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お前の気持ちがわからない。~中間と中間の場合~  作者: 甲光一念


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4、俺たちの主目的は

「愚痴なんざいくらでも聞いてやるよ。愚痴り合いも俺らの主な活動(メインコンテンツ)だしな。とりあえず、中間子ネットワークの説明からさせてもらうぜ?」

「はい、よろしくお願いします!」


 何だか途端に元気良くなった犬系後輩だが、多分さっきまでじゃなくこっちが素の性格なんだろうな。

 俺たちが目を付ける中間子は基本的に環境に抑圧されてきたような境遇が多く、本来の性格を抑え込んで生きてきたような奴ばかりだ。

 家では一言も発さないがネットワークの面々と一緒だと明るいという奴は男女問わず結構多い。俺たちは傍から見たらとんでも騒がし集団なのかもしれない。


「んじゃ、こっからは頼むぜよリーダー」

「リーダーじゃねえ。とりあえず、遅ればせながら自己紹介から。俺は二年四組、フウレイ・ユルツール。姉が一人に弟が一人。両親は別に離婚も再婚もしてない」

「よろしくお願いします! リーダー!」

「……リーダーじゃねえって。別に誰発祥ってわけでもないけど、ネットワークのメンバーが初対面時に述べる情報は基本的に三つ。大まかな所属、名前、兄弟構成。両親の婚姻歴は別にお好みでって感じ」


 リーダーなんて柄じゃないし毎回否定しているのだが、なし崩し的にそういうことになってしまっている。そういう意味では俺たち三人全員リーダーみたいなものなのだが、こいつらはそれを絶対に認めはしないだろう。

 いつかこれのせいでとんでもない貧乏くじを引きそうな嫌な予感がずっとしている。このままだとアマナカにもそう呼ばれることになりそうで不安だ。

 名前よりも所属を先にしているのは、俺たちの名前なんかいつ変わってもおかしくないからだ。少し前までと名字が変わってるなんてそんな珍しい話じゃない。最悪、名前が変わってる場合すらある。

 所属さえ伝えておけば、名前が変わっていてもそれを頼りに本人を探すことができる。まあ、この形が恒例になった経緯については別に楽しい話じゃないのでとりあえず今は省く。

 重要なのは、俺たちはここで名前を重要視していないということ。


「名前を? どういうことですか?」

「名前って言うか、まあ家名だな。俺たちは境遇さえ似てれば誰彼構わず勧誘するけど、そんなことしてれば当然メンバー内で家格に差があることはざらだ。だからって上下関係気にしてたら気軽に愚痴も吐けない」

「……家名を気にしないって、身分差を気にしないってことですか?」

「そういうこと。そんな勘違いしないとは思うけど、誰にでも無礼でいいってわけじゃない。必要分の礼節は弁えたうえで、同じ所属の仲間としては助け合っていこうね、っていう話だ」


 同類は境遇的に、無礼失礼に慣れていない。聞き覚えのある家名に遜るみたいな態度が刷り込まれてる奴も少なくない。

 仲間を求めてネットワークに加入したのに、そんなことになったらする側もされる側も気分がいいとはいえない。だからまあ、なるべくだ。

 立場の差はそこまで気にすることないけど、どうしても気になる奴は同じような立場の奴と話そう――とまあ、それだけの話。

 年齢差とかもあるし、いくら生い立ちやら生活環境が似てても、流石にちょっと、みたいな相手はいて当然で、そんな中で自然と構成されていった暗黙の了解、みたいなもの。


「……素晴らしいと思います――けどそれって、結構な人数が所属してないと無理じゃないですか? 家格の振れ幅はわかりませんけど、数十人じゃどう考えても足りないですよね?」

「だな。まあ、細かい秩序(ルール)は数あれど、それも最初から決まってたわけじゃない。ネットワークが拡大するにつれて、必要なものを少しずつ整備していった結果だ」

「……つまり?」

「正確な人数は言えないが、五百は越えている、とだけ教えとく。それだけいれば、大体馬の合う奴も見つかるもんだ」


 絶句するアマナカ。まあ、改めて口にするとなかなかの数字だとは俺も思う。

 ヴァレントが『中間子を集めよう!』と言い出し、半ば冗談の延長線上でネットワークを設立した当初はこんなことになるとは思っていなかった。

 五百というのも結構控えめな数字で、実際は千を越えている。

 細かい数字は控えさせてもらうが、そのほとんどが貴族の令息令嬢なので、お察しの通り結構な集団になってしまって、なし崩し的に長扱いされている俺としても手に余る代物と化しているのが実情だ。

 それでも、役を降りるわけにはいかないのだが。


「中間子ネットワークが公の存在になってないのは、メンバーに完全な他言無用を守らせてるからだ。わかると思うけど、下手な奴に知られると変な勘繰りとか悪用とかされかねないから」

「そう、ですね。いくら中間子ばかりとは言っても、貴族がそれだけ集まれば……」

「それなりの影響力を持っちゃうわけだな。俺らとしてもそれは本意じゃない。言い方は悪いけど、俺たちの主目的は『傷の舐め合い』だ。政争やらに利用されることは避けたい。そこでだ」


 俺は懐から一枚の紙を取り出し、机の上に置く。


「……誓約書、ですか」

「そう。ネットワークの他言を禁ずるって紙で、他にも……、まあとりあえず読んでくれ」


『一、中間子ネットワーク(以下、団体)の存在を外部に漏らすことを禁ずる。

 二、団体に関する会話を無関係の人間がいる場所で行うことを禁ずる。

 三、団体の構成員が助力を必要とする状況に陥った場合、可能な範囲で協力すること。

 四、団体、または構成員に何かしらの危機が迫った場合、可能な範囲で力を貸すこと。』


「……一と二はわかるんですけど、この三と四って何ですか? いや、協力したくないとかそういうことじゃないんですけど」

「強制じゃないからそんなビクビクしなくていいよ。可能な範囲って書いてあるだろ? それは――」

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