荀公達として絶賛引きこも……りたい
桂花の親はかくあるべき。
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当時の儒家思想を考えると、流石にどうなんだって設定があります。それゆえの恋姫†無双シリーズを題材にした二次創作ですが、気に触る方は閲覧を控えて頂けると幸いです。
ういす、とある外史の荀公達です。
あ、外史であっても、三国時代は『名』が真名並みに、公式の場では、場合によってそれ以上に重要視されているから、うっかり『荀攸』さんなんて言ったら、即村八分だから注意な。下手したら即斬られても仕方ない。これ豆知識。
前の記憶とか、管理者とかのやり取りを思い出したのは、大体、満五歳ぐらいで。大凡の記憶をしっかり認識したんだけど、そん時にはこの外史の両親が既に亡くなっていたという……。荀攸って両親亡くなるの、そんな早かったか?
ともかく、完全に以前の記憶を認識しつつ、荀公達として立ち回るようになった頃には、俺は荀昆さんという親戚の家に引き取られてから一、二年が過ぎていた。字は教えてもらえてないんだよな……。理由は後で説明するんだが。
さて、両親の死に、思い出も一つも覚えていないから悲しがるも何も無いんだが、まぁ、儒家思想ってのが強いこの時代。遅いかもしれないけど、物心がついた今から三年間は喪に服す、なんて言ったら、なんて孝行者なんだろう、ってことで、絶賛引きこもりが許された。やったね!
流石に食事を含めた身の回りの世話やら、屋敷の中で引きこもるに困らぬ竹簡やら、この時代では貴重な紙で出来た書籍の山であるとか、そういう手配はしてくれたから、退屈することもなく。この世界の常識とか、文字とか、学問とか、知るには事欠かなかった。
元オタクの俺はゲームのみならず、雑学とか知識を仕入れるのに楽しみを覚え没頭するタイプであったから、『ばっちこーい』ってなもんだったのだ。好きな分野の勉強だけやってられる、これが楽しいもんだ。
食っちゃ寝しながら、好きな本を好きなだけ読んでいられる。そんな本の虫となった俺に、荀昆さんもドンドン読み物を差し入れしてくれる。環境としては、本当に恵まれていると言えた。……言えるはずだ。
「夏蘭は文若のいい先生になってくれそうね。母として花が高いわ~」
「義母上……、私ではとても務まりませんよ」
「そうやって謙遜する夏蘭は可愛いわね。ふふ、銀花と呼びなさいな。他の目が無い時ぐらい……」
うん、変態(ドM百合)の親はやっぱり変態だったんだ……。義父もすんげぇ童顔だしさ、性徴が始まったら、私の側室になりましょうね……とか、こっちが分からないと思って、赤裸々な欲望丸出しなんです、ええ。史実の荀家が知れば血を吐くぞ。これが恋姫フィルターか!
ただ、これで済南郡の太守業務を、桂花が産まれるまで見事に統治していた優秀な文官であることは知られていて。さすが、神君の娘『八龍』だと民達に絶大な人気を誇っていた。
桂花産まれたから、普通の母親になります、とかなんて言って職を辞した時はかなり騒動になったとか。ただ、辞めた本当の理由が、当時孤児となった俺の光源氏計画を発動させる為、というのは、俺を含めた少ない身内しか与り知らぬことである。俺の記憶を持っていない普通の公達くんがいる外史だったら、たぶん世に出てくることはなかっただろう……。
あ、だから、原作の恋姫の世界で荀公達がいなかったのか。……おっそろしい外史の暗部だな、おい。
字を教えてもらっていないのも、真名で呼ぶことを強要されているから。俺の真名を教えてくれたのはこの人なんだが……ほんと、どんだけだよ! 必死に『義母上』と呼んで自衛を図る日々です。二人きり……いや、母上の背中には桂花がいるんだが、実質二人きりの時に義母上──銀花さんの名を呼んでしまえば、俺の外史人生終了のお知らせが待っているのだ。
桂花が歪んだ理由。絶対、この人のせいだ。
この親してあの娘あり……。
作者注:正しくは荀『昆』の文字には糸偏が付きますが、常用外漢字の為この表記を使います