誰かのために
閲覧、ブックマークありがとうございます。
明日更新予定です。
よろしくお願い致します。
「あのご迷惑でなければ俺が朝食作りましょうか?」
「とうどうのおにいさんりょうりできるの?!」
目をこれでもかと大きく広げ、俺にとてとてと駆け寄ってきた新は俺のズボンを引っ張った。
「多少は出来るかな」
最近はコンビニで買ったり出前取ったりしかしていないが、学生の頃はよく自分で作っていたものだ。
そのため作ろうと思えば簡単なものは作れたりする。
「良いのかい?貴重な休みに料理を作らせてしまって」
「俺は構いませんよ」
「やった、たのしみ」
さて、何を作ろうかとキッチンに入れば、俺の家のキッチンとは違い物がたくさんある。
コンロの上には鍋がいくつかあるも、どれも何故か焦げている。
これはかなりの確率で物を焦がしているのだろう。
雑巾も近くにあるが、その雑巾は何故か燃えた跡があるのだが大丈夫なのだろうか。
下手すれば火事になりかねないぞ。
三角コーナーも丸焦げの何かがいくつか入り込んでいて、先ほど不知火が持っていたものの他にも同じ状況の物があったことが分かる。
もしてして毎朝、料理にトライはしてみてダメだったら外に食べに行くのがルーチンになっていたりするのだろうか。
そのルーチン失くせば2人ともまだ寝ていられるし、物も消費しなくて済むのでは。
何てまだ2、3回会ったか会わないかくらいの隣人に言われたくないよな。
ここは何も言わず、冷蔵庫の中のものを少し拝借してささっと作って部屋に戻るとするか。
「冷蔵庫のものは勝手に使って構わんよ」
「ありがとうございます」
冷蔵庫を開ける前に確認をと思っていた所に声をかけられて驚いたが、家主から許可も頂いたことだし開けてみよう。
そう思いながら開けてみると、俺の家の冷蔵庫と全く異なり食材が沢山入っていた。
これらが黒焦げになるのかと思うと、非常に悲しいものだ。
今日は有効に使おうといくつか食材を出し、頭に描いたものを作り上げた。
人に食べさせるために作るのも、そもそも料理を作るのも久しぶりで自信がないが、とりあえず2人の座っている席へと運んだ。
「うわぁ!おいしそうなオムライス!」
「凄いな…」
「お口に合うか分かりませんが召し上がれ」
キラキラと目を輝かせて見るようなものではないのだが、新は目を輝かせながらオムライスを口にし、おいしい!と言いながら次から次へと口に入れていった。
かと思えば不知火は一口食べて、表情を緩めゆっくりと口に運んでいる。
どうやら口に合ったようで何よりだと思いながら、飲み物を冷蔵庫から拝借し2人の渡せば、2人してありがとうと笑って受け取っていた。
俺も食べるようにと2人に促され食べてみると、なかなか上手く出来ていたようで我ながら上手いと思う。
自分の料理がこんなに美味しいと感じたのは今回が初めてかもしれない。
これはきっと、誰かのために作ったからなのだろう。




