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バックアップの男  作者: 桜井あんじ
警察局捜査官連続殺害事件捜査報告書
129/137

60

★今日 午後六時四十二分 (ファイル番号60)



 間一髪。俺が叫ぶのがほんの少し遅ければ、今頃笑っているのはダンだったろう。

 ダンは心臓を射抜かれ、勢いで後ろに倒れ込んだ。俺は慌ててその体を支えた。もしリモコンがぶつかって作動したらことだ。

 ダンのポケットを探り、リモコンを取り出す。そうしてから彼の体を床に横たえた。

「よくやってくれた、スタンリー。助かったぞ」

「い、いや、その、僕は……。だって、こうするしか……」

 スタンリーは青い顔で震えている。まあ無理もない。

「初めてか? 人を撃ち殺すのは」

「…………」

 俺はダンの手に握られたままの銃から指を外し、手に取った。Mー458スペシャルだ。

「そう怯えることはないさ。どうせ、バックアップがあるんだからな」

「だ、だけど、」

 その言葉を最後まで待たずに銃声が響き、スタンリーの体は床に崩れ落ちた。それはまるでケリーが遊び飽きて放り出した人形のようで、現実感がまるでなかった。人の死というのは、案外この程度のものなのだ。撃たれたスタンリーにも、最後まで何が起きたか分からなかったに違いない。

 彼が完全に息絶えていることを確認してから、俺は手にした銃とリモコンをそばのテーブルに置いた。

「まったく、君のおかげで大変な目に会った。もっとずっと早くに、こうしておくべきだったよ」

 独り言を呟き、スタンリーの死に顔を見下ろす。

 飲み物にナッツを落としただけであっさり「事故死」してくれたので、すっかり安心していた。まさか個人でバックアップサービスに加入していたとは。

 俺の言葉が聞こえるはずもなく、スタンリーはただそこに転がっているだけだった。

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