異世界でスパイな生活-5 イーストブロック
アリサはコーヒーを飲みながら、宝石店に入るエリザを横目で見守っていた。
あまりガン見すると怪しまれるような気がしたからそうしていたが、どうしても気になるので定期的にチラチラと見ていた。
エリザの様子を見るに彼女は少し緊張しているようで、どことなく動きが硬いようにアリサは感じていた。
ケーキを食べようとした時だった、隣の席に銀髪のモデルような大人な美しさのある女性が腰掛けてきてふと目が合った。
「こんにちは」
そう返事返すと、銀髪の女性は微笑みを見せてふとアリサが手をつけようとしたケーキをどこか珍しそうに見てこう言った。
「あら、こんにちは。あなたのケーキ美味しそうね。なんて言うものかしら?」
「これですか?シフォンケーキです。美味しそうで気になって」
「そうなのね。私もそれにしようかしらーーー私は旅行者だからこの国には疎いのよね」
銀髪の女性はそう言って、ウェイターに向かって優雅に手を上げて注文をしていた。
アリサはそれを横目に宝石店の中をぼんやりと見ていた。
「ところで、あなたは待ち合わせかしら?さっきの黒髪のお嬢さんと待ち合わせ」
「そんなところです」
アリサはそう答えたが、どこか彼女に違和感を感じたーーー
その違和感は言葉には表せなかったが....
「あなた軍人さんかな?私、海軍省の方に用事があって道を教えてくれないかしら?」
「あ、海軍省ならこの通り沿いにありますよ。旅行者で海軍省なんて珍しいですね」
アリサは彼女の問いかけに一瞬ドキッとしたが答えず、軍人であるかの質問には答えずに海軍省の場所を教えた。
女性は考える素振りをしながら、こうアリサに言ったーーー
「そうね。珍しいかも....イーストブロックとの国境付近の役場で仕事をしてて、海軍省に海図関係の用事があってきてるのよ。私は、エレナよ」
彼女はそう言って手を差し伸ばしてきたのでアリサはその手をとって握手をした。
「へぇ...結構遠いところですねーーーアリサです。よろしくです。イーストブロックの国境沿いってことは....もしかしてブランベルグですか?」
アリサはそういうとエレナは少し驚いた表情を一瞬見せてからこう言った。
「え...ええ、ブランべグルよー」
そうエレナが言った瞬間だった...イヤリング型の通信機からエリザの声が聞こえてきた。
『裏口から出ていったわ。中央駅方面に向かっていったわ』
アリサはそれを聞くとシフォンケーキをかき込んで、エリザに一礼してこう言った。
「すいません!急用があるのを思い出したので...失礼しますね。エレナさん!」
エレナはそれを聞いてちょうど席に運ばれてきたコーヒーを手に取ってこう言った。
「ええ。また会う気がするわ...その時はよろしくね。アリサさんーーー」
「あ、はい!では!!」
アリサはそういうと席から立ち上がって、宝石店の方へと少し早足で向かっていったーー
エレナはにこやかに手を振ってアリサを見送ったあと微笑みながら宝石店の方を見てこう呟いた。
「あわてんぼうの水兵さん.....西側の情報局は気がついてるのね....面倒ねーーでもルーキー二人ならどうにかなるかしら」
ーーーーーー
エリザは逃げ出すように動いた、ルーベルトを追いかけるようにして店を飛び出した。
ルーベルトに尾行を気がつかれたのかが気になたが、そうではないように感じられたーー
電話ボックスに入ったルーベルトを見てエリザは近くの物陰に身を隠して様子を観察した。
誰と電話しているかは分からなかったが明らか、口元を隠して会話をしているのが目に入り、彼が用心深いのが見て取れたーー
会話自体もすぐに終わり早足で電話ボックスを後にしていくのを確認してエリザは動き出した。
その時にはアリサも合流して二人は遠目にルーベルト見ながらアリサがこう言った。
「もしかして気がつかれてません?」
「そうじゃないと思うわ。でも用心....」
エリザはそう言った瞬間だった目の前に3人の体格のいい男性が立ちはだかってこう言った。
「すまない。お嬢さん方ーーーお引き取り願えないかな?」
リーダー格の男はそう言って懐から拳銃を見せてきた。
その拳銃を見てエリザは恐怖して固まったが、アリサはため息をついてこう言った。
「ダメですよ。そんな物見せたら....イーストブロックの皆さん」
男達はアリサの言葉を聞いて驚いた瞬間、アリサはバク宙をしてその男性の手に持っていった銃ごと蹴り上げた。
「サマーソルトキィィック!」
アリサはそう技名を叫んで着地をして、カンフーのようなポーズをとってこう言った。
「アチョー!」
男性の持っていた拳銃は暴発して宙を舞って地面に転げ押した。銃声が街中に響いて、街が一瞬静まり返ってから急に騒がしくなった。
男達は舌打ちをしてそそくさと裏路地に逃げていくのが目に入った。
「フォー!どんですか」
ノリノリになってるアリサはそう思わず言ったがエリザは手を引っ張って路地へと連れていった。
そして、彼女を叱責するようにこう言った。
「あーもう!騒ぎを起こしてどうするのよ」
「あ、あちゃ....ごめんなさい。でも、あの拳銃思いっきり東側の軍用の物だったらやられるって思ってついですぅ....」
「もー...ルーベルトも見逃してーーーってあれ、なんで、私たちイーストブロックの奴等に狙われたの....」
アリサはそれを聞いて頭を回したが...考えが浮かばなかったがーー
「もしかして尾行がバレて仲間を呼ばれたとかでしょうか?」
「そんなことないはずですわ!」
「うーん....」
アリサは頭を抱えて、エリザも頭をかけたが答えは出るはずもなく...
アリサは咄嗟にエリザを自分の方に引き寄せてこう言った。
「逃げます!ここにいたら危ないです!」
「え、どうして!」
エリザは驚いた表情を見せていたがその答えは横にあった窓が割れた事で理解できた。
「え!狙撃されてる!」
「だから逃げます!」
エリザはそれを聞いて懐から煙幕弾を取り出して、自分の姿を隠すようにして通りに戻ることにしたーーー
通りには黒色のセダン車が止まっていて、
助手席にはディナーに行くためにかドレスに着替えておしゃれをしているミレーヌがライフルを持って座っていた。
運転席には乗った困った顔をして頭を抱えているダニエルの姿があったーーー
「すまない。君たちーーーいきなりにしては、やばいのを引いたみたいだ。とにかく、乗ってくれ!急ぐぞ」
「「は、はい」」
アリサとエリザは声を揃えて、そういうと車に乗り込んだ。
「じゃあ、お嬢さん方。シートベルトはつけてくれよーー」
ダニエルはウインクをしてバックミラー越しにそう言うとアクセルをフルで踏んで一気に加速した。
その勢いにアリサとエリザは驚きながらもシートベルトをつけたーー
ギヤを切り替えて冷静に運転をしながらダニエルが口を開いてこう言った。
「アリサ、エリザの実力は見せてもらった。尾行に関しては要訓練必須だなーー
申し訳ないが....
この任務後にアリサ、エリザ、ミレーヌは別途訓練を受けれるようにケイに言っておく。
RNIS6として任務をするには少し心許ないんだ。
戦闘能力やら変装とかは申し分ない!
だけど、接触するなって言ったのに接触したのはいただけないがなーーー」
「す、すいません....」
そう、エリザはどこか縮こまって申し訳なさそうに返事をした。
それを聞いた
ダニエルは微笑んでこう言った。
「誰にだって失敗はある。次に行こうーーーっ!」
ダニエルはそう言うと急ハンドルを切った。
驚く、エリザとアリサだったがーーー
後方で爆発音は聞こえて驚いた。
「なんで!こんな市街地で対戦ロケット弾が飛んでくるの!?」
そう驚いたのはエリザだったがダニエルがこう言ったーーー
「そういう敵だったことだよ。僕も驚いてる!アリサ、エリザ身を伏せておいてくれ。ミレーヌ!敵が見えたら撃ってくれ。
ルーベルトを捕まえないとまずいなこりゃ」
「まかしておいてください。社長」
ミレーヌはそう言って座りながら手に持っていたライフルを構えた。
「いい秘書だ」
ダニエルはそう微笑むとギアをもう一段階上げて車のスピードをあげた。
アリサ「おぉぉぉ!派手なアクションの予感ですワクワク」
エリザ「もぉ..襲われてるのですわよ!もっと自覚してくださいませ」
アリサ「アチョーってほらかっこよく決まってたでしょう」
エリザ「あ...これはいけませんわ...」
ミレーヌ「あ...アリサの身体能力は頼っていいと思うわよ。第三教育部きっての身体能力の持ちにしてその辺りの成績だけは...陸軍特殊部隊も目を見張ってたのよ。
それだけなんだけどね」
アリサ「もぉーそんなこと言わないでください!」
エリザ「あ、この先どうなるよとやら...」
ダニエル「イーストブロックの妨害が思ったよりすごいなこりゃ...とりあえず、追うから援護を頼みよお嬢さん方」
エリザ「は、はいですの」
ダニエル「次回、敵もスパイ。まさかイーストブロックのあいつじゃないよな...白雪のスチェッキナとかだと厄介だな」
アリサ「なんですかその通り名。かっこいいですね!」