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★今日 午後一時五十八分 (ファイル番号42)
「……話してくれて助かったよ。おかげでようやくはっきりした」
俺は硬いベンチの上で背を伸ばし、息をついた。
そう。情報漏洩をしていた真の犯人。スタンリーに濡れ衣を着せて保身を図り、そして、昨晩俺を殺した人物。
それは――。
「実を言えば、『俺』は、知らなかったんだ」
俺は腹をくくった。俺の言葉に、スタンリーは戸惑った顔を見せる。
「え?」
「昨日の『俺』と、今ここにいる『俺』は、別人なんだ」
「それは、どういう……? あ、ま、まさか!」
スタンリーは幽霊でも見たような顔で、ベンチから腰を浮かせた。
「き、君は……、バックアップなのか!?」
「その通りだ」
「それはつまり、君は昨日……」
「ああ。殺された」
スタンリーはつぶらな目を瞬かせ、身震いした。そして再びベンチに腰を落ち着けた。
「彼に……?」
「そうだろうな」
俺はスタンリーの方に向き直った。
「これで分かっただろう。犯人は突き止めた。だが、俺たちは慎重に行動しなければいけない」




