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神様モドキの異世界旅行  作者: ほえほえ
蹴り出された元オタク
10/40

10・もらったカードに撃沈した挙句ぶつかった人には再びぶつかる


 そして3日目。

 起きたのはやっぱり昼過ぎだった。

 ダメなんだよあたし朝。弱いんだよホントに。

 メーレも惰眠ダイスキなもんだから、朝起こしてっても当てにならないし。


 んで。

 今日はランカー証が出来る日だから、宿を出ようと1階に降りたら。


 ……ライラさんに捕まりました。


 曰く、どんだけ食が細くても、3食きっちり食べんさい、だそうな。

 でも、昨日あんまりにも食べるのに時間が掛かってたから、今日の定食あたしの分はふつーより少なめ。

 30分掛けて食べた。やっぱりちょっと多かったけど、食べれない量じゃなかった。

 …………メーレはあたしのよりも量が多かったけどね。

 明らかに物理法則無視し過ぎだろ自分の(今の)身体と同じくらいの量なんて。ほらほらライラさんもウェイターさんもウェイトレスさんもビックリしてるじゃないか。


 まあ、ソレはさておき。


 ごはん食べ終わった後は行って来まーすと鍵を預け、早速ランカー証貰いにギルドへ。

 入ってすぐカウンターに直行して、ランカー証貰ってちょろっと説明聞いて速攻で出た。


 …………や。ちゃんと説明聞きたかったんだけどね。

 帰りにまたあの本屋さん寄りたかったんだけどね。

 ちょっと、そーゆーワケには行かなくなりまして。


 もー競歩なイキオイで肩から落ちそうなメーレを押さえながらだかだかと来た道を戻る。

『日溜まりの草原亭』が見えた時には小走りだ。

 そのままぱたぱたと走って扉を開けて。


「いらっしゃ……おや、マヌちゃんじゃないか。どうしたんだい、さっき出たばっかりなのに」

「ええ、ちょっと忘れ物しちゃって」


 きょとん、としたライラさんに、なはは、と空笑いして鍵を受け取る。

 そのまま、2階へダッシュ!!

 どたどたと走って、焦りながらドアを開け。

 入ってすぐばったんとイキオイ良く閉めて、きっちり鍵掛けて布団の上に正座でダイブした。


 ――――そして、懐からさっき貰ってきたばっかりの、ランカー証を出す。


『マヌ?』

「……………………何だコレ」


 きょとんとした様なメーレの声も無視して思わずぼやいても仕方ないと思う。

 あの魔法の青い墨と、魔術加工した縦10センチ横5センチ厚さ2ミリくらいの金属板で作られた、ランカー証。

 世間一般の、キャッシュカードとかと同じくらいの大きさかな?って思ったら、イヤイヤどっこい。

 カードはカードでもタロットって感じがした。しかも首から下げられるチェーン付き。

 や、ソレは良い。イイんだ。


『マヌ?イキナリどしたんだ?』

「………………………………何だコレ」


 渡された時、コレは表面にあたしの名前しか書かれてなかった。

 初回時に、登録書で書いて押してってした、魔力と魂のデータしか入ってないって言われた。

 コレを正規のランカー証にするには、持主の気を流し込まなきゃならない、と。

 ……気ってのが解らなかったら大体のイメージで、とも言われた。なんつーアバウトな。

 まあ、ソレもどーでもイイんだ、今は。


『なあ、マヌってば』

「……………………………………何だコレ」


 気が初めてカードに循環して、登録証の交付は終わり。晴れて正ランカーとなる。

 気が循環したカードには、持主のステータスがRPGばりに出てくる様になるそーだ。

 特殊だけど、神聖魔術のウチのひとつらしい。

 この世界の神様と言われる『白帝』ソル・ファガーン。その彼の属神である『誓約の神』ソフフォードと『記録の神』ラルフォードの力を借りて、このランカーカードは作成されてるそーだ。

 そしてこのカードに浮かび上がった数値は、その神様達が持主の詳細を記したモノである。

 …………この世界では、神様とゆーのは実在しててしかも人の生活に密着してるらしい。日本の八百万の神みたく。

 いやいやいや、ソレも今はどーでもいんだよ。


『マーヌー』

「……………………………………何だコレ」


 あたしのカードも、気を流したら直ぐに循環して、一瞬光って色んな項目がだだーっと出てきた。

 名前の下に、魔力・霊力そして気力。知力・体力に、魔力抵抗力。俊敏力・筋力・耐久力。幸運・属性・種族に称号。あとスキル。今見てもホントにRPGだな……ってのはおいといて。

 …………RPGばりに出てきたステータスが尋常じゃなかった。


「……………………………………何だコレ」


 そう。あたしのカードに出てきた数値。

 それは……


 ギルドランク G

    登録名 マヌ

     種族 異界の渡神

     属性 世界(魔)

     気力 SSS(-)

     魔力  EX(限界突破)

     霊力   A(+)

     知力   D(-)

     体力  SS(-)

     抵魔  EX(限界突破)

     俊敏 SSS(+)

     筋力   S(-)

     耐久   S(-)

     幸運   D(+)

     称号 精霊の祝福受けし者

    スキル 底無しの書庫

        造魔

        二十二翼真の透色

        オールマイティ


 ――――何度でも言おう。


 な ん だ こ れ 。


 ギルドランクは、まあ良い。

 大きい方からSSS・SS・S・A・B・C・D・E・F・Gと、10段階中、最下位のGランクだ。

 このランクはギルドへの貢献度とかも反映されるって言ってた。

 だから、まあ良い。


 ちなみに平均的なランカーのランクはD。ひと月ひと家族を余裕で養えるくらいの稼ぎになる、らしく。

 CからBに上がるには、努力の上に才能がいる、とか。

 更にAランクの人には、たまに拒否が不可能な仕事や、国家の重要機密にあたる仕事を依頼される事があるとな。

 そんなシークレットクエストを数こなし、依頼主の信頼を得ていく事で、Sランクへと上がっていくらしい。


 ……脱線した。戻そう、話の路線を。


 だけどステータスはギルドランクとはちょっと違ってて、ランクGはレベルの0、ランクFはレベルの1っていうふうになってる。

 レベルを上げたら自動的にランクが上がって、で、最高レベル9のSSSでカンスト。

 つまり、何が言いたいかとゆーと。


 EXって、限界突破って何だ最高SSSじゃないのか。

 あたしはランカー成り立てだぞ。

 ふつーFとかGとか一般的な平均値はDじゃないのかB以上は成績優秀者しか着けられないんでしょ。

 しかも何故知力と幸運値が低い!!


 オマケに何だ、このスキル。

 書庫、は多分知識の事だ。造魔、も言うに及ばずとして。

 二十二翼真の透色、ってのはアレか羽わさわさーっ状態の事か。

 でも『オールマイティ』ってのは何だ。

 ついでに種族と属性!!誰かに見られたら1発でアウトじゃないか!!

 この称号だって何!?精霊さん達に好かれるよーな事なんてしてないわよあたし!?


 ……不幸中の幸いは、隠したいトコロに消えろ―と思いながら触ったらホントに消えてくれる事だろーか。

 でもソレも完璧じゃない。

 落してギルドにでも届けられた日にゃ……あ、悪夢だ。

 どーしてギルドなんかに登録しようと思った、あたし。


『マヌ?お前ホントに大丈夫か?』

「…………あー、ちょっとヤバいかも」


 ぽふん、とあたしの寝転ぶベッドの縁に座ったメーレに、ぴら、とカードを見せる。

 メーレはソレをサラッと見て……途端に難しい顔をした。


『…………コレ誤魔化せねぇの?』

「…………やー、流石にムリでしょ。管理してんの神様らしいし」

『……サスガだぜ神様……』


 メーレだって、あたしの正体がバレる事がどんなに空恐ろしいモンか、言われなくても解ってる。

 こんなの堂々と見せられるモンじゃない。誰かに知られた日にゃ大騒ぎ間違いナシだ。


 ギルドランクと名前以外をケシケシ消したランカー証を前に。

 あたしはその日1日、布団の中から出る事は無かった。




     ~・~・~・~・~




 次の日。

 あたしは開き直った。ええ、開き直りましたとも。

 作っちゃった以上もーどーしよーもない。


 お財布代わりの腕輪作ったさ!!

 お金と一緒に仕舞い込んださ!!

 他の腕輪含め手首を切り落としでもしない限り落ちない大きさにしましたさ!!


 そんなこんなで、今度こそ本屋に行こうと昼過ぎに1階に降りたら。


 ………………何故かライラさんが仁王立ちしてました。


「おはよう、マヌちゃん」

「……お、おはようございます……」

『……マヌ、おばちゃん怖ぇ』


 うん、そうだね。怖いこわいコワイ。

 笑顔なのに怖い。


「って言ってももう昼だけどね」

「そ、ソーデスネ」


 うん怖い。

 何故だ。何故そんな怖いんだライラさん!?


「ねえ、マヌちゃん。昨日あたしが言った事、憶えてるかい?」

「え、昨日、ですか?」


 何を言われたあたし。思い出せあたし。

 昨日慌てて帰って来た時にビックリされて、その前に……

 あ。


「思い出したかい?」

「は、はい……えと、すみません」


 しゅーん、として謝ったら、でっかい溜息吐かれた。


「……初心者とはいえ、アンタ、ランカーになったんだろ?」

「…………はい」

「体力作りも体調管理もランカーの仕事だよ?」

「…………はい、すみません」

「朝弱いのも食が細いのも解った。けどね、せめて夕飯はしっかり食べな。お金無いワケじゃないんだろう?」

「………………ごめんなさい」


 うわぁん。ホントにごめんなさーい。

 しゅーん、としながら謝って。

 そしたら何故か、ぐっ、とたじろいだライラさんは、仕方ないねぇ、なんて苦笑い。


「お昼、食べるだろ?」

「はい」


 そのまま席に案内されて、ちょっと待ってたら直ぐにライラさんが料理を持って来てくれた。

 お肉のソテーっぽい。量は少なめ。ロールパンとオニオンスープが付いてた。


『うおー!くいもんー!!』

「はいはいメーレちょっと待って……いただきます。」

『いただきます!!』


 ぱむ、と手を合わせて早速食べる。

 ……うぬ。おいしい。

 だけどこー毎日洋食系ばっかだと……ごはんとお味噌汁が欲しいなぁ。

 や、でも中世ヨーロッパ風な世界に味噌や醤油はないだろう。

 魚醤でも広めるか?アレ魚の内臓と塩だけで出来るし。


 なんて思いながらまくまく食べて。

 午後からは、予定通り本屋さんに行こうと『日溜まりの草原亭』を出た。

 出た、んだけど……


「……てーきゅーび……」

『休みって事か?』


 コレは予想してなかった。

 この世界にもあるのか定休日。

 しかたないから路線変更。


「んー、宿に戻って何か作るかな」

『……部屋に籠っちまったら時間忘れねぇ?』

「…………う、ライラさんにまた怒られるのはヤだな」

『ギルドってトコで情報収集とかってのは?』

「……やー、でもソレもはかどらないんじゃないかなぁ」

『何で』

「知り合いいないし、ギルドランク低過ぎ。あんまイイ情報手に入んないと思う」

『そっかー。アソコ以外に本のいっぱいあるトコってねぇの?』

「探せばあるかもね……このまま、街中を散策してみるかな」


 あ、イイかもしんない。どっかに図書館無いのかな図書館。

 ――――そんな事をブツブツ言いながら歩いてた所為だろう。


 どんっ、と。

 そんなに強くはないけれど、右の肩が誰かにぶつかってしまった。


「っ」

「ごっ、ごめ―――っっ!!」


 思わず謝ろうとパッと振り向いたら、ぶつかった人もおんなじ様に口を開き掛けて。

 …………慌ててあたしを見て、固まった。


 ――――ウン、キニシナイヨ、キニシナイ。


 て、ゆーか……

 この子は人にぶつかるのが特技か何かなんですかい?

 灰色の髪とイヌ耳。ふさふさの尻尾。あたしより少し下の背丈の。ソレは、昨日あたしにぶつかって、脱兎の如く逃げ出したあの少年だ。

 そしてやっぱり、というか何ていうか。彼の隣にはあのネコ耳ちゃんもいて。


 ――――おろ?今日はもう2人、連れがいるみたいですな。

 1人は……ん?んんん?

 どっかで見た事あると思ったら、ギルドのトラ耳受付くんではないか。

 あらヤだ知り合いだったのアナタ達。


「……っ、あ、あんた……」

 そのトラ耳くんはギルドにいた時の服装とは違う、いかにも冒険者です、みたいなカッコであたしを見てビックリしてる。


 そしてもう1人。ネコ耳ちゃんよりちょっと高いくらいの背丈。緑の髪に細めの目の、青白い肌にうっすら見える鱗がグランさんみたいな。ネコ耳ちゃんとはタイプが違えど、けっこーな美人さん。

 ……なんだけど……どーしてあたしは初対面でこんなに睨まれてる。


 まあいい。今は取り敢えず固まっちゃったイヌ耳くんだ。

「すいません」

「……あ……や、こちらこそ……」

 へこり、軽く頭を下げて謝る。

 わんこはぎくしゃくと、ソレでも昨日よりは滑らかに、ギチギチと頭を下げた。

 ソレを見て、じゃあ、と再びメーレと共に歩き出す。


 街中の探索開始、目指せ図書館だ。

 だけど歩みは、くん、とした小さな引っ掛かりで数歩しか進まなかった。


 …………………うん。何だろね。何でこんな、でじゃぶが起こるんだろね。


 ちろん、と引っ掛かるトコを見てみたら。

 腰に着けてるポーチ。ぎゅっと掴んだ腕……辿ってみますと、やっぱり、わんこ。

 しかもどーして自分で引き留めておきながらそんなビックリした目で自分の手を見てるのさ。

 ってゆーか昨日も思ったけど何この子あたしに


「何か」


 用でもあんの?だったら早く言ってよコッチは早く移動したいんだよ周りの目が痛いからっ。

 ソレともまた脱兎かもしかして。

 ソレも勘弁して下さいよ前のあの後「お前一体何やった」って視線がグサグサ痛かったんだからっっ。

 てゆーか今一番痛いの緑の美人さんの視線なんだからねっ。

 ネコ耳ちゃんなんて泣きそうだしっっ、トラ耳くんすっごい険しいわよ顔がっ!!

 取り敢えず要件言ってほらほら周囲の視線が凄くなってきてるでしょ!?


「――――なにか」

「っ、っっ、あ、のっ、き、聞きたい事がっ、有るんですけどっっ!!」


 ……ふぬ?

 聞きたい事、とな?


「あっ、ああああなたはっ、ととと闘技大会のしゅしゅしゅつ出場者ですか!!」


 ……はい?

「とうぎたいかい?」

「「「「………………え?」」」」

 とうぎ、と言えば討議、いや闘技の事ですか?

 とゆーかなんでそんなポカンとしてんの。


「……し、知らない、んですか?」

「何を」

「ひぃっ!?ああああのっ、えとあのそのっ、2年に1回の割合でココの闘技場で行われる闘技大会ですっっ!!」


 ころしあむ。ギリシャのコロッセオ思い出した。

 ……ああ、そーいやライラさんが言ってたな。この時期、各国から人型種の強いヤツが集まって世界一を決めるって。


「ああ、アレの事」

「そそそそそそうですソレの事ですっっ」


 そーいや確かおかーさまの話にもちょろっと出てたぞ。

 かなり昔から、戦闘マニアな獣人族の王様主催で闘技大会を大々的に開催する国があるって。

 と、ゆー事は?ココってその戦闘マニアな獣人の王様が治める国。南のポミュニス大陸、その北西側に位置する、ファルガス国、てワケですか。

 今更ながらに気付きました。


 でもソレはソレ、コレはコレ。

 何故ナニどーしてあたしが出場者?


「おれは出ませんよ」


 戦い?はっ、怖いぢゃないかそんなの。

 人間止めてまだたった1年、おかーさまやお子様方のお陰(?)で動物魔物は狩らせて美味しく腹ん中に納めさせて頂きましたが、対人なんて無理ムリむり。


「「「「ええっっ!?」」」」


 …………何故そんなに驚くの。

 しかも緑の美人さんまで。何でそんな目を皿のよーにするの。


「しゅ、出場しないんですかっ?」

「え、でもランカーですよねっ?」

「しません。つい昨日ランカー証を貰ったばかりの新人です」


 おや。絶句。

 ライラさんといい本屋の店主といい、あたしはそんなにコワモテなのか。

 しかもトラ耳くんは知ってるハズでしょどーして一緒になって驚くの?

 あ。ちょーどいーや。


「あの、ちょっとお伺いして宜しいですか?」

「「「はっ、はいっっ!?!?」」」

「図書館、この街にありますかね?」


 ………………だから何でチンモク。

 あたしはアレかそんなに本が似合わないとでも言うのか。

 コレでも人間時代はけっこーな活字中毒だったんだぞっ。ライノベ・漫画限定だったけど!!




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