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不揃い?

作者: kkeman
掲載日:2026/01/26

私(架空)は40歳を過ぎています

そして髪が薄い

しかしハゲているわけではなく

まだ生えそろっていないのです


まだよちよち歩きし始めたくらいの幼き私はその日家族で海に来ていました

そしてあろうことか一人で岩場で遊んでいたらしいのです

記憶はありませんがおそらく岩場に打ち寄せるひいては返す波に同調し体が前後し何かの拍子に後ろに仰向けに倒れたのでしょう、後頭部をしこたま打ちつけた私は鉄仮面を外したジャギ(要検索)あるいは七福神のなかの誰か的な様相を呈しつつ、病院に運ばれ尋常じゃなく膨れ上がった頭部に溜まった大量の血を注射器か何かで抜くという、いたってシンプルな処置を受けました

両親は医者にものすごい剣幕で叱られたと聞きました


かくして私の頭皮は髪の毛のまだ生えそろっていない幼き日の時点で散々な状態になったというわけです


子供の頃というのは髪の毛がどうのなんて気にしないものですが、初めて私(架空)がそれを意識したのは小学校の高学年の頃で、その日私は放課後、夕陽の差し込む教室で仲のいい友達5人くらいで、走りまわったり、話したりしていました

その時椅子に座っていた私の背後から突然「つむじ、でかくね」と友達の一人に言われ、私は一瞬ドキッとして硬直しましたがその子はリアクションを待つ事もなく、ささーっと走り去りました

その子も私も次の日にはもう忘れていました


中学生のある日、何かの用事があって廊下を小走りでどこかに向かっていたところ前方から、話す事はあるがそんなに仲がいいわけでもない女子二人がこちらに歩いてきました

そして横を通り過ぎる瞬間「〇〇君(私)って髪薄いよね」と私に言い放ち、走っていた私がやっと立ち止まり振り向いた時にはもう踵を返して歩き去っていました

明らかに何か用事があって走っている者を引き留めてまで言うことか

その時の私というのは砂漠にポツンと一人取り残されたようで、何故か頭の中には前川清の歌声が響いていました

しばしの間、自分が何の用事でどこに向かっていたのかも思い出せず急性痴呆症とも言えるような状態になっていたのを覚えています


高校生になると私は、ゴルゴ13(要検索)に倣い決して背後をとられない様にしていましたが、さすがに友達の間で髪の毛の話になった時などにちょくちょくいじってくる者が出てくるようになり、そういった時はたくみに話を変えたり、無言の圧力、空気づくりをすることによって、皆がいつでもいじっていいという認識になるのだけは阻止しました


大学は寮生活で自分の部屋は何故か溜まり場になっていましたが、人がいる時はもちろん壁を背に取り、この頃になると私は常時あごを幾分上にあげ、頭頂部や後頭部が見えない様にするというインドのサドゥさながらの生活をしていました


しかし20代も後半に差しかかった頃ふと気付いた事がありました

「あれ、減りだしてね?」と

まだ生えそろってないのにハゲ始めるのかと

始まりの終わりがまだ来てないのに終わりの始まりが来るのかと

神様容赦ねえなと

私は天に向かって

「まだ生えてる途中でしょうがーーっ」

と北の国からのラーメン屋のくだり(要検索)での田中邦衛ばりに叫びました

ただ一度、一瞬でもいい

生えそろった状態を見たい、確認したい

それを謳歌しようなんて滅相もないです

確認するや否や、ハゲ始めてもいいんです

夜の12時を過ぎたら毛が抜けるシンデレラでも

いづれ薄毛の国に帰されるかぐや姫でも

確認だけさせてください

そんな難しい事ですか


皆さんの中にはもういい年なんだからそんな事言ってないでスキンヘッドにでもしろよという方がおられるかもしれませんが私からしたらあれは頭蓋骨のかたちを見せびらかしてるようにしか見えません

実は幼き日の後頭部しこたまの件で頭皮、毛根だけでなく、頭蓋骨にも甚大なダメージがありそれにより私がスキンヘッドにするとすれ違う人皆二度見するほどの並外れた絶壁が露わになり、やはり「ファさっ」とでも後頭部に髪がかぶさっている方を選択せざるを得ないのです

生えそろう前に抜け始めスキンヘッドにもできない

前門の虎、後門の狼

八方塞がりで頭皮は四面楚歌です


孔子の論語に「不惑」、「四十にして惑わず」という言葉があります

四十歳くらいになると、迷ったり、小さなことで悩んだりしなくなるという意味です

私(架空)はそんな境地にはなれません

私の場合は「四十にして(生え)揃わず」で

「不揃い」?


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