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バックアップの男  作者: 桜井あんじ
警察局捜査官連続殺害事件捜査報告書
98/137

29

★今日 午後六時三十二分 (ファイル番号29)



 ダンは玄関の鍵をかけなかったので、あとをつけてきた僕は、やすやすと家の中に忍び込むことができた。水たまりに突っ込んでびしょ濡れの靴に構わず上がり込み、二人が入っていった部屋のドアに耳をつけてみた。ダンが、娘を迎えにとかなんとか言っている。子供の声がそれに答えた。

 僕にはまだ、状況が飲み込めない。僕に情報漏洩の濡れ衣を着せようとしていたダン。そのダンが、ランドルフの娘を大切に預かっている。ランドルフは僕の無実を証明し、ダンを告発する算段をしていたはずじゃないのか。

「ダン、詳しい話はまた明日にでも」

「ああ、君に任せよう。……私は金がいる。なんとしてでも」

 その会話が聞こえた瞬間、僕はハッとした。

 二人は僕が、民間のバックアップサービスに加入しているのを知らない。当然、僕が死んだと思っているはずだ。その上での、この会話……。

――ランドルフは裏切ったんだ!

 僕が死んだのをいいことにダンと手を結び、彼の計略通り、僕を情報漏洩の犯人に仕立て上げる。そして今度は二人で、小遣い稼ぎをするつもりだ。

 僕は銃を握る手に力を込めた。雨でびしょ濡れの髪から、滴がぽたりと一滴垂れた。

――残念だったな。生憎と、僕はまだ生きている。

「金のためにはまず、命が必要だな」

 僕はそう言いながら、銃を構えてゆっくり部屋に入っていった。

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