97/137
28
★今日 午後六時三十一分 (ファイル番号28)
「ケリー!」
「パパ」
ダンの質素な住まいに入り、狭いリビングルームのドアを開くと、そこでケリーがテレビを見ていた。
思わず駆け寄って抱きしめる。
ダンは昨晩俺を殺した後、ケリーを一人で放っておくわけにもゆかず、とりあえず自宅に連れ帰っていたらしい。
ダンは子供向けの声でケリーに言った。
「さあ、ケリー。そろそろテレビはおしまいにして、お家に帰る時間だよ。パパが迎えに来てくれたからね」
「はあい」
ケリーは素直にソファから立ち上がった。
「荷物を取っておいで。傘は持ってるね?」
「うん」
ケリーは隣の部屋に消えていった。
「ダン、詳しい話はまた明日にでも」
「ああ、君に任せよう。……私は金がいる。なんとしてでも」
俺にも、彼が本気なのだと分かった。
その時だ。
「金のためにはまず、命が必要だな」
妙にかん高い声が響き、俺とダンは同時にリビングのドアを振り返った。
そこにはずぶ濡れのスタンリーが、銃を構えて立っていた。




