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第五話 魔法陣の違い

 ここは魔界――。


 ヘルデビルとスライムは、じーっと目の前の魔法陣を見つめていた。


「……どっスか?」

「……違う、気がする」

「そッスか。じゃあ、あっし一人で行ってきやす」

 

 ぴょーんとスライムが魔法陣に飛び込んだ。


「……」


 一分後――。


「ふぃー。シンカちゃんじゃなかったッスよ」

「……そうか」


 ヨダビシから魔法陣の違いを聞いて以来、二人はなんとかシンカの魔法陣を見極めようと頑張っていた。

 しかし、どの魔法陣も同じように見えて、結局勘に頼っているのが現状である。


「いやぁ難しいもんッスね」

「……うむ」

「正直サッパリわからないんですけど……」

「……うむ」

「なんかこう、愛の力でわかる、みたいなのないんスか?」

「……」

「あ、また出た」

 

 再びスライムの前に魔法陣が現れる。


「ん……? だんな、なんか今までのより光が若干強い気がするんですけど……」

「……我輩も、そう思う」

「どうします?」

「……行ってみる」

「これがシンカちゃんならわかりやすいんですけどねえ」


 ぴょーんと魔法陣に飛び込んだ先は、見慣れた森の中だった。


「あ、こんにちは。スライムさん、デビ、さん」


 後ろからシンカの声がする。


「ビンゴ! こんにちはシンカちゃん」


「おーい、スライム! 早くこい!」


 前の方でトーチが腕を振ってスライムを急かす。


「はいはいただいま! ほんじゃあっしはお役目を果たしてきますんで」


 ヘルデビルに親指を立てると、スライムは魔物との戦いに向かって行った。


「あ、あの。この杖、ありがとうございました」

「……うむ」

「……」


 会話が続かず、二人とも黙り込んでしまう。


「……魔界の」

「は、はい」


「魔界の木から作った……のだ、その杖は」

「わぁ、そうだったんですね! あの、すごいんですこの杖。普通の魔法が何倍もの効果になって」

「……膨大な魔力が蓄えられているからな」

「それに、このデザイン。すごく格好良くて、素敵です」

「……シンカも、そう思うか。手間をかけた甲斐があるというものだ」

「え? この杖、デビさんが作ったんですか?」

「……まあな」

「すごいです!」


――その頃、前方では。


(’おぉう、なんだか盛り上がってるッスねえ。よきかなよきかな)


 戦いながら、スライムが後ろを見てうんうん頷いている。


「よそ見してんじゃないわよ!」

「へいへい、すんませーん」


 戦いながら、トーチがスライムに話しかける。


「ねえ。あのデビル、なんで毎回出てくんのよ? ハッ」

「えっ……」


(あの子が好きだから、なんて言ったら、ちょっとややこしいことになりそうッスね……)


「……ヒマなんスよ、あの人。誰にも呼ばれなくて。ヨッ」

「ふーん。それじゃ、やたらとシンカにからむのはどうしてよ? トウッ」

(ぐっ、姉さん、今日はグイグイ来ますなぁ……)

「まさか……」

(どきっ)

「あの悪魔、シンカの魂狙ってんじゃないでしょうね」

(ズコー)

「そんなわけないじゃないスか。あの人がシンカさんに危害を加えることは絶対ないでやんすよ」

「本当かしら……」

「あっしが保証するでやんす。そもそも、あっしらが召喚士に何かしたら、契約のなんとかで存在が消されちまいますからね」

「そんな決まりがあんの?」

「そうなんスよぉ。あ、お時間でやんす。それじゃまた,、ご贔屓に」

「ん、おつかれ」


 一分を迎え、スライムたちは魔界へ戻って行った。


「トーチちゃん、おつかれさま」

「……あんた、大丈夫だった?」

「大丈夫だよ。あのね、この杖、デビさんが作ったんだって!すごいよね」

「ふーん……」

 

 杖が誇らしげにドクンと脈打つ。


「……魂吸われてないでしょうね」

「だ、大丈夫だってば」

(……契約のなんとかねえ。ま、いっか)


 一方、魔界――。


「ちょっとちょっとだんな~、いい感じだったんじゃないですかい? このこの!」

 

 スライムがヒジでヘルデビルの足をこのこのする。


「……たくさん話してしまった」


「ええ、ええ。よかったでやんすねえ」


「……感謝するぞ、スライムよ」


 ヘルデビルは嬉しそうだった。

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