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義務


「これは国王陛下とわたくしの総意なのです」


 ひゅ、と喉がなる。脳が理解を拒んでいた。


「お、それながら聖女さま。俺は勇者として洗礼を受けた時にいくつかの誓約を課せられています。よくご存知でしょう……?」


 勇者らしくなく声が震えてしまう。無辜の民を決して傷つけるべからず。洗礼の場に立ち会った聖女さまが知らないはずがなかった。


「ええ、勿論です。ちゃんと一つずつご説明しますね」

 そこで聖女さまが言ったことはおおよそこんな感じだったと思う。


 封印石に関する史料は少なく、再現は困難であること。また、初代聖女様の膨大な聖力でないので再現にどれほど時間がかかるかわからないこと。最悪、国土の三分の一が高濃度の魔力に汚染され人が住めなくなる、と。


 わかっている。今も野放しになっている魔力溜まりからは魔力が溢れ続けている。また、ロダンが次に何かしでかさないとは限らない。迷っている暇はない。事はすでに個人の命では責任を取りきれない所まできている。


 なのにどうして。俺はこんなに彼に同情的な感情を抱くのだろう。


 聖女さまはこう続けた。

 勇者と聖女が力を合わせて生涯に一度だけ使える大規模な魔法がある。当然その存在は知っていた。世界に未曾有の危機が訪れた時、それを“なかったこと”にするためのもの。人知れず世界を守るために、過去に戻り危機の根源を絶つことによって。

 それは膨大は魔力を必要とするため、魔力溜まりから溢れ出た魔力を消費するのにうってつけであり、国王陛下はその魔法の行使に許可を出し、近衛兵を貸し出す約束をした。


 黙っている俺を聖女さまは気の毒そうに見た。


「賢哲の勇者として生きてこられたのですもの。戸惑いは当然ですね。しかし猶予がないのもまた事実。明朝、遣いを出します。そこで了承ならばルタール地方へ、受け入れられないのならば謁見の間へ向かってくださいませ」


 聖女さまは優雅な礼をして、「ご英断を信じております」と言い残していった。

 


 俺は拳を握りしめた。

 ショックを受けていても、やるべき事をちゃんと理解している自分がなんだかおかしくて自嘲の笑みがこぼれた。

次回更新は20時になります。

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