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第284話『崩れてく⑱ 夢のような夢の話Ⅳ宇宙が見ていた最後の夢。』

光だけが流れるような夢の世界で、

タケルはアスと再び出会う。

そこは“終わり”と“はじまり”の境目、

宇宙がまばたく前の静かな場所。

この物語は、その一瞬のなかで交わされた

ふたりの最後の会話のお話です。



音がなかった。

風もなかった。

ただ光だけが、ゆっくりと流れていた。


タケルは気づくと、知らない場所に立っていた。

足の下は、水のような光。

遠くに山のかたちが見えるけれど、輪郭は揺れている。


「ここ、どこだろう……」

タケルがつぶやくと、

どこからか声がした。


「まだ、夢の中だよ。」


アスだった。

白い光の中から、やさしく笑って出てきた。


「宇宙が、まだ夢を見てる。」

「じゃあ、目を覚ますときが来るの?」

アスは頷いた。

「うん。もうすぐ。」


空のような場所に、色が少しずつ混じりはじめた。

青、橙、金、そして透明。

それらが音もなく溶け合って、ひとつの波のように広がっていく。


「これが、宇宙の夢の終わり?」

「ううん。終わりじゃない。」

アスは空を見上げた。

「これは、“思い出す”ってことなんだ。」


タケルは聞き返した。

「なにを?」

「自分が、光だったこと。」


その言葉と同時に、

タケルの体も、空の色も、風景も、すこしずつ光に溶けていった。


アスの声が最後に響いた。


「おやすみ、タケル。

そして――おはよう。」


まぶたを閉じるように、宇宙は静かにまばたいた。

その一瞬の中に、

星も、風も、人も、祈りも、すべてがあった。




宇宙が見ていた最後の夢は、“別れ”ではなく“思い出し”だった。すべては溶けて、ひとつになり、それでも、どこかでふたたび――

誰かが「はじめまして」と言う。






宇宙が夢を終えるとき、

それは別れではなく“思い出す”という始まり。

すべてが光に溶け、ひとつになる瞬間に、

またどこかで「はじめまして」が生まれる。

そんな静かな永遠の循環を描いた章でした。

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