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神様モドキの異世界旅行  作者: ほえほえ
最果ての 森
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探す 何処に在るのか解らない 其れを





 風。其れは絶えず緩やかに枝葉を揺らし。

 光。頭上から零れ落ちる。踊る。緑に反射し木漏れ日を生む。

 香り。濃い草と花と土と水の。大気の。

 森。恐ろしい森。だが同時に恵みをも与えてくれる、森。あらゆる生き物の声に、命に。満ち溢れた。

 其の事を知る者は多い。


 忘れている者もまた、多い。











 かさり。落ちて土色と化した枯葉を踏む。かさり。かさり。二音。

 かさり。何処を見ても同じ様な風景。密集する樹木。かさり。奥へ奥へと入り込む。森の中に在るまじきもの。二人。迷う事無く。

 かさり。しかし望むものは、何処までいっても見つけられぬまま。

 かさ…………止まる影。足場の悪い獣道の上。零れる、吐息。二つ。


「…………ここにもいねー、な…………」

「…………ココにもいない、ね…………」

「どこ、行ったんだろーな…………」

「…………ドコ、行っちゃったんだろーね」


 二人。森の中。酷似した貌で、酷似した声で――――――酷似し過ぎた、表情で。零れる、全く同意語の台詞。


「ここ、じゃねーってコトだな」

「他のトコ、にあるってコトなんだろーね」


 樹木と枝と葉に隠れ、まともに見えぬ空の蒼を、見る。二人。同じ場所へと心を馳せる。

 深い森。優しい森。何処までも美しく、そして哀しい、森。此処ではない、けれど確かに存在していた筈の。

 己達が愛した宝。今尚、愛する至高の玉を。其の奥深くに内包し守り封じていた。

 

 ――――――最果ての、森。

 

 一人は嘗て其の森にいた。そして一人は話に聞いていた。

 

「次、行くか」

「うん」


 再び動く、影。二つ。かさり。再び鳴る、枯葉。

 突き進む。来た道、ではなく。前に在る細い細い獣道を。最奥を突き抜け、そして森の外へと出る為に。

 深い森。優しい森。確かに此処は深く優しいけれど。彼の場所に、似てはいるけれど。

 美しさも哀しさも、彼の小さな楽園には程遠い。


「どこに、いるんだろーな」

「ドコに、いるんだろーね」


 問いに返るは同じ問い。


「――――――レイル………………」


 どちらとも無く零れた其の声は。其の名は。

 風と枝葉のざわめきの中。木霊する事無く霞んで消えた。


 ――――――永遠の子供は、今、何処。







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