聖女様
予定の時間より遅くの投稿になってしまい申し訳ありません。次回更新は明日12時を予定しています。
指定された時間の少し前に面会室に行くと、すでに聖女さまは到着していた。神殿からの供と王室所属の騎士が守っている扉を通って、俺は正式な礼をとった。
「神殿より遠路はるばるご足労いただき、誠にありがとうございます。そしてお待たせしてしまったこと、深くお詫び申し上げます。今代聖女、フローレンス様?」
「まあ!」
大袈裟にかしこまった言い方に聖女さまがくすくす笑う。よかった、なんだか顔がこわばっていたから。やはり陽だまりのような彼女には笑顔がよく似合う。
「もう少しお話を楽しみたいところですが、事は急ぎのようです。早速ですがご用件をお聞きしても?」
「……ええ」
再び聖女さまの顔がくもった。そして白い手袋に包まれた細い指がスカートに皺を作る。
「封印石を守護していた神殿直属の管理人が殺されていたことが判明致しました」
「それは! ……いえ、そうですよね」
「ええ、誠に痛ましい事です。ささやかながらわたくしが祈りを捧げました。きっと安らぎの地へと導かれたことでしょう。そして、彼らの無念のためにも、わたくしは一刻も早く事態を収束しなければなりません」
「そうですね」
俺は大きく頷いた。誰よりも厚く神を信仰する聖女さまにとって、同じく神に仕える神殿の者たちは家族のようなものと聞いていた。さぞかし無念だろう。
「勇者様が持って帰ってくださった封印石の欠片、わたくしはそれを調査しておりました。かなり細かく砕け、本来の力を失っていましたが、聖女としての力を使いながら呼び起こしたところ、二つはダミーだったと判明したのです」
俺は思わず目を伏せた。驚愕は確かにあったが、落胆がわずかに上回ったからだ。ロダン・アイと俺が対峙した日、その直前まで彼から魔力の圧を感じなかった。普通、魔力溜まりを抑えるほどの力を持った封印石を持っていればそれだけで周囲を威圧しかねない。
だから俺ははったりの可能性をどこかで捨てきれなかった。でも、そうなると気になることが一つ。
「最後の一つは本物だったとして、なぜ他の場所でも魔物の出現が急増しているのでしょうか」
「そこが疑問ですね。ですが封印石に問題がないとすれば、勇者様以外でも十分に対応が可能です。調査は国王陛下が指導してくださるとのこと。そこで勇者様には、壊された一箇所の問題を解決するためにお願いしたいことがあるのです」
本題だ。背筋を伸ばし、俺は聖女さまの理知的な深い緑の瞳を見つめた。
「過去に戻り、ロダン・アイを殺害してくださいませんか」




