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ヒーローになりたかった  作者: レイ
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きっかけ

「私の子供が通っている幼稚園にね、日本人っていうより米国人って感じの男の人がいるの。おそらく誰かのお父さんだと思う。毎日って訳じゃないんだけど、たまに見かけてね…すっごくかっこいいの」



頬を染めながら話す、職場の同僚に俺は曖昧な相槌を打っていた。

子供も彼女もいない俺が幼稚園に行くことはないし、かっこいいと言われている人物と会うこともないだろうから興味もなかった。



「体格も良くてね、声もかっこいいの。あぁ、今日も会えるかなぁ」



最近メイクが変わって服装も変わったと思っていたが、まさかこの所為だったのかと思っていると、同僚の携帯が鳴り彼女の昼休憩はそこで打ち切りとなった。

俺も仕事に戻るかと席を立ち休憩室を出ると、休憩時間終了まであと45分もあったが、休めば休むほど家に帰れる時間が遅くなるので早めに席に戻ることにした。

あぁ、最後に家に帰ったのはいつだっただろうか。

1週間いや、3週間だったか。

寝たのもかれこれ5日前だった気がする。

今日は絶対に帰ろう、もう限界だと目の下にあるクマに触れながら決めた。


それから10時間後、やっと家に帰れるとよれよれのスーツに身を包みながら愛車に乗り込み、自宅のあるマンション付近を通っていたとき、不審な車を見つけた。

明らかに車のナンバーを隠した状態で走り、法定速度を一切守らないまま俺の住んでいるマンション近辺に車を止めた。

それからしばらくして黒ずくめの男2人が中から出てきて、マンションへ周りを警戒しながら入って行った。

その間に俺は車を駐車場に止め、マンションの入り口付近に身を隠した。

しばらくして男たちは辺りを気にしながら1人は何も持っていなかったが、1人は何かを抱えて出てきた。

タオルで何かを隠しているように見えるそれだが、急いで出てきたからかその中身が少し見えた。


あれは、小さい子供の足?

まさか連れ去りじゃないだろうな?


俺は気付かれないように男たちの後をつけることとした。



「急げ、誰に見つかるか分からねぇ!」



「分かってる!」



「そうですねぇ。見つかってはまずいですよね」



「そうだ、こんなの見つかったらって…?!」



男たちが車にそれを中に入れ込むときの会話に何気なく入り込めば、包みを持っていない男が俺に気付いた。



「誰だてめぇえ?!」



「『誰だ』ですか…そうですねぇ、ここのマンションの住人とでも言っておきましょうか」



そう言うと、男は俺に向かって殴りかかってきた。



「悪いがここでのことは忘」



きっと忘れさせてやると言いたかったのだろうが、俺が拳を避け男の腹部に拳を振り上げたことで最後まで言うことはできなかった。

その一部始終を見ていたもうひとりの男は包みを車の後部座席に運び入れたあと、慌てて運転席に向かおうとするがそれを俺が許さず、男の腕を掴みその場で背負い投げをし、さっき倒した男と一緒にまとめ鞄に入っていた頑丈なひもで体を結びつけ、警察へ連絡を入れた。

警察を待っている間に車から包みを出し、タオルを恐る恐る外せばまだまだ小さい男の子がすやすやと眠っていた。

この騒動で起きないとは凄いな、と感心していればパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

到着早かったな、と思いながらそちらに顔を向けた。

あぁ、この後もきっと事情聴取やらで捕まってなかなか帰れない奴だと思いながら男の子を抱えなおした。

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