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天才に欠ける

作者: 猫じゃらし
掲載日:2022/12/06


 AIの進化により、死の概念が大きく変化した。


 少子高齢化社会、偏差値の低下も著しい昨今。

 国としては苦肉であり、同時に成功すれば世界から注目される、それは画期的な政策だった。




 ――未成年に限り、死亡した場合はAIによって蘇生させることができる。




 体にAIを埋め込むことで、(あるじ)のいなくなった細胞に新たな司令塔をつくってやるのだ。

 体の記憶がAIの記憶となり、動作や口癖、感情すらも本人のままに生命活動を維持できるようになる。


 非人道的とも思える政策だったが、AIは着実に多くの命を蘇らせた。

 そしてそれは、すぐ私の身近にやってきた。




 従兄弟が病を患ったのは、高校入学が決まってわずか数日後だった。

 入学式に出ることも叶わず入院生活が始まり、闘病二年で他界した。


 そう、本来であれば他界したのだ。


 けれど従兄弟は今、私の数歩前を歩いている。

 学校の帰り道。久しぶりに、一緒に帰ろうと誘われて。



「もしかして、俺のこと避けてる?」

 


 変わらない口調で、従兄弟らしい表情で振り返る。



「……避けてたら?」



 割り切れない感情で問い返す。


 確かにAIは従兄弟を従兄弟のままで蘇らせた。

 闘病で痩せ細った体を元に戻し、記憶はそのままで家族や友人関係も問題なかった。

 ただ、知能だけは国の意向でIQが高く設定されていた。


 闘病で空いた二年間を、従兄弟はいとも簡単に取り戻した。


 天才と称えられる従兄弟に、たったそれだけのことで私は距離を置くようになった。



「困る、かな」



 目の前の従兄弟は本当に困ったように言う。

 そんな顔をされては、私も困ってしまう。


 従兄弟であり、従兄弟じゃない。

 ずっと見てきたからこそ割り切れない私の気持ちは、ようやく無理矢理蓋をしたのに。


 目の前の従兄弟を認めるには、私の中の想いは純粋で複雑すぎたから。



「どうして困るの?」

「苦しくなるんだ」



 従兄弟は困り顔のまま。

 でも、と続けた。



「避けられたら苦しいけど、今はそばにいるのも苦しい。なぜだろう?」



 体の記憶はそのままAIの記憶となる。

 何度も聞いた説明を思い出して、それでも割り切れない私は、ずるく問う。


 

「……どうしたら苦しくなくなるの?」



 天才なはずの従兄弟の、欠けた感情に縋る。



「抱きしめてみてもいい?」



 ふわりと纏う匂いも、はじめて包まれる体温も。

 私が好きな従兄弟のはずなのに、やっぱり従兄弟とは簡単に認めたくなくて。

 けれどずるい私は、この腕から抜け出す勇気もなくて。



 こんなに、あなたが好きなのに。







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― 新着の感想 ―
[良い点] 設定が魅力的です。 割切れない感情も魅力的! [一言] 好きな世界観 好きな舞台 好きなテーマ それを好きな雰囲気に作り上げるのは 文章 《天才なはずの従兄弟の、欠けた感情に縋る。》 …
[良い点] 発想がすごいなと思った。こんな話は僕には絶対思いつかない。 [気になる点] これは一種のロボなのかな。自分の子供が死んだとしてAIで復活させて欲しいと願うか少し考えたけど答えは出なかった。…
[良い点] すごく理想的な世界なはずなのに怖いなって感じました。 そして1000文字とは思えない内容です∑(゜Д゜) 最後が切なくてこの後、二人の関係はどうなったのかとすごく気になってしまいます……!…
2022/12/10 04:45 退会済み
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