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[未完]荀公達の憂鬱~真・恋姫†無双  作者: 夏蘭
公達くんの幼少期
16/20

独白~華琳

なんだかまとまりの悪い文章になっておりますが、平にご容赦を。

なんというか、本当に飽きない友人だと思う。攸は。

この曹孟徳の数少ない『友人』の一人の中でも、冗談や悪ふざけなども含めて、

本当に同じ目線で話をすることが出来る、替えの利かない存在。


……自分で思い返しても、なんというか。

自分の性格からしてこのような友人が出来るとは思っていなかったけれど、

なかなかどうして、人の生というのは面白いものね。


と、齢八歳の私は思いを馳せる。

まぁ、こういう所が、腐った大人連中は生意気だと言うのだけど、

私は私の思いを貫き通すだけだし、荀都尉や攸といった理解者もいる。


桂花という信奉者も出来たことだしね、くすくす……。

私より二、三歳下の娘だけど、都尉の娘だけあって、頭脳明晰で将来有望とくる。

そんな娘が『華琳さまぁ♪』と甘えてくる。悪い気がしないわ。


あの子は本来、攸べったりだった。

ただね、攸が紗蘭至上主義と化してからは、反発もあるのでしょう、私に寄り添うようになり、いつしかそれが当たり前になっていた。


けれど、私は気づいている。桂花は未だに───。









どこの口説き文句かといった風情と自然な雰囲気作りに絆されて、私の幼い内面を見事に彼の前に曝け出す羽目になった、攸との初顔合わせの日から早二年が経つ。


あれは私相手でなければ、完全に求愛と誤解されても仕方がないやり取りだったと、冷静に振り返ることが出来るようになった今でも、そう感じる。


彼は私の側近である紗蘭と生涯を共にすると誓っていて、紗蘭が絡む案件となると、一気に贔屓目が過ぎる只の駄目人間と化す。


ゆえに、彼を知る者は、彼が優しく囁く甘い言葉であれど、それはあくまで親愛の情であり、父や兄のような立場からの言葉であることを十二分に承知している。


たとえば、紗蘭にうっかりバケツの水をかけてしまった町人に、全力で熱湯をぶちまけようとしたり……目には目をどころの話ではなく、明らかに相手の存在を抹殺する勢いであったから、性質が悪い。

その場は全力で私たちや長騫や清臣で止めて、紗蘭に一晩説得させたことで収まったけれど。

翌朝の疲れ果てた春蘭が印象的だったのを未だに覚えているわ。

何か体内の精気を根こそぎ吸い取られたかのような、見るに堪えかねない状況だったもの。


ただ、紗蘭が関わらない時の彼は、なかなかに優秀。

元々、人心をつかむのがとても上手で、なのに、内面は本当に食えない、悔しいかな、私以上に熟成されている。どうやったらその歳でそんな考え方に行き着くかって思うぐらいに。

本人は四十年以上思考放棄せずに生きればそうなります、とか煙に巻くようなことを言う。

この狸爺っ!……と思うこともあるし、当てはまるのがなんというか。外見は少年なのにね、ほんとに歪で。見ていて飽きないのだ。


そんな彼は、荀都尉不在時の代行職責を果たしている。

実際に役職についているわけじゃないけれど、仕事上関わりのある者達は、都尉が抱える案件において、彼女が手が離せない時には攸に話を通しておけば問題ない……という認識を持っている。事実、それでうまく回っている実情がある。


元々、攸さえ絡まなければ、飛び抜けて優秀な都尉……似た者親子ねぇ、ほんと。

ともかく、評判の高い都尉の所へ持ち込まれる業務量というのは本当に多い。

その振り分け、簡易的な案件の処理……秘書としての役割に加え、前段階交渉の案件によって、攸が担当したりもする。


で、相手は子供と思って舐めてかかって、まぁ、痛い目に合うわけね。

幾度か、議録をまとめる為の筆記係として同行させてもらったことがあるけれど、彼に手玉に取られた相手の顔が、赤く青く色を次々に変える様子に笑いをこらえるのが大変で。

いい鬱憤晴らしになるのだ、これが。


ただ、普段の彼の態度は、基本慎み深く、才をひけらかさず、相手への礼を欠かさない。

また、助言を求められて、時に建策になる発想もあると聞くが、

自分の手柄とせず、目上の者の成果としてしまうことも非常に多い。


……私は好かないやり方だけど、

まぁ、出過ぎないゆえに、清純派にも濁流派とも近すぎず遠すぎず。

多くの者に可愛がりはされど、

嫌われることが殆ど無い、礼節を知る若き知恵者と評判が高かった。


荀都尉の名声と合わさって、荀家の次代は安泰である、とまで言われている。


「どうでもいい相手だからこそ、適当に愛想よく振る舞っているんだけどな」


「……あれが適当?」


「えぇ。思い入れなぞ無い相手だし、感情が揺れることもない。

ただの会話ができる人形……は言い過ぎか。ま、聞かれたら助言はするけど、

実際の策の実行となると、詳細を考えるのは面倒だし、判らないって言い切るけどな。

だから、俺は取っ掛かりしか出さないんだから、手柄にするのは勝手なのさ」


……本当の『普段の彼』というのは、ぶっきらぼうで乱暴な言葉使い。

さらに、極度の面倒臭がり。『隠遁万歳!』と公然と叫ぶような、立派な駄目人間だ。

まぁ、あの事務処理能力を持った執務官、というだけで、私は逃すつもりなど毛頭ない。

私専属の秘書兼相談役というだけで、どれだけ有用であることか。


「ほんとに根っこは駄目人間ね」


「常に前を向かない人間は、操は元々大嫌いだろ? 俺にもさっさと愛想つかせばいいのに」


「働きたくないから、働く間は全力で事を片付ける。そして、つかの間の怠惰を満喫する。

仕事だけじゃない。鍛練も、勉学も全部同じ。攸は公私の切替が異常にハッキリしているだけ。

ほんとに嫌だったら、この環境から尻尾を巻いて逃げているでしょうに」


「紗耶がお前の傍にいるんだから仕方ないだろ」


「そうね。春蘭はもちろんのこと、私も、都尉も、桂花や秋蘭も、長騫や清臣も、麗羽まで。

貴方を慕ったり、友とする者がいるこの地を捨てて、隠遁は出来ないものね?」


「……ふん」


本気で隠遁するなら、彼は春蘭を連れて、とっくに姿を消している。

確かに『紗耶』に傾倒しているが、彼自身の情はものすごく深い。

傍目に見れば、長騫や清臣などとの会話など、成人していないにせよ、

立派な恋人同士にしか聞こえないものだと、この曹孟徳は思うのである。


私達を守るため。その為になら、彼は心の内にある激情を燃やし、

日常で見せる温和な人格者の一面を簡単に焼き捨て、外敵をあらゆる手法を持って駆逐する。

……自惚れではなく、これは確信を持っている。


春蘭も攸の依存が多分に含まれた愛情を受け止め続けられるということは、

ある種の異常性を持っているのでしょうね。

あの大剣を見事に振るってみせる贅力の元は、攸の作るご飯と、

彼の臭いを感じながら眠ること、と言い切るもの、あの子。

普通は、負担に感じて逃げ出すぐらいの重い気持ち……と感じる私はきっと正常だ。


ちなみに、春蘭の私への忠誠は変わることが無かった。

『難しいことを考えるのは苦手なんで、国造りは華琳さまに任せて、

私は華琳さまの敵を吹き飛ばすことに全力を振るおうと思うんです。

ひーちゃんが私の従軍師でいてくれれば、私は華琳さまの完全な矛であり盾になれますから』

……こんなことを言ってくれている。

つまり、攸は私が引き入れますよ、ということ。

ただ、攸が春蘭の従軍師……有事には春蘭の部隊専属という運用を希望しているから、

いずれ話し合う必要があるでしょうが、今は先の話ね。


さて、そんな春蘭に傾倒する攸に対して、裏切りと感じているのが桂花だ。

潁川の自邸で暮らしていたあの娘が、月に何日しか帰らない母と義兄を慕い、

洛陽までやってきたのが、攸と出会って半年ほど経った頃。

桂花は四歳になるかならない齢だったのだけど、攸と仲睦まじく様子の春蘭を見るや否や、

『この売○! 義兄上に寄るんじゃないわよ! この変態!! 色情魔!

あっち行きなさいよ! 義兄上が穢れるわっ!』

開口一番が罵倒の畳み掛けであった。


……まぁ、その直後に攸が大噴火を起こして、桂花は生死の境を彷徨いかけたのよね。

都尉は泣きながらに攸に縋って許しを請い、

突然向けられた悪意に呆けてしまっていた春蘭も、攸の狂気の発露に必死に制止を図り、

私や秋蘭、長騫や清臣、確かこの頃には麗羽も一緒に、

身内殺しなどさせてなるものかとばかりに……ああ、思い出すだけでも憂鬱になるわね。


そういう出来事があり、桂花は義兄に裏切られたという思いを強く持つに至る。

その傷心の彼女を優しく愛で……おっほん、慰めた私は真名を交換し合う関係になった。

一方、彼の無心に近い、桂花に対する優しさは変わらなかった。

そこには春蘭や都尉などの必死の懇願に、私達の一昼夜にわたる洗の……説得により、

彼の心変わりを防いだ功績があるが、ま、可愛い桂花の為、頑張らざるを得なかったことだし。


春蘭が絡む時以外、攸は桂花にとって、頼りがいのある優しい知的な義兄に変わりはなかった。

顔を合わせる度に勢い良く罵倒するものの、苦笑いの攸に自分の頭を撫でられると、

勢いが急に萎んで、顔を真っ赤にしながらも大人しく撫でられているのは、

こちらとしても微笑ましいもの。


最近は対抗心が出てきたのか、攸の才などあっという間に超えてやります! と、

軍学や政務の勉強に励む日々。そして、人前では『公達』と字を呼び捨てるようになっていた。

私の前などでは『義兄上』と泣くような声で呟くことすらあるのに。何とも素直ではないこと。


「私には華琳さまさえいればいいんです!」


そう強がる貴女。涙を流しはしなくとも、泣いているのよ、その度に。

ねぇ、攸。春蘭が許すのならば───貴方を慕う、私が知る少女たちに、

未来の希望を持たせてあげてもいいのではなくて?

この曹孟徳が知る煌びやかな少女達が、

将来詰まらない男の伴侶になるなど、決して認めるわけにはいかないのだから───。

というわけで、桂花さん到着です。

あとは袁家勢との絡みを書いて、少年期のメインイベント2つを終わらせて、

戦乱に突入していきたいと思っております。

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