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バックアップの男  作者: 桜井あんじ
警察局捜査官連続殺害事件捜査報告書
132/137

63

★今日 午後九時四十五分 (ファイル番号63)



 ここからは距離があるので、その爆発音は、車のバックファイヤー程度にしか聞こえなかった。幾重にも重なる薄汚い建物の向こうから、白煙が一筋立ち昇るのが見える。人々のざわめきが遠くに聞こえる。

 やっかいな荷物も未払いの支払いも、そして秘密の証人も、全てこの世から消えてくれた。

 俺は一仕事終えた充足感に包まれて、灰色の夜空を見上げる。

 まったく、この濁った空気に霞む摩天楼の下では、どんなことでも起こり得るのだ。

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