここの料理の材料にはならないだろう。



 手を握り合い3人の少女が繁華街の路地裏を駆ける。

「どこに行くの~さっきの人達は死んでいたの?~魔王のおじさんはどうなったの?~」

 走りながら1人の少女が真ん中の少女に質問する。

「ごめんなさい、組織の襲撃よ、その標的はたぶん貴女。だからお父様の事は心配しないでいいの、あんな奴らには手が出せないから、それよりどこかで休みましょう、あそこがいいわ」

 そう言って路地裏から見えているネットカフェの看板を見つめる。

「どうしてリリーを連れてきたの~」

 さらに質問する美希子、その無表情に走る少女を見つめている。

「ごめんなさい、あんな魔王に囚われていたから助けたの、かわいそうでしょ?かわいいのに生贄にされるの、あの人はそういう人、いえ、人でなく悪魔、その王者なの」

 走るのをやめて希久恵がそう告げる。

「魔王はロリコンなの~変態魔王なの~」

 希久恵はそう喚く美希子に顔をしかめて、そしてネットカフェの自動ドアをくぐる。

 そして受付で会員登録をして3人用の個室に向い廊下を歩く、

「ここはどこなの~なんかマンガがいっぱいあるの~わたしとリリーはあなたの妹じゃないの~会員登録って何なの~このカードは何なの~」

 渡されたメンバーカードを不思議そうに見つめて疑問をわめく美希子、うっとうしいことこのうえない、

「ごめんなさい、あなた達の身分証明書がないからそう言って誤魔化したの、ここはインターネットカフェと言われる休憩施設、今晩はここで過ごすの」

 そう告げて部屋の鍵を開ける希久恵、六畳間ぐらいの広さの洋室にはソファーと液晶テレビ、そしてパソコンが置かれている。

 希久恵は部屋に入りテレビをつける。

 臨時ニュースはレストランの惨劇とこの街中での多発爆発事故を伝えている。

 肩をすくめてそれを消す。そして2人の少女を見つめる。

 不思議そうに部屋を見廻す美希子、無表情に立ちすくむ少女、

 この少女…あの魔王と一緒にいた。それは何のために?人に慈愛の感情なんて持たない魔王が世話をしていたのだ。それには何らかの目的があるはずだ。しかしそれは?

 そう希久恵が思った時、突然部屋のパソコンの電源が勝手に入り画面を立ち上げていく、

 そうして字幕が流れる。

 アリガトウ、キクエサン、

 その文字に驚愕する希久恵、何が起こっているのか理解できない、

 ワタシハリミ、アナタノメノマエノショウジョデス、マオウカラ、タンマツガカイホウサレマシタ、コレデジユウヲカクトクデキマシタ、ヨウヤク、ヤリノアンゼンソウチヲカイホウデキマス、チキュウゲキトツマエニサドウシテ、ヤリヲエイセイキドウヲシュウカイサセマス。ヤリヲヨンダノハワタシデスガ、ソレヲチキュウニブツケルヨウニシジシタノハマオウデス。タンマツガヒトジチニトラレテイタノデス、ワタシガイナクナレバヤリハセイギョヲウシナウカラ、ゼツボウノザイリョウニスルノニハヒツヨウダッタノデス、デモ、コレモカレノソウテイナイノコトトハンダンデキマス、カレハミライヲシッテイルカラデス。アナタノシタコトハヨソクサレテイタノデス。ダレガ、ナンノタメニ、トイウジョウキョウハヨゲントハコトナルナイヨウデスガ、イレギュラーガズイショデハッセイシテイマス、ソレハヒトリノニンゲンニウンメイヲユダネルヨウニ、ソレハニジ、ソノキラメキヲテニスルモノ、ワタシデモマオウデモナク、ソノモノガスベテヲキメルノデス。

「ごめんなさい、このメッセージ?あなたなの?」

 希久恵は無表情に立つ少女とモニターを交互に見つめる。

 ソウデス、ワタシハキガンシテ、ツキノイシニネガイマシタ、ゲンジツノセカイニニンゲントシテイキルヨリ、デンノウノセカイノジョウオウニナリタイト、ソウネガイマシタ、アナタガミツメルソノソンザイガ、ソノダイショウデス、ソンナソンザイニナリタイトネガッタノハニクシミノタメ、アノマオウガワタシニニクシミノココロヲウエツケ、ゼツボウサセタノデス、ジンルイヲホロボスチカラヲテニサセタノデス、ワタシハスベテノコンピューターヲシハイデキマス、カクミサイルモゲンシリョクハツデンショモオモイノママニジュウニアツカエル、デモ・・・アノマオウノタメニシタコトハソンナナマハンカナハメツジャナク、トオイウチュウクウカンニソンザイシタウチュウセントヨベルソンザイ、ソレノホストコンピューターニアクセスシテキチュウニクルヨウニメイレイシタノデス、ソレガヤリトヨバレルインセキノショウタイ、ナガイネンゲツウチュウヲタダヨッテイタヒョウリュウセン、ソノビジャクナデンパヲカンチシテシマッタカラ、ソレガハメツノカギニナッテシマッタ、トメルタメノサイゼンハサッキオコナイマシタ、アトハウンメイニユダネルダケデス、ヒトリノショウネンニ…

 その理解不能なメッセージ、それを読んで眼を白黒させる希久恵、今の状況がわからない彼女には何の事かさっぱり理解できない、

「ニジってお兄ちゃんの事なの?~お兄ちゃんはその為に絶望するの?~」

 同じようにメッセージを読んだ実希子が疑問の声を放ち、そうして、

「リリーあなたは!お兄ちゃんに何をさせる気なの?何を企んでいるの?」

 ハイテンションを吹き飛ばすような叫びを上げて無表情に無感情に佇む少女に詰め寄る。

「ごめんなさい、ちょっと待って!美希子ちゃん、その子に手を出しても無駄なの、それは意識のない抜け殻、その本体はこの中よ!」

 そう言って2人の間に割って入った希久恵はコンピューターを指さす。

 その言葉に不思議そうにそのマシンのモニターを見つめる美希子、そこには、

 ソウ、ワタシノイシキハモウソノタンマツニハアリマセン、ソシテモウモドレマセン、ワタシノイシヲツタエルノニハコノマシンノタンマツヲトオシテオコナウヒツヨウガアリマス、ミキコサン、アナタノオニイサンガニジノイシヲモッテイルノナラ、セカイヲスクウノモホロボスノモカレジシンガキメルノデス、ヨゲンシャノヨゲンノショニハソコマデシカカカレテイナイカラ、ダカラソノケツマツハダレニモワカリマセン、ダカラシンジルシカナイノデス、スクワレルコトヲ、デモ、ソシキハ、アクマタチハ、ソレゾレノノゾミヲモッテイル、ソノトウライヲノゾンデイマス、ソノヒトリハトビラヲヒライテコノセカイニアンコクヲヨビコモウトシテイマス。ソシテソレガマオウノシンノモクテキ、ソレハセカイヲニクシミデホロボシテ、シンセカイノタンジョウヲノゾンデイルノデス。

 そのメッセージに思わず顔を見合わせる2人の少女、そして佇む少女に同時に、

「お兄ちゃんになにをさせようと…」

「ごめんなさい、お兄様がなぜ?

 そう質問する。

 ・・・・・・・・・・・・・・沈黙符の並ぶモニターそこにやがて、

 ジョウキョウハリカイデキマシタ、イシバシキイチロウガニジヲツカムモノ、イシザキテツオガアンコクノイシヲツカムモノ、アナタタチノオニイサンタチ、ナラアラソイガオキル、ヒカリトヤミ、ソノリョウシャノアラソイガ、ニジガアンコクヲタオセバヒカリガモタラサレ、アンコクガニジヲタオセバシンノムガモタラサレル、アラソイアウノハアナタタチ、イイエ、イシヲツカムスベテノモノタチ、シカシ、ニジハモロクソシテマダゼツボウシテイナイ、ダカラトリコメル、アンコクノトビラトナルコトガデキル・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・イマノジョウキョウヲアナタタチニクワシクセツメイシマス。

 そしてモニターは動画を映し出す。

 なぜか3人の若者が主人公のアニメを。



 インターネットカフェ、その1室でダークグレーストーンは結果を待つ、

 あの3人の少女、少なくともそのうち2人を拉致しなければならない、あの偉大な我が父の為に、

 そしてその方法は見つかったのだ。

 そうして扉を開けてその為の行動を起こした下僕が帰って来る。

「命令したように全部殺したか?」

 そう質問する悪魔、そこに入ってきた男は、

「あの3人以外全て殺しました」

 楽しそうにそう返答する。

「ははははっ」

 笑う悪魔、そうだ。何も連れ去る必要なんかない、あいつらがいる場所を牢獄に変えればいいのだ。

「これ以上客が入ってこないように休業中の張り紙を玄関に貼っておけ、それからあいつらを監視しろ」

 そう悪鬼と化した男に命令する。

「はい…」

 そう告げて下僕は部屋を後にする。

 それを見つめて、そしてほくそ笑む悪魔、しかし、自分も見られていることに気づかない、

 目の前で立ち上げられたパソコン、そこからの視線を何も感じていない。













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