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バックアップの男  作者: 桜井あんじ
バックアップの男
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二週間前 午後六時??分 (ファイル番号02)

「これは……」

 椅子の背もたれに深く体を預け、端末のモニタから少し遠ざかる。表示されている情報を、目だけで追っていく。

「ひどいもんだ」

 思わず、独り言を呟いた。

 ファイル類はばらばらで整理されておらず、参照したい情報にたどり着くだけでも一苦労。数字は辻褄が合わず、情報はところどころ欠けたまま。厳重管理されるべきファイルが、誰でもアクセスできる場所に保管されている。

 ずさんな情報管理、その一言に尽きる。

 これでは出来心を起こす人間がいても不思議はない。現場の者なら誰でも、その気になれば小遣い稼ぎができる状況だ。

 今調査している、この件にしてもそうだ。犯人は長期にわたってこれだけのものを外部に流しているのに、今まで発覚しなかったのはこの管理体制ゆえだ。まともに機能している組織なら、とうの昔に露見していただろう。

 人件費の削減で事務員は常に足りず、処理は滞りがち。必然的に、情報管理のチェック体制が甘くなる。結局はそういう事情が、組織の腐敗を招いたのかもしれない。

 それでも、警察局内で横行する不正行為は、長い間黙認されてきた。連日のようにマスメディアを賑わせたのは一昔前の話で、昨今では話題にすらならない。上層部はいつも、形式的な対応をするだけでお茶を濁してきた。

 だが、それもじきに終わる。

 先ごろ警察局のトップが代替わりした。新たに就任した若く意欲的な局長は、就任早々、警察局組織の浄化に乗り出すと宣言して周囲を驚かせた。一通りの混乱を経た後に組織浄化計画は始動し、現在は警察局内のあちこちで、新たなチェック体制やフローの導入が進められている。

 こった肩を軽くほぐしてから、再び端末に向かう。今日はもう一仕事だ。根気が必要な調査を何週間も続けてきたが、その苦労ももう少しで報われるだろう。必ず犯人を暴き、告発してみせる。

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