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 志保は平日の講義に影響があまり出ない週末の三日間でバイトのシフトを組んでいた。

 相変わらず接客が必須のホールは苦手だが、ホールスタッフの学生バイトが少ないかつ、何かと飲み会が多い週末ということもあり、志保は重宝されていた。


「はぁ……疲れた」


 二十四時。閉店作業を終え、志保は女性用の更衣室でバイトの制服から私服に着替えた。

 そして丁度更衣室を出たタイミングで直哉と出くわした。


「あ……」

「厚木さん、お疲れ様」

「お疲れ様です……」


 相変わらず疲れが全く見られない、綺麗すぎる笑顔。

 それが少し不気味だった。

 志保は軽く会釈して直哉の横を通り抜ける。

 すると直哉に声をかけられた。


「家はここから近いの?」

「えっと、歩いてニ十分くらいです」

「近くまで送るよ」

「え、いや、そこまでしなくても……」


 実際、先週は一人で家まで帰っている。

 街灯もそれなりに整備されている道を選んでいるから心配は無い気がしていた。


「実は昨日の夜、この近辺で不審者が出たらしいんだ。流石に一人にはできないよ」


 それは志保も知らなかった。

 アパートにテレビが無いと、案外こういう時に不便だ。

 志保は直哉の言葉に甘えることにした。


 帰路は終始無言。

 志保は居心地が悪く、それを紛らわすように仕方がなく口を開く。


「あ、あの……この前はありがとうございました」

「ああ、講義室のね。気にしなくて良いよ。でも、大学の敷地も広いから、最初のうちは苦労するかもね」

「……そ、そうですね」


 またしても沈黙。

 次に話題を切り出したのは直哉の方だった。


「厚木さんって僕の事嫌いだよね?」


 あまりにも唐突で、しかも声音が全く変わらないため、志保は自分の耳を疑った。


「……え?」

「バイトでは極力僕とは会話しないようにしているみたいだし、大学でも合うことは会ったけど、目を合わせないようにしてるよね?」


 図星だった。

 志保は視線を泳がせる。


「いや、その……」

「ああ、別に怒ってないから。ただ気になってるんだ」

「……気になってる?」

「うん。人間って個人的にプライベートの話をしたり、優しく接するとか特別感のある行動をすると好意的に感じる傾向にあるんだけどね、厚木さんはどうも違うみたいだから」

「……そりゃあ、人間には色々な性格がありますから。ましてや苦手に感じる人から声をかけられると……あ」


 志保は慌てて口元を抑えたが、直哉の耳にははっきりと聞こえていたらしい。

 すると直哉が志保の方を向いて、その手を取った。


「やっぱり厚木さんは面白い」

「え、は?」

「僕がどうして嫌いなのかも気になるところだし、今後それが変わっていくのか実に興味がある」

「は、はあ……」

「良ければ僕と付き合ってくれないかな」


 あまりにも唐突な一言に、志保の目が点になった。


「はぁ!?」

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