今日 午後四時五十七分 (ファイル番号47)
スタンリーのことはひとまず病院のスタッフに任せて警察局へ戻ると、ダンが俺を待ち構えていた。
「話がある」
既に終業時刻で、周りの職員たちはいそいそと帰り支度を始めている。俺は言われるままにダンの後について、彼のオフィスに入っていった。
「スタンリーが死んだそうだな? さっき情報が届いた」
「はい。アナフィラキシーショックにより死亡、という医師の診断です」
「そうか」
数秒の間だろうか。俺とダンは、無言のままにお互いの顔をじっと見据えた。
「では例の件は、被疑者死亡で書類送検という形になるな」
「…………」
「君らが外出している間に、私の方で奴の端末を調べた。そして情報漏洩の証拠を発見した」
ダンはそう言って、プリントアウトしたもろもろの書類をデスクに並べた。
「この写真を見ろ」
ダンが指し示した写真は、どこかのいかがわしい雰囲気の店らしい。スタンリーと一緒に写っている男は、この地域にいくつかある小規模組織の一つの幹部だ。
「奴はこうして裏社会の人間と密会して金を受け取り、捜査部の動きについて情報を流していた。サーバーから会議の議事録などを盗み出し、情報を得ていたようだ」
「他人のパスワードを使って、ですね」
「そうだ」
ダンは次に、貸金庫の契約書を見せた。
「金はここだ。足がつかないように現金で受け取り、金庫に隠す。その後マネーロンダリングのためにどこかへ運ぶ」
俺は大きく深呼吸した。
「……それがあなたの書いたシナリオというわけですね、ダン」
ダンは太い眉をぴくりと動かし、俺を見た。
「茶番はもういいでしょう。スタンリーは冤罪で、これらの証拠は全て偽装されたものです。俺には、最初に見た瞬間から分かっていたんです」
「最初に見た時から――、だと?」
「そうです」
「……なぜだ?」
俺は少しの間を置き、そして言った。
「スタンリーは、『情報の漏洩』ではなく、『情報の改ざん』をしていたんです」




