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★昨日 午後九時十六分 (ファイル番号18)
ケリーの決められた就寝時間、九時を回った。ベッドに入れて絵本を読みきかせたが、いくらも読まないうちに、ケリーはもうすやすやと寝息を立てていた。俺は起こさないようそっと本を置き、安らかに眠る彼女を眺めた。
健康的な髪がベッド脇の仄かな明かりを反射して、艶の部分が輪のように見える。俺はいつもこれを、「天使の輪」と呼んでいた。彼女の寝顔は、まさに天使そのものだ。
明かりを消してベッドルームを出ると、キッチンに向かう。グラス出してバーボンを注ぎ、リビングのソファに体を沈めた。
天井を仰ぎ見ながら、頭の中で自問自答する。
やがて俺はモバイルを取り出した。
「――ええ、そうです。俺にはもう全部分かっています。とにかく、直接会って話しましょう。人に聞かれない場所で。――ええ、かまいませんよ。じゃあお待ちしています」




