第000話(新シリーズ)『はじまりの音』
夏の終わり、
窓ぎわに立っていた、ふしぎな少年。
まるでちがう星から来たみたいな、
栗色の髪と、遠い瞳。
その子との再会が、
ぼくらのちがう宇宙をひらいていく。
──ぼくらのうちゅうかんさつノート──
--
夏の終わり、夕立のあと。
雨がやんだばかりの校庭に、小さな水たまりができていた。
まだ少しぬれた空気のなか、教室の窓がオレンジ色に染まっていく。
ぼくは気づいた。窓ぎわに立っている子がいる。
肌は透けるように白く、髪はうすい栗色で、
光の中でふわりと揺れていた。
目は、茶色くて、遠くの星を見ているみたいだった。
「なに見てるの?」
ぼくが声をかけると、その子はふりむかずに答えた。
「……空が、落ちてる」
「え?」
「水たまりのなか。
空が逆さまになって、
知らないふりして地面にいる」
ぼくは思わず笑った。
「なんだそれ。
キミ、ちょっとへんだな」
その子は、すこしだけ首をかしげて、小さく笑った。
「……ねえ、キミ名前なに?」
ぼくが聞くと、彼はまっすぐこっちを見て言った。
「ぼくは、アス」
その瞬間、なぜだかぼくは──
もう一度、この子に会えた気がした。
それが、ぼくらの“うちゅうかんさつノート”の、あたらしいはじまりだった。
この物語は、もしかしたら
「さよなら」のつづきなのかもしれません。
いちど終わった宇宙の、
すこしちがう世界で、
ふたりはまた出会いました。
知らないふりをして、
でもどこかで思い出すように。
名前をたしかめるように、
「ぼくは、アス」と。
もしあなたが、
水たまりの中の空に気づいたなら──
きっと、ちがう世界線でまた、会える。
そう信じて、
ぼくらはまた、“観察ノート”の最初のページをひらきます。




