黎明1:始まり
この物語はフィクションである。作中の如何なる人物、思考、事象は全て紛れもなく現実の人物、思考、事象とは無関係だ。以上の事に同意した者のみ、この世界に入る権利がある。・・・確かに承った。この世界は人類の欲望により歪みに満ち、破滅しようとしている。運命に逆らい、革命を起こす者、それを人はトリックスターと呼ばれた。さあ、トリックスターよ。今こそ世界の歪みの深淵に立ち向かえ。I believe you can do it.(君なら出来ると信じてる)
ある夜の時間。街は建物や街灯の光で光っていた。まだ遅い時間ではないから、沢山の人が買い物をしたり、デートをしたり楽しんでいた。地上では賑やかになっている時に、空はヘリコプターが多数飛んでいて物騒だった。中にはアナウンサーらしき人が乗っていて、マイクを片手に実況をしていた。
アナウンサー『中継です、あと1時間で悪夢の時を迎える事になりました。精堂党の議員、鹿島嶺二の娘、鹿島袮音が謎の集団組織に誘拐され、身代金をクラウドファンティングという形で全国民に要求されている事件。未だ袮音さんの監禁されている場所は特定されていません』
映像には縄に括られている鹿島袮音の姿が映っており、その周辺には武器を持った武装集団もいた。映像の横に映し出されている金額は徐々に増え続け、現段階で総額100億を超えてしまった。もちろん、父の鹿島嶺二もこれを見ていて、身代金の殆どは嶺二が払っていた。街ではスマホで彼女の映像を見ながら、固唾を飲んでいた。その時、映像から武装集団のリーダーと思われる男が映し出された。
武装集団リーダー『やっほー、見ているかい?鹿島嶺二にこれを見ている民衆共。この娘を解放したければ鹿島嶺二、あんたが持っている脱税の金を全てよこせ。あんたが脱税している事は既に調べが付いてんだよ』
何故鹿島袮音が誘拐されたか、それは父の鹿島嶺二が裏で脱税をしていたからだ。その情報をどこで知ったのかは分からないが、犯人の要求は脱税の金だそうだ。その為に娘の袮音を誘拐、脱税分と民衆の金をクラウドファンディングで集めて、海外に高飛びしようと考えているのだ。
袮音「パパッ!!助けてっ!!」
武装集団リーダー「助けて欲しかったらパパに金を持ってこさせないとね。お前ら」
すると武装集団リーダーの掛け声に合わせて、他の武装集団がライフルを構えた。その状況はまるで処刑場みたいでいつ殺されてもおかしくない状況であった。
袮音(お願いっ!!誰か助けてっ!!)
袮音はただ祈るばかりだった。自分を助けに来てくれる存在が現れてくれる事に。そして、その時はすぐに現れた。
ガシャアァァァーンッ!!!!!!
突如、建物の窓から3人の謎の集団が割って入って来た。それを見た武装集団共は銃を構え、袮音は絶句した。それは黒、赤、青の服を着た謎の男女だった。顔はアイマスクをしていた為、誰かは分からなかった。ただ、袮音や武装集団、映像を見ていた人は何が起こったのか分からなかった。
武装集団リーダー「誰だ、貴様らっ!!」
黒服「ようやく見つけたよ、夢主」
青服「そして人質もな」
黄服「人質は私に任せて」
武装集団リーダー「誰だと言ってるんだっ!!答えろっ!!!」
黒服「世間を騒がしている怪盗だ、今宵お前のお宝、夢を頂戴する」
武装集団リーダー「な、何をっ!?お宝だと?!」
黄服「それじゃあ、頂いていくよ」
赤服の男が歩こうとした時、1人の武装男がナイフを抜いて、襲い掛かろうとした。
武装男A「死ねーっ!!!」
青服「ふ、こんなのは予想済み」
しかし、赤服は咄嗟にかわして、逆に男の腕を掴み、ナイフを蹴り上げ、そのまま背負い投げをして、男はそのまま横になってしまった。
武装男B「ば、馬鹿なっ!?」
武装男C「ど、どうしますかっ!?リーダーッ!!」
武装集団リーダー「ええいっ!!人質は交渉道具だっ!!それ以外のこいつらをぶち殺せっ!!」
武装集団リーダーの掛け声と共に武装集団は服を脱ぎ出した。武装集団の正体は銀色の兜を被り、鎧を身に纏い、槍と市松模様の盾を装備している者に変わった。その名はグリーナイド。
グリーナイド「グリーンッ!!」
グリーナイドが槍を構え、黒服達に襲い掛かった。しかし、そんな凶暴そうな敵もあっさり薙ぎ倒していって、この場にいた人は難なく攻略していった。武装集団リーダーが困惑して、人質の所へ向かうもそこに人質の姿はいなかった。実は人質は2人が戦っている間に救出したのだ。
武装集団リーダー「な、馬鹿なっ!?もう容赦しねぇっ!!!来いっ!!!」
すると奥から再びグリーナイドがゾロゾロと現れた。赤服が袮音を安全な場所に隠すと3人は銃を取り出した。グリーナイドが銃撃をするも、3人は見事にかわし、逆に撃たれてしまった。死角から撃とうとしても、見えない場所を他のメンバーが補って攻撃する為、全く隙が出来なかった。鹿島袮音も武装集団リーダーもこのアクション映画の撮影みたいな光景を目の当たりにして言葉を失っていた。やがてグリーナイドが全滅させられて、武装集団リーダーは腰を抜かして、その場にへばった。青服と黄服は銃を突きつけ、黒服がロープで武装集団リーダーを縛った。そ
黒服「あとは警察に引き渡すだけか」
青服「俺達怪盗が警察に通報するとはな。おかしな話だ」
黄服「でもでも、あの人質は助かったし、結果オーライじゃない?」
黒服「だが、例の物がない。ひょっとして、こいつは・・・」
黒服が何か言いかけようとした時、外からパトカーのサイレンが鳴り響いていた。この場に長くいるのもまずいので、ワイヤーを伸ばしてどこかへ移動しようとした。
袮音「あ、あの、あなた達は・・・?」
黒服「言ったろ、世界を騒がす・・・」
・・・・・パチッ。目が覚めてしまった。またこの夢を見てしまった。自分が怪盗になり、人を助ける夢を。しかも新幹線の車内で寝落ちし、この夢を見てしまった。まあ、長旅だから寝てしまうのは当たり前だ。そう言えば、自己紹介がまだだったね。俺の名前は"漠夜黒夢"、自分で言うのもなんだが、端正な顔立ちではある。また、アニメオタク。とある理由により広島から東京へ向かっている。事の始まりは半月前、中学校で進路について考えている時、校長先生から自分宛てに推薦状が届いたというのだ。その学校の名は"私立漠宙夢学園"という進学校だ。都内のど真ん中の一等地にある巨大な学園で日本最高峰の偏差値を誇り、由緒正しい小中高大一貫校。何百年と続き、かつては貴族や華族の子女が通い、卒業生は各界に有望な人材を送り続けているという、卒業すれば人生において成功したも当然・・・と言われる伝統の学園でもある。こんな学校から自分宛てに推薦状が来るとは夢にも思わなく、自分より校長先生、担任、同級生、両親や親戚中みんなが大喜びだった。場所は東京だが、父さんの学生時代の後輩が東京に住んでいるらしく、3年間お世話をしてくれるそうだ。
黒夢「自分でも夢だと信じてーな」
まあ、それはともかく問題なのは、何故そんな学園から俺みたいな一般人が選ばれてしまったのかって事だ。本当なら辞退した方が良かったのかもしれないが、"卒業したら人生を成功したのも当然"という話を聞いた後では、辞退なんて出来る訳なかった。まあ、わざわざ推薦状を出してくれたのだから、入学しても正々堂々とすれば良いか。そんな事を考えているともう東京駅についた。新幹線から降りると待ち合わせ場所である入り口まで歩いて行った。それにしてもすごい人数、流石東京だな。ここには数多くのアニメショップもあるし、電車でほとんど行けれるからすごく楽しみだ。
黒夢「確か、ここだったかな?父さんの奴、地図まで描いてくれたは良かったが、こんなぐちゃぐちゃの絵を描いてどうするんだよ・・・」
???「あれ?もしかして黒夢君?」
黒夢「うん?あ、富士子さん、お久しぶりです」
黒夢が富士子と呼んだ女性、彼女が今回居候先でお世話になる峰川富士子さん。学生結婚したようでまだ20代後半で小学1年生の子供を持つ母親だ。彼女の旦那さんは病弱だった為、子供を産んだ1年後に癌で亡くなったそうだ。しかし、死んだ旦那さんの為にも育児をしながら働き、子供が小学生になる頃にはアパレル会社を起業し、今は会社の社長をしているようだ。
黒夢「お葬式の時以来ですね」
富士子「そうね。あの時はまだこんなに小さかったのに、見ない内に大きくなってるわね。昔はよく会いに行ってたのよ。オムツを替えたり、子守りをした事もあるわよ。先輩は元気にしてる?」
黒夢「おかげさまで。毎日母さんにちょっかいを出してはやり返されていますよ」
富士子「先輩らしいね。それにしても広島からはるばるここへ来るなんて大変だったでしょ?」
黒夢「いえ、こちらこそ居候させてくれるなんて、なんだかすみません。父さんが無茶を言って」
富士子「いいのいいの。先輩にはいつも助けられているので、このくらい大丈夫よ。ほら、奈美。黒夢お兄ちゃんよ、挨拶して」
富士子の後ろには奈美という娘が隠れていた。恥ずかしがっているのか、もじもじしている様子だった。しかし、勇気を振り絞って前へ出た。
奈美「・・・こ、こんにちは」
黒夢「うん、こんにちは」
黒夢が挨拶すると奈美は再び背後に隠れてしまった。
富士子「この娘、お兄ちゃんが来るって言ったら物凄く喜んでね。ずっと楽しみにしてたのでしょ?」
奈美「もう、お母さんっ!!」
奈美は怒ってしまった。しかし、まだ子供な為か怒る姿は初々しく可愛い。富士子は奈美と黒夢をつれて車に乗り、レストランへ向かった。今日はそこで夕食を食べるようだ。そこでも漠宙夢学園の話題になり、富士子はとても喜んでいた。奈美はまだ小さいからか、話の内容を理解出来なかった。
富士子「すごいじゃないっ!!あんな学校に通えるなんて、そりゃあ驚くのも無理無いわね」
奈美「ねぇねぇ、はくちゅーむって?」
富士子「まあ、うちは私と奈美の2人だけだし、あなたみたいな人がいてくれると助かるわ。3年間とはいえ、これからしばらく家族同士よ。自分ん家だと思って気軽にやっていいわよ」
奈美「はくちゅーむって何?」
奈美「黒夢お兄ちゃんがいく学校よ」
その後も夕食を楽しみ、そのまま漠宙夢学園の下見に行った。写真でも見たが、やはり大きい。流石は進学校、貫禄がある。こんな学校で果たして3年間やっていけれるのだろうか?この日から俺の人生が180°変わってしまう事になるとは思いもしなかったが、まあこれはまた別の話だな。
黒夢「よくおいでなさいました、俺、か」




