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[未完]荀公達の憂鬱~真・恋姫†無双  作者: 夏蘭
公達くんの幼少期
9/20

虚勢

ハッタリも大事なことだってあります。たぶん。

「へぇ、呪い殺すとは穏やかではないわね。それに私の秋蘭を怖がらせるなんて、貴方こそ唯では済まなくてよ?」


「貴様ぁ! 紗蘭を離せっ!」


「!?……はっ、私は何を……」


「……なぜに貴女たちがこちらにおられるのですかね」


壊れた人形と化していた夏侯淵を人に戻した一声。

金髪ちびドS。未来の覇王。乱世の奸雄、曹孟徳だ。叫んでいるのは、うん、元譲殿だろう。

しかし、一目見ればわかる。どうにも俺より年下のようだが、既に立派な覇気をお持ちのようで。

才やら内包する気が隠し切れないってどうなんだよ、ほんとに。


今ですら背筋に寒いものが走るほどであるから、成人した状態の彼女に初めて会えば、俺も今の顔良の仲間入りになる可能性が高い。


しかし、文醜さんや。失禁斗詩は可愛いなぁ、じゃなくて、早く床やら彼女自身の後始末をしてあげるべきではないかな。まぁ、俺も紗耶を愛で続けているから、人のことは言えないだろう、傍目には。


……世の常識など、紗耶の前ではどうでもいいんだが。


「春蘭、飛び掛かるのはまだ早いわ」


頬を撫でられた元譲殿は殺気が霧散し、一気に蕩けた表情になる。もう躾けられてるのか、早い。


「時に、私のことを既に知っているようね。どうしてかしら?」


「先に問いかけたのはこちらです」


「ちょっと、ひーちゃ……」


紗耶は少しだけ黙っていてくれな。ほっぺたを左右からつまみ、少しばかり引っ張る。


「ひたいほ、ぴーぢゃん」


涙目で訴える紗耶も変わらず愛らしい。思わず頬ずりしてしまう、全力で。


「……そんな風に、貴方が紗蘭を愛でて、あっという間に半刻(一時間)が過ぎたからよ。会食の時間などとっくに過ぎているわ」


「なん……だと……」


紗耶の愛らしさのあまりに、時空が歪んだというのか!?

俺の感覚ではまだ三分程度しか愛でていないというのに、時の針は二十倍の速度で進んでいたとは……。


「心の声が全部口から出ているわよ?

しかし、私の紗蘭に何をとも思ったけれど、紗蘭がこんなにも表情豊かにアタフタしたり、顔を真っ赤に染めたり、愛らしい様子を見せるなんて、正直思わなかったわ」


「華琳様の言うように、確かに大人しく人形みたいな紗蘭が、あれだけ顔を赤くしたのは初めて見たかもしれん」


「紗耶の愛らしさはとどまることを知らないので、まったくもって仕方がないな」


「同意したくないところだけど……紗蘭が愛らしいというのは確かね」


「うむ、流石は人材コレクターの曹孟徳どのだな。見る目が違う」


「これくたぁ?」


「遠い東にある異国の言葉で『集める者』という意味だ」


まぁ、かなり未来の話だし、西から回った方が早いんだが、それは些細な問題であろう。


「蓬莱国のことかしら」


「蓬莱よりもっともっと東だ」


「なぜ蓬莱より東に国があると言い切るのかしら。伝聞や古い竹簡にも描かれていないというのに」


(些細な話だ。気にするな)


「煩い奴だなぁ。だから大きくなれないんだ」


あれ? なんか部屋の空気が一気に凍った?


「ひーちゃん! 心の声と表に出ている声が逆だよ!」


「カクゴハイイワネ?」


あ、やっべ。殺気を濃厚に含んだ覇気が部屋中を包んでら。

顔良なんか、可愛そうに。覇気で意識が戻った瞬間、その覇気の大きさにまた失禁してしまってるよ……。

それに、体格に合わせてあるとはいえ、あれは立派な大鎌の一種だな。幼少時から自分の得物にしてたんだな、覇王様。


「些細な話だ。気にするな」


「今更遅いっ!」


明らかに子供が振るう速度を超越した速さで襲い来る大鎌の刃。

ただ、俺には余裕はそれほどないにせよ、模擬刀を構え、受け止めるぐらいの時間はあった。

……片腕にはしっかり、紗耶を抱き留めたまま。


ギンッ!


金属同士がぶつかり、火花を散らす。止められた刃に、覇王様は驚愕の顔に彩られていた。

しかし、紗耶を抱き抱えているのに、巻き込んだらどうするんだよ、このサドっ!


「ひーちゃん、華琳様はそんなドジはしないよ?」


と言いながら、紗耶は念のため、護身用の短刀を構えているし、


「そんなヘマなどしないわよっ、この性格破綻者っ! 私が大事な紗蘭に傷をつけるわけがないでしょうがっ!」


容易く攻撃を止められたように見えたんだろう。お怒りの覇王様の罵倒を頂戴した。

噴火しかけた俺の狂気。それを見越して、二人の発言があり、俺は爆発を逃れたわけだが。


「あれ、また出てた?」


「……公達殿、全て口に出ているよ」


呆れ果てた口調で、妙才殿が教えてくれた。いや、なんか申し訳ない。


「しかし、孟徳殿。速いが、意外と軽いんだ。だから、俺でも止められた」


「なっ……!」


「俺と似たようなもんなのかな。

外に出る殺気の大きさに比べて、力量がまだ追いついてないっつーか。

体格はどうしても年を重ねるしかないし、筋力は長年の鍛練が物を言うだろうからな。

ただ、意志の力って奴は、子供であろうとも鍛えられるって証明でもある」


まるで、虚勢を張っているようにも見えるかもしれないが、そのハッタリが効く相手には有効に使えばいいことだ。


「孫子曰く『戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり』ってな。

戦わずして勝つが最上、虚勢だろうがなんだろうが、物は使いようだ。

……ま、孟徳殿の信念とは相容れにくいかもしれないが」


「私は本物の力を欲するわ。……ただ、その使い方を知る者が、私の裁量の元に、虚実を交えた軍略を取ることまで否定しようとは思わない」


それを認め、飲み込むのも上に立つ者の力量でしょう? と、覇王様は艶やかに微笑む。

この年でこの笑みが出来るというのも、空恐ろしいもので。

華琳さまは自分で虚構の力を使うのは認められない。

だけど、配下の者が使うのまでは「基本」は止めない。


そんな印象を持っています。

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