表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/448

第25話「もし世界がぼく一人だったら?」

ある日ふと、鏡の中の自分と目が合って、思った。

「ぼくって、本当にここにいるのかな?」

そしてこうも思った。「じゃあ、みんなは?」

そんなちょっとこわくて、でも気になってしまうお話。


朝、登校の準備をしながら、鏡の中の自分とじっと見つめあった。

「この世界って、ほんとうに“ある”のかな?」

そんなことをふと、思ってしまった。 

***


登校の道でアスに言った。


「ねえ、もし、この世界が、ぼく一人しかいない世界だったらどうする?」


アスは笑って言った。


「だったらぼくは、きみのつくったキャラクターってことになるね。へんなセリフ言わないでよ?」


「でもさ、ほんとうにそうだったら、ぼく、こわいなって」


「こわがってる時点で、たぶん違うよ。ひとりぼっちだったら、そもそも“こわい”って思わないもん」


そんなものなのかな。よくわからないけど、ちょっと楽になった。


***


授業中、まわりの声がとおくに感じる。

先生の声、クラスの笑い声、机の上の教科書。

すべてが、「ぼくの見てる夢」だったとしたら?

だれかの“ほんとう”を、ぼくは確かめることができない。


アスがとなりでくしゃみをした。

そのくしゃみだけは、やけに生々しかった。


***


放課後、寺に戻ると、兄が法事を終えて戻ってきたところだった。

法衣を脱いで、たたみながら言った。


「なにか、考えごと?」


「もしこの世界が、ぼくの頭の中だけだったらどうしようって…」


兄は畳をトントンと整えながら言った。


「そう思えるのって、“世界”がちゃんとある証拠かもしれないね」


「え?」


「たとえば夢の中じゃ、自分が夢を見てるって思わない。

でも今、“そうかもしれない”って思ってるでしょ?

それってもう、世界に手をのばしてる証拠だよ」


兄は窓の外の空を見上げた。


「タケルが見てる空、ぼくも、たぶん同じ空を見てる。

そう思えるだけで、世界ってすこしだけ、ほんとうになる気がするんだ」


***


今日のかんさつノート


> もし、世界がぼく一人のものだったら?


でもアスが笑ったり、兄が空を見てたり、

ぼくの知らないことを言う“だれか”がいる。


それって、ぼくのつくった夢じゃない。


「きみも、そう思う?」って聞けるってことは、

“きみ”がいてくれるってことなんだ。


「世界がじぶん一人の夢だったら?」なんて、こわい想像をすると、さびしくなる。

でも、そのさびしさをだれかに話したくなるなら、

もうその時点で、世界はちゃんと“ある”のかもしれないね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ