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[未完]荀公達の憂鬱~真・恋姫†無双  作者: 夏蘭
公達くんの幼少期
10/20

泥水

初見の人にはそう見えるのもやむを得ないのです。


主人公はブロントさんの影響を受けています。

某動画のブロント成宜さんが好き過ぎる。

孟徳殿の妖艶な笑みの後、それから半刻程度か。


膝の紗耶からはこの世界に来た理由を耳元で囁かれるように聞かされ、そして、同時進行で、孟徳殿と、紗耶の愛らしさを中心にしつつ、話を深めていると、あえて空気を読まない紗耶が、こう言ったのだ。上目使いで瞳をどこか潤ませながら。


「ひーちゃん、お腹空いた……」


「やっと、公達殿に抱きつくのを止めたと思えば、紗蘭、貴女って娘は…」


孟徳殿にはイチャイチャしているように思われたわけだ。紗耶の演技力も中々のものだ。甘えているのは本心からだろうけれど。


「よし任せておけ! 紗耶の潤んだ瞳の前では光の速さで作らざるを得ない」


そして、四半刻程度で出来上がったものが、お雑煮である。

米を研いで水につけて…などとやっていると、時間がかかりすぎる為、干し餅を使用して、簡易的な雑煮に仕立てたのだ。


「とりあえず、簡単なもので済まないけど」


「ふざけているの!? 泥水のような色じゃないの! せっかくのいい香りが台無しじゃない!」


はっはっは。孟徳さんの反応は予想通り過ぎる。

俺は紗耶さえ喜んでくれればいいのさ。他の人たちには食いたきゃ食え、である。


「これっ! 味噌汁の雑煮だっ! ありがとうっ、ひーちゃんーっ!」


「色は嫌だが、ただ、どうにも食べたくなるいい匂いがする…ううむ」


大喜びして抱きついてくれる紗耶。この反応に孟徳殿や、妙才殿は唖然。

いやぁ、そりゃそんな顔にもなるだろう。日本人で無ければなかなか分かるまいて。


元譲殿は野生の感が働いたのか、孟徳殿がキレたのとは対照的な反応である。


「うんうん、ちゃんと昆布やかつおぶしで出汁も取ってあるからな。味噌作るのは本当に苦労したんだ……」


実は、こっちの世界に来てから、貂蝉が一度だけ俺に会いに来たことがあった。


実際に会った時に、外史の管理者たる、マッチョな肉体にピンクのビキニパンツのみを着用した、オカマの貂蝉であったのは重ね重ね無念である。声はドラゴンボールのセルそっくり。まぁ、強力若本だから仕方ない。

え? メタるなって?

いや、そもそもゲームの世界観そのままの『外史』にいる時点で、それは言わないお約束ってやつだ。


目的としては、俺という存在が外史に根付いたことの確認。

あとはいずれ判る隠し事…間違いなく、今は紗耶のことだと分かる…があると言われたのだが、『内緒よん♪』などと、しなを作りながら言われたので、詳しく問い質す気も起きなかったのだ。

で、困ってることはあるか、と聞かれた際に、元の世界の味が恋しいと言ったところ、味噌や醤油などの作り方を授けてもらった。脳に焼き付けてくれた、という。


実際には、紗耶が恋しいと言ったが、召喚は無理だと言われたのだ。

……既にこっちに転生させてるとは、流石に言えなかったんだな、と今になって分かる。

召喚は無理、と貂蝉は言ったわけで、転生が無理とは言ってなかったからな。

隠し事にしても、中々粋なことをしてくれるものだ。


ただ、転生の手法がどうにもな。向こうの寿命が尽きてから、紗耶はこっちに引っ張られたらしい。何十年のタイムラグは世界を渡れば関係なくなるのかねぇ。ま、今の俺は満たされているので、理由はとやかく問わないのだ。

つーか、紗耶がこっちに来た理由を聞いた今、卑弥呼でもいい。もう一度会う必要があるな。紗耶がこっちに来た以上、まさかとは思うが、新たに生まれた可能性を確かめる必要がある。


さて、その貂蝉の知恵から、実際に作るのはとても大変だった。

味噌汁や醤油に恋い焦がれるぐらいの勢いでないと、正直何度諦めようと思ったことか。


材料の準備からして苦労したんだ。


一回に造る量……一つの容器で、大体6キロできるんだが、この時代の単位で、大豆が六斤、麹が九斤、塩が三斤半……。現代の量で言えば、それぞれ1.3キロ、2キロ、800グラム。


義母上の全面協力があってこそだよ、本当。この外史は酒がよく飲まれることもあり、麹を手に入れるのに事欠かなかったのもありがたい話だったのだ。


「はっ! この匂いは夏蘭の雑煮っ! 私も食べるっ!」


「どうぞ。多めに作ってありますから」


おお、匂いで義母上も復活したよ。


最初は色に躊躇っていた義母上も程よい塩っ気を気に入ってくれたからか、材料代は惜しみなく出してくれる。ありがたやありがたや。

容器としてのいい木桶も見つかったからな。

なんでも、陳留周辺でしか出回らないという代物らしく、気を利かせた義母上が十樽ほどを一気に手に入れてくれていた。


一年目は四苦八苦していた味噌作りも、造り始めて三年目の今は、小桶も手に入れて、配合を変えたり、

麹造りそのものに取り組み始めている。

木灰を利用して、米かゆに発生するカビから、麹菌を少しずつ採取する作業だ。

手探りで行っているだから、実際に麹が造れるようになるのはかなり先のことになるだろう。


凝り性の気がある俺は、やり始めるといつもこんな感じで。

歴史とかにしてもそう。

三国時代末期の羅令則マジチート!……とか言っても、ピンと来てくれる人が少なくて、悲しい思いをしたのも、懐かしい思い出。


紗耶は歴史好きって観点で最初に気が合ったから、こういう濃い話ができる存在だ。

さすが俺の嫁だよな!


「なっ……っ! 荀都尉も紗蘭も、ましてや春蘭まで、なぜ躊躇いもなく、それを口にできるというの……っ!」


「へ? いや、美味ですよ、華琳さま。この塩加減が何とも言えんな!」


衝撃のあまりに背景に稲光がちらついて見える孟徳殿。額を押さえてるってことは、既に頭痛持ちなのか?

妙才殿はお椀に鼻を近づけ、真剣に匂いを嗅ぎながら、口に入れるべきか唸り続けている始末。……ちょっと面白い。

意を決して早々に口にした元譲殿はもう飲み終わりそうだ。


「~♪ ああ、日本人で良かった……お代わりある?」


「夏蘭の造った味噌風味の雑煮は、相変わらず美味しいわ~。

母として鼻が高い高い♪ 夏蘭、お代わりっ!」


「どうぞ、紗耶、義母上。喜んでもらえて何よりですよ」


紗耶や義母上はご満足の様子で、造った俺も嬉しくなる。屈託の無い笑顔を見せてくれる二人は、どこか似ている気もする。


「わ、私もおかわりだ!」


「ありがとうございます、元譲殿。そう嬉しそうに言ってもらえると私も嬉しくなります」


おかわりが出来ると分かった元譲殿の行動も素早く、目を爛々と輝かせながら言われると、作り手冥利に尽きるってものだ。

そして、元譲殿につられた勇者が、もう一人。


「匂いは美味そうだもんなー。よしっ、頂くぜっ!」


「どうです、長騫(文醜)殿」


「うっ、うんめーっ! 斗詩も姫も食って……あ」


「……どうかなさいましたか?」


うまいって言ってるから、味のことじゃないよな?


「姫のこと完全に忘れてた……」


……あ。

単位は三国時代当時の一斤=223グラム程度、としています。


手作り味噌とか、文章にするとあっさりですが、こんな簡単に作れるわけは無いです。醤油にしてもそう。

近々、自分でやってみようとは思っているんですけどね。


麹はさすがに無理ぽ。

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