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昨日 午前??時 (ファイル番号09)
曲がらないよう慎重に針を取りつける。空打ちをしてから、迷わず、すばやく、正確に刺す。場所は二の腕だ。跡が残らないよう、前回の箇所から二センチ程ずらすのも忘れない。もう長いこと日常的にこうしているので、シリンダーを押す手つきにも迷いはない。焦らずゆっくりと行う。
皮膚に空いた小さな穴を通り、薬が体内に流れ込む感覚。頭の中で数を数え、そして、深い深い安堵のため息をつく。
針を抜いて後始末をした。
むろん、初めの頃は抵抗があった。こんなものを必要としない生活を、想像してみることもある。だが結局のところ、この薬に人生を支えられているのだ。この薬があれば大丈夫という安心感は、一種の自己暗示かもしれない。いずれにせよ、これは必要なことなのだ――。




