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神様モドキの異世界旅行  作者: ほえほえ
蹴り出された元オタク
4/40

4・ジゴクののちに巣立ちの時は訪れた




 ソレからの約半年。

 その期間はあたしにとって、思い出したくもないくらいの地獄となった。


 おかーさますっごいスパルタなんだよ訓練とか修行とかじゃなくて苦行だよアレ!!

 もー何度脱走試みようと思った事か!!

 …………後が怖かったからソレすら出来なかったけど。


 寝る時のお子様方と団子になる状態だけが心の癒しだった。ぐすん。

 しかもその地獄の特訓と並行して、錬成なんかもしてたしね。


 だってお子様方がもうすぐ独り立ちなのだ。

 独り立ち、いこーる、この森を出る。

 おかーさまも、お子様方の旅立ちを見送ったら旦那さんのトコに行くそーだ。


 ………………あたし1人だけ森に残るのってイヤじゃない!!


 だからお子様方の独り立ちに合わせて、あたしも森を出て人のいるトコロに行ってみよう、って決めた。

 けどそーするには問題がけっこーあって、その所為で疲れてる中コツコツと練成ラッシュ、と相成ったのだ。


 こんな魔物ばっかりなトコに、ひょっこり人が来るわきゃないとは思うけど。

 もし万が一来たとして。ネグラにしてた洞窟の奥には、今もちょっとした小山の様に積み上がる、武器とか薬とか服とか装飾品とか、アレの中にはオーパーツもどきな見付かったら大層ヤバいものがごまんとある。

 おかーさまに「こんなに作ってどうするんだ」って呆れられた時にストップしとけば良かった。


 …………どーしてあたしあんなに作った。今更ながらにちょっと後悔。


 そう。つまり今回、あの小山をどーにかする為の、魔法の道具を練成しよう、とゆーワケで。

 ぶっちゃけ、この山のよーな武器とか薬とか服とか装飾品とか、あと使わず取るだけ取っておいた、獲物の羽根とか毛皮とか牙とかを、収納出来るモノが欲しかったのだ。

 例えるなら某青い見た目タヌキなネコ型ロボットの、ポケット、みたいな。


 幸い貰った知識の中には、魔道具作成に関するモノも空間魔法の類もある。

 その中にあった。ナマモノ(生き物)以外であれば何でも入る、鞄やポーチなんかの作り方が。

 だからその知識を引き摺り出して、四次元ポケットもどきを作る事にした。


 腰に着ける形のポーチの内側に、ちくちくちくちく空間魔法の魔方陣を刺繍して。

 磨耗防止の状態固定化の魔法を掛けた上で、ポーチの内側に空間魔法を展開。

 1個目は失敗。だけど2個目で完成。


 そのまま全部、ポーチの中に突っ込んでも良かったんだけど。


 武器に関しては、某光の勇者シリーズ4作目のリング・ウェポンみたく。

 衣服は衣服で、某最期の幻想10の2番目のドレスフィアや、バイクに乗って疾走する昆虫類の改造人間の変身ベルトみたく。

 望む時や必要な時に必要なモノを、直ぐ様装備出来る様にしたいなあ、なんて思ったり。

 なんでどーにか腕輪に収納、意識するだけで欲しい武器が手の中に出てくる、着たい服をそのまま身に纏える様に出来ないか、なんて悪戦苦闘。


 27回失敗した。


「……ぅぅうおっしゃーーー!!かんっせーーー!!」


 28個目で完成した時には思わずガッツポーズ取った。

 お子様方に変な人を見る様な目で見られた……その目がすっごく心に痛かったです、ハイ。


 出来た腕輪は白金の、1センチ幅。内側に細かい魔方陣ビッチリ。

 ふぅ、苦労した。コレ1個作るのにひと月掛かったよホント。

 まあでも、1個作っちゃえば2個目なんてサクッて出来ちゃうモノで。

 1個目の腕輪には武器ばっか。2個目の腕輪には服と装飾品を全部ブチ込んだ。

 コレで荷物は何とかなった。


 で、次にする事はといえば、でまたうんうん唸るハメになった。


「……目と髪の色、何とかした方が良いです?」

「そうだな。妖魔族と他の種族は折り合いが悪いからな」


 出会い初っ端におかーさまに言われた。黒は妖魔の上位一族でも滅多に無い色だと。

 しかも妖魔は数千年前、人の国に対して宣戦布告して。数百年くらい前までドンパチやってて、今では絶賛冷戦中なんだそーな。

 ついでに黒髪黒目は不老長寿の薬の元、とゆー話もあるらしく。

 …………しかも妖魔族って話聞く限りもろダークサイドな種族らしいからな。


 そんなのの仲間になるのはイヤだ。そして仲間に見られるのもヤだ。

 平平凡凡が1番だようん。


 んで。

 コレまた都合良く、光を屈折させて作ったマボロシを被って別人に見せる、変身魔法、なんぞというモノがあったのですが。

 はっきり言おう。難易度低いワリにめんどーなのだ。

 だってずーっと意識してなきゃいけないんだよ。動くたんびにそのマボロシも動くよーにって。


 かと言って、この世界は地球でいう『中世ヨーロッパ』。

 科学でなく魔術?魔法とどう違うのか解らないけど、とにかくその魔術が普及してるから、ソレナリに便利っちゃー便利なんだけど。

 髪染めもカラコンもない。

 直接身体に掛けて髪と目の色素を変化させる、なんて魔法も……あ、あった。


 漁ってた知識の中から見付けた魔法を吟味する。

 ふぬ。物質の元素単位から魔力で介入、分解・変化・変質させる元素魔法、ですか。

 ぶっちゃけ元素配列の書き換え?ナニソレ?チートにも程があるでせうが。

 ………………そんな魔法があるんだったら今までのあたしの苦労は!!

 素材探してソレを元に練成してたあたしの苦労は!!


 ぷんすかしながら、元素魔法を元に魔法の道具を作る事にした。

 名付けて変化の首飾り。元素魔法の上に変身魔法まで重ね掛けして、意識しなくても被ったマボロシが持主の動きに合わせてくれる様な。

 5回失敗した。

 6回目で、顔や体格の変化を抜いて、色の変化だけに重点を置いて、やっと5センチくらいの菱形のネックレスが完成した。

 コレまた1月かかった。泣きそうになった……お子様方に慰められて、何とか復活出来たけど。


 ちなみにこの世界の人で、良くいるのが金髪蒼眼らしい。次点で茶髪碧眼。

 金パツはあのギャル男と一緒な光モノでちょっと御遠慮させて頂きたかったから、茶髪碧眼にさせてもらいました。


 コレで大体大丈夫かな、と思ったりもしたけど。

 あたしには、荷物より髪や目の色よりも、隠さなきゃならないモノがあった。


 ソレは、魔力。

 そう、魔力だ。


 おかーさまが言ってた。

 人には持ち得ぬ程の魔力。この世界で魔力総量の多い魔族や精霊族や天使族すら。赤子に思えてしまうくらいに、あたしの魔力はとてつもなく大きいと。

 そして氣力もまた。生命力の強い竜や魔獣を遥かに超えて、きっと心臓が潰れても首と胴体が離れても、瞬時に治癒再生するくらいには死に辛い。

 ドッチも、見る人が見れば直ぐに看破されるんだそうな。


 折りしも今は冷戦真っ只中。


 そんな中に、ポッとあたしが出てったら、色んなトコから狙われる。

 例えば、大きな戦力として丸めこんでしまおう、とか。

 例えば、敵になる前に殺してしまおう、とか。


 ………………森に1人残るのは寂しくてイヤだけど、そんなんに巻き込まれて死にたくもない。


 なのでコレコレまたまた、魔法の道具に頼る事に。

 知識にある結界魔法封印魔法試しに試して、結晶の羽根を封印する、魔力を隠蔽する、気配を誤魔化す効力のあるピアスを作った。


 ……2ヶ月掛かった。

 80個くらい失敗して、漸く作れた。

 しかも1個だけじゃ、羽根2枚分しか封印出来なかった。

 だから羽根と同じ11個作って、耳に全部着けて、よーやくおかーさまと同じくらいの魔力になった。

 もう1個作って、更に半分封印した。


 でも多分、コレでもタダの人にしてみれば宮廷魔術師……魔章師とか呼ばれてるのとタメを張る。

 まあでも、取り敢えずコレで人のいるトコに出られる目途は立って。

 ついでに、そんな事してる間に時期も宜しくなっちゃって。


「なーなー。まだなのかーマヌー」

「うんちょっと待って……っと、よし」


『おおぐい』に急かされ、帯剣用のベルトを着けて4次元ポケットもどきなポーチも腰に着けて、ぽんと叩く。

 そして岩壁に立て掛けてた2本の刀を差して、見た目四角いリュックを背負ったら準備おっけー。


 ……ソレにしても。

 お子様方の中で一番食べて一番食にうるさいから『おおぐい』って。

 なんて安直で解り易い名前なんだろう。


「準備は出来ましたのマヌ?」

「あ、『ながお』。うん出来ましたよ」

「マーヌー、早く早くー。にーさま待ってるよー?」

「はいはい。解ってますって『ちいさいの』」


 そしてお子様方の中で紅一点。一番尻尾が長くてキレイだから『ながお』って。

 末っ子で体格一番ちっちゃいから『ちいさいの』って。

 なんてあんちょ以下略。


「お待たせです『おおぐい』」

「マヌ、俺もう『おおぐい』ちげーし」

「あ、そうでしたそうでした。お待たせですメーレ」


 はい『おおぐい』改名しました。

 何でも彼等銀天琥と呼ばれる種族は、レアな上に変わり種なのだそーで。


 おかーさまが仰るには、魔獣が生まれ育つ要素の殆んどが、大量の魔力の籠った土地で産まれ育つから、らしく。その魔力にずーっと当たってきた魔獣は、その土地ではさいきょーになる。

 だけどその土地から一歩出てしまうと、そのさいきょーの力がガクッと落ちる、らしいのだ。

 だから魔獣は滅多に住処から出てこない。


 だけど銀天琥は進んでお出かけするのだそうな。時にはお出かけした先が凄く気に入ってそのままお引越し、なんて事も。


 だけどさっきも言ったとーり。生まれ育った土地から出た魔獣はその力を著しく低下させる。日頃空気の様に摂取してる魔力が外には無いから。

 そしてその土地から吹き出てる魔力に、良くも悪くも慣れちゃってるから。

 ソレでも並みの獣やモンスターや人間よりは強いけど。対峙した瞬間「あ、コレやべ」なんて思っちゃうよーなヤツ等も、とーぜん中にはいる。

 ソコで銀天琥のご先祖様は考えた。


 自分に合った魔力くれるヤツと契約結べばいんじゃね?


 その相手が主に人間になったのは、ただ単に一番相性が良かったから、なんだそーだ。

 妖精族の魔力は味気ない。妖魔族の魔力はマズイ。竜の魔力は硬いし、獣人亜人は持ってる魔力自体が少なすぎる。存在ソノモノが殆ど魔力の塊な肉体を持たない精霊族なんて、契約した途端にペロリと平らげてしまってアウトだ。


 だけど人間はたくさんいて、魔力の質も量もピンからキリまでだ。探せば好みクリィンヒットも見つかるらしく。

 だから銀天琥は、『美味しそうな』人間を見つけたら即行動する様に親に躾けられる。


 猛烈アタックかまして押して引いて泣き落してでも契約を交わせ、と。


 ……いやぁ。その話が出た時のお子様方凄かったです。

『必見!!契約を交わすのは誰だまぬけ争奪戦!!』なんて勃発したくらいですから。

 ……何故お子様方あたしと契約したかったんだろう。腐の心に侵された魔力なんて腹下しそうなモンなのに。

 …………笑ってないで止めて欲しかったわおかーさま。


 続けよう。

 契約したらその人に新しく名前付けてもらうんですと。


 争奪戦の勝者は『おおぐい』。

 審判役のおかーさまから「勝者、『おおぐい』!」と言われた時の彼の喜びようは凄かった。

 ……そしてキノコ栽培しそうなくらいにずーんと落ち込んだ残りのお子様方の落ち込みようも凄かった。


 ソレはさておき。

 魔力を分けてあげるくらい、あたしには否やも無かったからすんなり契約してあげた。


 いち、『おおぐい』の血の一滴をあたしが舐める。

 に、あたしの血の一滴を『おおぐい』が舐める。

 さん、あたしが『おおぐい』に新しい名前を付けたげる。

 よん、あたしの真名を教える。


 ソレで終わり。

 名前は、あたしセンスあんま良くないんだけどー、と思いながら、長くてカッコイイのカッコイイのー……て考えて考えて考えた結果、『メラルガシュアレオ』て名前を送った。

 でも彼は気に入ってくれて……良く気に入ったなとは思ったけど、略してメーレ。


 そしてあたしの真名は、真神世癒。この世界ではセユ・コーヤ。

 ……本当の名前じゃないんだけどね。じゃあドコから持ってきた名前だって言われたら、あたしの書いてた夢小説の主人公の名前さ!!


 でもコレも出来るだけ伏せておけ、っておかーさまに言われた。

 何でもホントの名前、真名ってゆーのは大変大切なモノらしい。

 古い魔術の中には、真名を使ってその人を操ったり出来る禁術もあるそうな……現在世間一般、ドコロかこの世界の魔術師でもコレ知ってる人は少ないらしいけど。

 でも、昔の名残か何なのか。この世界の人間、特に王族貴族が最初に名乗る時はその真名を捩った愛称みたいのだったり仮の名だったりするらしい。

 メーレの『メラルガシュアレオ』も出来るだけ伏せろって言われた。


 …………うん怖いね。あたしむやみやたらと名乗らないよーにするよ!!

 往来のど真ん中で腹踊りでもさせられたら憤死する!!


 あ、ちなみにさっきからお子様方が呼んでる『マヌ』ってのはあたしです。

 ……いやだっていくら何でも『まぬけ』はねぇ……?


「準備は整った様だな」

「あ、かーさん」

「おかーさま」

「マヌ、忘れ物は、無いな?」

「大丈夫です」


 この1年で、色々手に入れたのは全部ポーチの中。

 服だって武器だって、例の腕輪の中にブチ込んだ。

 うんやり過ぎた。でも悔いはない(きりっ)。


「じゃあかーさん。『ながお』も『ちいさいの』も」

「ああ、身体には気を付ける様にな」

「アレが食べたいコレが食べたいなどと、マヌを困らせてはいけませんわよお兄様」

「食べ過ぎてお腹壊さないでね?」

「だっ、大丈夫だっての!!お前等にーちゃんの事どんなふーに思ってんだよ!?」

「えー。そりゃあ、ねぇねーさま?」

「そうですわねぇ」

「「食べる事に目が無い『おおぐい』だよね(ですわよね)」」

「ぐはっっ!?」

「確かにな」

「……ぅぐっ、かーさんまで……」


 イヤでもおおぐ、メーレはそー言われても仕方ないと思うなぁ?

 毎日毎日獲って来た獲物をあたしんトコに持ってきては料理しろ料理しろ料理しろ料理しろ。

 あたしがおかーさまに人の一般知識教えてもらってる時間までツブしてくれやがって。


 え?なにゆえおかーさまが人の一般知識を知ってたかって?

 何でもおかーさま、お子様方が生まれる前は色んなトコ旅したり、旦那様と一緒に人の町で暮らしてた事もあるそーですよ?

 魔獣はけっこー寿命の長い種だけど、中でも銀天琥は竜とエルフと魔族の次くらいに寿命が長くて、モチロン人型にもなれるんだって。お子様方はまだ無理らしいけど。


 で、おかーさまの旦那様は、今もとある国の王様と契約を交わしているという。

 おかーさまがこの森に帰省したのは子育ての為。

 お子様方が成体になったら送り出して、旦那様の元へ帰るんだそーな。

 そしておかーさまがお子様方に仰るには。


 おとーさまには自力で会いに行け、そうすりゃ晴れてホントに一人前だから、らしい。


「マヌ、我が愛し子を頼む」

「まあ、自信はないですケドお腹を壊さないよーにだけは注意しときます」

「マヌっ、何だよお前まで!!」


 いやだからメーレはそー言われても仕方ないんだってば。

 はっはっはっと笑ってメーレの首をなでなでかきかき。

 やっぱネコ科です。ぐるぐるいってますココ気持ちイイみたいです。


「んじゃあ、かーさん。王都で」

「ああ、待っている」

「にーさま!!ボクの方が絶対早く見つけるんだから!!」

「あら、私だって負けませんわよ?」

「へんっ、俺だって負けねーよっっ!!」


 おとーさまがドコの国の王様と契約してるのか、あたし達は聞いてない。

 モチロン『ながお』も『ちいさいの』も、おかーさまから聞いてない。

 けど王様だ。大小含めて10くらいあるらしい国の中の1人。

 ドコぞの傭兵と契約してるとかってゆーおとーさまのお兄さんの銀天琥よりゼンゼン見付け易い。

 見送るおかーさまと残りのお子様達に手を振って。


 1人と一匹、おとーさま探しの旅に出発です。




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