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バックアップの男  作者: 桜井あんじ
警察局捜査官連続殺害事件捜査報告書
119/137

50

★今日 午後五時二十七分 (ファイル番号50)



「『取引』――だと?」

 ダンは怪訝な顔をした。

「俺は、スタンリーを表に出したくないんですよ」

「……なるほど、な」

 聡いダンは、俺の言わんとすることをすぐに悟った。

「私を告発すれば、濡れ衣を着せられそうになったスタンリーにもスポットが当たる。そうなれば痛くもない腹を探られ――、いや、実際には、痛い腹か」

 ダンはくつくつと笑った。

「その通りです。スタンリーが情報漏洩の容疑者と聞いた時には、内心焦りましたよ。情報改ざんとはまったく関係のない件で、彼が目をつけられるとはね。思ってもみませんでした。スタンリーが情報漏洩犯であろうとなかろうと、このままでは情報改ざんの件まで明るみに出てしまうと……」

「そうなれば当然、誰が顧客だったかも洗い出されるからな」

 ダンの言葉に俺は頷いた。

「スタンリーの情報改ざんの件を伏せたまま、端末の証拠が偽装だと証明することは困難です。容疑者を特定したやり方も、スタンリーの『スキル』を活用したものですから、堂々と言うことができません。現状は俺にとって、あまり有利とは言えないんです」

「それでも君が、私の秘密を握っていることには違いない。いわば切り札だな。もし私が計画通り、スタンリーを犯人に仕立て上げたら……」

「その時はもちろん、俺も黙っていません」

「つまり我々は互いに弱みを握り合い、身動きが取れない。そういうわけだな」

「その通りです。俺があえてあなたに弱みをさらしたのも、それを理解して欲しかったからなんです。つまり、俺たちが今まで通り、『良き友人』でいられるということを」

「良き友人同士、協力し合おうというわけか」

 さすがはダンだ。察しがいい。

「そうです。今後はもっと安全に、ダークウェブを使って稼ぐのはどうでしょう。スタンリーがやっていたように。俺にはノウハウもありますから、二人でビジネスをして稼ぎは折半。計略に時間を費やすより、よほど有意義じゃありませんか」

「……なるほど」

 ダンは鼻で笑った。

「まさか君が、こんな落とし所を提案してくるとはな……」

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