表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
324/449

第190話『蜘蛛③ 残酷な世界』

助けられる命と、打ち払われる命。

その差は、どこから生まれるのだろう。

蜘蛛とハエ、二つの小さな出来事をきっかけに、タケルは「命の平等」についてアスに問いかける。



タケルは窓の外の白い枝先を見つめたまま、口を開いた。

「ねぇ……なら命って、平等じゃないの?」


アスは少し目を細め、視線は窓の外の巣に向いたまま答える。

「命の線引は、人が決めてることだからね…

 命は、平等じゃないよ。」


「え……?」タケルは小さく首をかしげる。

「蜘蛛は生かして、ハエは殺す。特別だったら生きててよくて、特別じゃなかったら死んでもいいの?」


アスはゆっくりと息を吐いた。

「そう。価値観ひとつで、変わる。……残酷だよね」


教室には小さな風の音だけが聞こえる。タケルの髪がそっと揺れ、二人の間に静かな時間が流れた。


タケルは手を机の上で組み、ぽつりと呟く。

「でも、蜘蛛は……なんか、生きてていいって思える。見た目とか、動きとか……全部が、わからないけど…それってちょっとこわいね。」


アスは小さく笑った。

「うん。人は無意識に“美しい”とか“特別”とかを感じ取ることがある。だから、命の重さも、ちょっとだけ変わって見えるのかもしれない」


タケルは冬の光に照らされる蜘蛛の巣を見つめ、静かにうなずいた。

命の平等なんて、頭で考えても全部わかるわけじゃない。

でも、特別なものに触れたとき、人は少しだけ優しくなれるのかもしれない――そう思った。



---


命は本来、平等なのかもしれない。

けれど人は、無意識に「特別」や「美しい」を感じ取り、そこに線を引いてしまう。

その線は残酷でありながら、人を少しだけ優しくもする。

蜘蛛の巣に射す冬の光のように、タケルの胸には小さな気づきがそっと残った。



---


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ