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神様モドキの異世界旅行  作者: ほえほえ
蹴り出された元オタク
3/40

3・いつの間にか死にかけて順応して色々試して



 銀天琥一家のお家、とゆーか洞窟にご招待されてから約3か月。

 …………この3ヶ月の間色々あった。良くまだ生きてんねあたしって思う。


 朝起きて。朝ごはん探しにネグラの周りを散歩したりして。

 ……魔物に追い掛けられて。

 お昼に食べれるモノを探しに森に入ったりして。

 …………食肉植物に呑み込まれ掛けて。

 夕方に、晩御飯にしようと川で釣りしたりして。

 ………………怪物みたいな魚に引き摺り込まれ掛けて。


 他にもさ、齧った途端爆発する木の実とかさ。

 見た目ふつーなのに猛毒なきのことかさ。

 甘い花の蜜を飲んだ途端にオスメス関係無く動物達にサカられて追い掛けられるとかさ。


 うん。良くまだ生きてる凄いよあたし。

 おかーさま達いなかったらホントに死んでたよあたし。


 まあでも、悪い事ばっかりでも、なかったと思う。


 夜寝る前、おかーさまはあたしに色んな話を聞かせてくれた。

 お子様方にとっては復習だ。

 この世界、ラグディシアの事。ラグディシアの神様の事。

 大陸の事。種族の事。色々、教えてくれた。


 他にも、神様モドキになった所為か、運動神経とか体力あり得んくらいに良くなってた事が解ったし。

 岩を拳で粉砕するだけの力がある事もチーターもどきから余裕で逃げれるくらい足が速くなった事も解った。

 何より一番嬉しかったのは、あのギャル男神様のくれた知識の中に魔法があった事と、ヤサ男神様の魔法使いとしての技術と経験。

 その魔法知識の中に、錬成魔法があった事だ。


 人のいる場所まで降りるには、あたしの髪と目の色は目立ち過ぎる。

 妖魔族で無いと主張したトコロで、誰が一体その事を信じてくれるだろう。

 見つかった途端に有無を言わさず拘束、そしてリンチ、もしくは処刑台、の構図はどうしても消えない。

 しかも黒髪黒目は不老の妙薬とされている。らしい……薬なんかになりたくないよガクブルガクブル。

 だけどあたしは人のいるトコロに行きたかった。欲しいモノがあったのだ。


 …………だって何時までもマッパってイヤじゃない!!


 や。だって魔力の具現化は楽なんだけど、一定の時間が経ったら魔力に戻るのですよ。

 某チョコボ頭が着てたのを模した服は、1日で魔力に還った。

 半永久的に物質化させとくには、メンドーな術式を組み立てておかないといけない事が後に判明。

 熱さも寒さも痛みも一定以上になると解らなくなるし、風邪ひいた、とかなかったけど。お子様方の毛皮気持ちイイんだけど。


 ……………………でも何時までも葉っぱで大切なトコ隠してほぼすっぽんぽんはイヤじゃない!!


 だから練成魔法に気が付いた時は思わず小躍りしちゃった。てへ。

 絹とかカシミヤなんて贅沢は言わない。ふつーの服が欲しいのあたし。


 まあ、幸運にも布の元になるのはいっぱいあった。

 木の柔繊維は麻になるし、ごはんとして今まで狩ってきた獣の毛とか皮とか、やっぱりごはんになった鳥の羽毛とかもあった。


 ソレからはもう練成ラッシュだった。

 服が出来たら今度は鉄を掘り起こして包丁とか鍋とか。

 その次は刀とか鎌とか。ちょーしこいて今までやった事のあるゲームに出てきた武器とか。

 武器だけじゃ飽き足らなくなってアクセサリーとか。

 薬草から薬とか。


「……ふむ。何とも面白いものだな、異界の魔術は」


 おかーさまに感心されました。てれてれ。

 ちなみに今はお昼ご飯も終わった正午過ぎ。お子様方は外で遊んでなさる。

 どーゆー遊びなのかは……き、聞かないでくれると嬉しいか、にゃー?


 て、ゆーかですね。

「この世界にはこーゆー練成魔法、無いんですか?」

「どうだろうな。我等魔獣の魔力の行使と人の魔術形態は全く違うものだし、土人形を作ったり火を剣に纏わせたりする魔術は見た事があるが、素材を揃えただけで物を作る魔術や身体能力そのものを上げる魔術など聞いた事は無い。いや、古代魔法であれば探せばあるかも知れぬが」

 ありゃ。そーなのか。

「ソレにしても、お前の魔力は本当に無尽蔵だな。コレだけ作って、未だ枯渇せんとは」

 うん。まだまだゼンゼン余裕です。


 あのギャル男の言葉を借りるなら、『世界の一柱任せても良いくらい』な階梯にまでスキップしたらしいかんねあたし。


「……そういえば『まぬけ』は異界の神だったか」

 む。もしかしておかーさま忘れてましたか。

「ああ。すっかり忘れていた。何せ見目は普通の人型で、しかも全く神々しくないからな」

 …………うんソレはあたしも認めます。あたしだって良く忘れてるくらいだし。


 あ。神様で思い出した。

「この世界の神様って、あたしの事どー思ってんだろ」


 いちおー、ココで無い世界の神様の『加護ちから』をもらって神位まで昇ったけど。

 あたしは純粋な神様じゃない。ベースは人間だ。

 出来得る事なら人として、暮らしたいとも思ってる。まあムリだと解ってるけども。


 ……でも。あたしがココにいる事自体、この世界の神様達が拒絶したら。

 あたしコレからどしたらいんだろ。


 そんなあたしの独り言を聞いてたおかーさまが、ふ、と目を細める。

「大丈夫なのではないか?」

「イヤにハッキリ言いますね」

「まあ、な。もしお前が『良くない』者であれば、この世界に落ちてくる事すらあり得んだろうからな」

「……まあ、そりゃそうかもしれないけど」

「ソレに、この世界の創神ラグディシアは慈悲深い。異界の神たるお前を歓迎してくれるだろう。ソレでも気になるんだったら、ルーデルディアに行ってみれば良い」


 はい?

 るーでる、なに?


「神の庭、とも呼ばれている、空に浮かぶ島だ。神々が下界の様子を見る時に降りるとされていてな」

「……そんな、トコがあるんですか」

「まあ、本当にあるかどうかは知らんが」


 がくーっ。

 ソレって、お伽噺とかそーゆー類ですか。


「古代、天使は神の使い、そして竜はそのルーデルディアの門番だったという。だから竜族や天使族に話を聞いてみれば、何か解るかも知れん」

「…………天使に、竜、ですか」


 てゆーかそんな、いるんですか天使。

 しかも竜族なんてのもいるんですか。

 黒髪黒目な魔人族も堕天族もいて、妖魔とやらもいらっしゃる。

 尚且つ目の前にいるのは喋る魔獣。

 ……………………そーとー死亡フラグが乱立しそうな世界ですこと。


「まあ、行くにしても行かんにしても。まずはこの世界の基礎知識が必要だろうがな」

「…………あははは、宜しくお願いします…………」


 この年でまたお勉強。

 はぁ、ホントいやんなっちゃうなぁ。

 この先、生きていけるのかしら。


「だがお前、見目は本当に殆んど人と変わり無いな。異界の神は皆そうなのか?」

「みんなそうって、何がです?」

「いや、神は異形が多いからな。創造神ラグディシアは背に翼と蛇の下半身を持つと言われているし」

「あ、そーゆーコト……そーでもない、と思います。あたしだっていちおー、隠してるのあるんで――――えーと、コレですケド」


 ばさり。翼を出してみた。

 背中に6枚、2本角の鬼みたいに頭、というかコメカミの上の部分に4枚。両耳の裏に1枚ずつ。

 あと両手の甲と肘、両足の膝の横と踵に1枚ずつと、腰の左右に1枚ずつ、大小合わせて全部で22枚。

 しかも見た目は無色透明なガラス。なのに触り心地は羽毛。


 ぷちん、と頭のから1枚抜いて、おかーさまの目の前にかざす。

 で、手から離したら光って雪みたいに溶けて消えて再びあたしの頭から生えた。


「サスガに、こんな羽持ったの、この世界にはいないんじゃないかなぁ、と」

 ボー然、と。目を真ん丸くしてあたしを凝視するおかーさまに、ちょっと苦笑。

 だけどおかーさまは瞬時に目付きを厳しくして。

「…………お前」

「はい?」

「今後一切その羽根を出してはならん」

「……はい?」


 え、イキナリなに。


「人前でも魔物にも魔獣にも――――」

「たっだいまー!!」


 うにゅ?

 あら、お子様方戻って来たわ。今日の練成はココまでかしら。


 ――――なんて。

 そんな事をのほほんと考えた、その時。


「来るな!!愛し子達!!」

 咆哮。

 気付いた時にはおかーさまは、その大きな身体であたしをお子様方から隠していた。

 辛うじて、見えた。お子様方の顔は――――


 驚愕と。ソレ以上の、恐怖。

 ………………え。なん、で?


「『まぬけ』!!その羽根をしまえ!!早く!!」


 ビリビリと、おかーさまの怒号にハッと我に返る。

 そしてワタワタ慌てて、羽根を消した。

 ちらん、とあたしを見たおかーさまは、はふ、と小さく溜息を吐く。

 そして。


「――――すまなかったね、愛し子達。行き成り大声を出してしまって。もう、大丈夫だ」

 お子様方に近付いて、丁寧に顔を舐めて毛繕いをする。

 だけどお子様方は、固まったまま。

 恐怖に彩られた顔で、あたしを見たまま。


「…………な、なんだったんですの、今のは…………」

「…………お、おまえ、ま、まぬけ、だよな、そうだ、よな…………?」

「…………こ、こわかったよ~ぅ…………」


 え、だから、なん、で?


 呆然、とお子様方を見る。

 おかーさまに舐められて、徐々に強張りが溶けていくお子様方を。


「――――訳が解らん、と言った顔だな、『まぬけ』?」


 そのおかーさまが、ある程度お子様方がホッとしたところで、あたしに向き直った。

 じとり、掌に汗が滲む。背筋が伸びる。

 あたしを見るおかーさまの目は、厳しい。


「……我もうっかりしていた。余りにもお前が人に近過ぎて、其処まで深刻に考えていなかった――――神とは、我等地上に住む生き物とは何もかもが逸脱した存在だ。命も力も、他に与える影響も全て」

「………………うん」

「お前が結晶の翼を出した途端、お前の威圧感、魅了が半端無く跳ね上がった。我だからこそ理性を保てていたが、心が未熟な者ならお前の魅了に狂い、弱い生き物なら見ただけで息が止まってそのまま死んでしまっても可笑しくない程だ」


 え。

 あたし神様モドキになった覚えはあっても、そんな物騒な生き物になった覚えはないんだけど。


「しかもお前は、どうやら魔の宰らしい。魔を司る神。我等魔獣は魔力を糧に生きている故、お前の影響を大きく受ける」


 げ。そなの?

 あたしモドキだから、力とか貰っても、何の、神様なのかとか、決定してないって思ってたのに。

 イキナリごっくんさせられてハイお前今から神様ね、なんて軽いノリだったのに。


 …………あ。でも確かに。

 言われてがさがさ漁ってみた、頭ん中にブチ込まれた知識には、確かにある。あたしの持つ神の力の属性。


 世界の全ては、生のアーグ(氣力)、命のエーテル(魔力)、魂のユピル(霊力)、と大体3つに分かれるって知識にはあって、その中でもあたしはエーテルが強い。

 あの22枚の翼の大部分は、そのエーテルが結晶化したモノだ。

 そして右目にもエーテルが集中してる。左目はアーグが集中してるけど。


 しかもあたしのエーテルは純度すらが高い。何にでも溶け込むくらいに。

 けれど何にも染まらない――――故に何にでも、ある程度干渉出来て、取り込んで、操って、作り変えられる。森羅万象、全てに効果を持つ力だ、とある。


「…………最強、ではないか」


 うん確かに。

 ココって剣と魔法で魔物と戦うファンタジーな世界だから、魔力司るって最強以外の何者でもないけどさ。


「でも神様成りたてだし。力の使い方に慣れない間は、多分ソコ等の人に毛が生えた程度でしかないと思うんだけども」

「其れでも魔力の質量は人の魔術師やエルフ、魔人族すら軽く凌駕している――――何より、あの羽根は毒だ」

「……ど、毒って……」

「強過ぎる薬とて身体を害すだろう。其れと同じだ、と言っている」


 真面目に言ってのけるおかーさまの目は真剣そのもの。


「だから『まぬけ』。今後一切、結晶の羽根は出さぬ様に」

「………………ぜ、善処します」

「善処ではならん。よし、出さなくても良くなる様に我が鍛えてやろう」


 …………うーわーぁ。

 おかーさまヤる気まんまんですね。


 まあでも、コレはあたしにとっても、良い事なんじゃなかろーか?

 だって最強、っても。自分の力を使いこなせる様にならなきゃ、ただの宝の持ち腐れ。

 ソレに、大き過ぎる力は時に自爆要素となる。

 今まで読み漁ってきた小説やら何やらの中じゃ、テンプレだ。

 この森の中で魔物に襲われた時だって、おかーさまやお子様方がいたから何とか生きてられただけだし。

 幸い目の前のおかーさまは伝説級の魔獣。先生としては申し分ない、かも?


「お、お手柔らかにお願いします」

「ああ。身にも心にも強さを叩き込んでやる」


 へこん、と頭を下げたら、牙を剥き出しにして笑った。

 ……は、早まったかもしんない。





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