弱者の遠吠え
天愛比奈はあくびをしながら、薄暗い廊下を歩いていた。
今晩は本当に大仕事だった。
しかも加えて聞くところによると、隣の診療所では悪魔の血を引く子が産まれたらしく、優子たちが何か話し合っている。何かと慌ただしい。
胎教を施した「味方」なら、別段気に掛ける必要もないだろう。
比奈が考えることは常に、「殺すか殺さないか」だけだった。
とにかく今は、さっさと自分の部屋に戻って眠りたい。
――ふと見ると、廊下の向こうから誰かが歩いてくる。
自分と同じくらいの身長の、少女だった。目がいやに腫れぼったい。
少ない電灯の下に照らされたその顔を見ても、比奈には名前が思い出せない。しかし、どこかで見覚えがある気がした。
「霧隠れ」の効果ではない。比奈はただ単に、極端に人間に興味がないのであった。
しかし、その少女が自分に向けた視線の鋭さに対し、若干の警戒感を持つ。
「――あんた、だれぇ? ……ていうか、何者?」
「…………別に、何者でもないです。ただの人間ですよ。」
少女は――愛本叶多は、皮肉と矜持を込めて堂々と、そう言った。
――ああ、ただの人間か。じゃあいいや。
彼女は「あ、そう。」とだけ言って、そのまま叶多の脇を通り過ぎた。
<了>
最後までお付き合いいただいた皆さま、本当にありがとうございました!「私の天使」遂に完結です。
感想・コメントお待ちしております!
25分にあとがきも投稿しますので、よろしければそちらもどうぞ。




