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第1話 運命の始まり(1)

本日はあと一話投稿です。

 私の名前は愛本叶多。

 十六歳、高校二年生。雨宮あまみや花供侘(はなくた)市在住。

 私が通う私立宿根(すくね)高校は、真面目に勉強をするよりは遊びが好きな人が集まってる方だ。

 偏差値は中の下。千人近いマンモス校だから、目立たないカースト下位も大勢いる訳だろう。

 でも、基本的にはフレンドリーな雰囲気で、居心地はそんなに悪くない、はず。

 仲のいい人同士は部活動関係なく十人、二十人で遊びに出かけることも多いし、みんな恋愛も積極的だ。

 でもそれはつまり、結構ドロドロした人間模様もあったりすると言うことだ。その手の噂なら、そこら中にあふれてる。

 でも、特に荒れてる訳でもないし、いい学校だと思う。……少なくとも私は好き。

 もっとも、いわゆる風紀の乱れ、みたいなのは全開だ。校則違反は多いけど、事実上見逃されている。髪を染めたり、スカートをめちゃくちゃ短くしてたりとか。女子はみんな(私も結局それに合わせる形で)、少なくともバレない程度には短く折っている。むしろ長い方が浮いてしまう。先生たちも、元の長さなんて覚えてないに違いない。


 一昔前はケンカばっかりしてる不良集団みたいなのもいたらしくて、何度か警察沙汰になったとか。不良なら最近もいるらしいけれど、私は幸い会ったことはない。

 そういう人たちとは、関わらなければいいだけの話だ。花苦侘市が(というか雨宮県全体が)治安が悪いのは、今に始まったことではないし。


 そう言う私は学校でどういう立ち位置なのかと言うと……そんなに目立たない普通の子、としか言いようがない。

 部活の部員とは仲は良いし、友達からハブられたりしたこともない。でも、あまり遊び上手という訳でもなく、恋愛経験も乏しい。一部の同級生みたいに、先輩に誘われて夜の街に遊びに行く……なんて勇気は無い。


 でも、昼間に大人数で遊ぶのは普通にOKだ。それくらいの社交性は、私にもある。

 

 そう言う訳で明日は、見知らぬ先輩達と一緒に、遊園地に行く――もうすぐ、夏休みが終わろうとしていた。

 

*****************************************


 ほとんど接点のないサッカー部の先輩達が、雑多なつながりで下級生を集めたらしい。


 親友の彩音に誘われて、詳細とか聞かずにいつも通り、『行く行く~』みたいなノリで来てみたら、なんかよく知らない子ばっかりだった。

 

 おまけに先輩は男子ばかり。来てみてちょっと後悔……しそうになったけれど、しなかった。ちょっとしたラッキーもあったから。

 

 ただ、高校生にもなってコーヒーカップとか観覧車に乗ってはしゃぐのには、違和感もある。ディズニーランドとかもあんまり好きではない。もちろんそれなりに楽しめるけれど、それをどこか冷めた目で見ている自分もいる。


 それにしても、今日集まった女子はみんな一年か二年ばっかりだった。

多分、「三年生の女子はもう誰かの『お手付き』だったらやばいから、下手に誘うとまずい」、みたいな暗黙のルールがあるせいだ。まあ、そんなの信頼があればどうってことない……とも言えないのかもしれない。たかが遊園地だけれど。


 ……でも、実際のところ。ときどき三年生の集団の会話を聞いてれば分かるけれど、あの人たちは思いっきりに下心ありきだ。どの子が可愛いとかなんとか言ってるし。


「「「最初はグー!!!ジャンケンポンッ!!!」」」

「うええぇぇ――いい!!」

「うぅっわ!まじかよくっっそ!」

「はい外れクジー!ざまあぁ!!」


 ……少し遠くで集まって、何か騒いでる。


 中には一年生のマネージャーで、単に先輩に誘われたからって義理で来てる子もいるかも知れない。少し同情する。でもまあ、慣れればそういう風に扱われて悪い気はしないはずだ。


 いっぽう二年生の女子はふつう、そこまで世間知らずじゃない。そこらへんは心得ているこういう機会がある度に、あこがれの人をめぐって、声に出さない戦いが起こる訳だ。

 ちなみに私は参戦したことはない。そんな機会は当分ないだろうし、って思ってた。



 …………そう、そのはずだったのに。


*****************************************


 二十分後。


 今、私たちは観覧車に乗っている。


 この遊園地の観覧車は二人掛け。

 そしてさっき、男子の先輩方はじゃんけんをしていた。

 並んで待っている間、三年生と何人かの女子たちが、目配せや、何気ない移動を繰り返した結果、なぜか一緒に乗る人が話し合いもなく決まってたわけで。


 ――ああそうか、これが狙いだったのか……って、私は遅ればせながら気づいた。

 

 でも、男子より女子の方が多いし、多分私は余り組だ、と思った。ほとんどの先輩と面識ないし、大丈夫だと思う。もし、全然知らない人と一緒になったら……頑張ってやり過ごすしかないか。


「はあ……。」


 ……そういえば、あの人は誰と乗るんだろう。


 …………気になる。

 

 でも、気にしても嫌な気持になるだけだとわかっている。


 私は違うことを考えようとした。

 そういえばさっき入ったここのお化け屋敷、ローカルな遊園地にしては意外と演出とかもしっかりしてたなぁ、とか。

 私はお化け屋敷で叫んで怖がることができない人間だから、吊り橋効果なんて期待できなかったし実際そんなイベントは無かった。

 いや、ほんとは内心、怖がってる。ただ、顔に出ないだけで。ほんとは誰かの服の裾をつかんでいたい、と思うこともある。でも今回は彩音がずっと叫んで抱き着いてきてたから、そんな必要はなかった。むしろ冷静になった。


 ――抱き着くなら男子にしてよ……。


 大勢で入ると、途中で二・三人ずつに引き離されるイベントがある。そこではぐれて一人になってしまったので、まあまあビビりながら急いで進んだら、さっさと出ることができた。


 そう言えば、この遊園地では最近子供が行方不明になったって噂だ。でもまさか、お化けに連れていかれた訳じゃない。


 ……そうか、あの時二人組になった人たちは、すでにフラグを立てられてたってことか、と気づいた。


 ……じゃあやっぱり私は余り組か。彩音と一緒だと良いな。もしこれで彩音だけ誰かにご指名受けてたら……惨めな気持ちになりそうだ。


 結局私は、考えないようにしていたことを気にしてしまっていた。


 一緒だと嫌というか、困る人も……約二名くらい、いる。


 片方は、単純に気まずいから、そしてもう片方は――


 ふと、そのうち気まずい方の奴が、誰かと並んでいるのが見えた。

 そっちに視線を向けるつもりはなかったけど、その隣にいる相手が銀髪だったから、つい目が引かれてしまった……男だった。


 ――あれ、あの人、男子なのに余り組なの?


 背は高くて後ろ姿はイケメンだけれど、顔はそうでもないのだろうか。


 ……何にせよ、「あいつ」と一緒じゃなくてよかった――と、胸をなでおろしたその時、

 

 私の隣に誰かが立った。


 一緒だったら困る、って思ったもう一人だった。


 その人は、一緒に乗るのが嫌って言うか、もっと違う理由で困る相手だった。

 

 すごく、困る。

 

 だって――


「――よっ、叶多。久しぶり。」

「……結人先輩!?」


 ――私の、好きな人だったから。


この高校はけっこう異性交遊が活発、という設定です。あと、しれっと「夜の街」で遊ぶのも普通、みたいなことを言ってますが、それはこのお話の舞台ではそういう認識、ということです。私にとっては割と「乱れて」る設定なのですが……さすがに実際は、こういう高校は少ないのかな?

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