しゅら
ひとつ ひとよの ひとごろし
ふたつ ふたおや なみだして
みっつ わがこを てにかける
よっつ よいどき なげくとき
いつつ このみは しゅらとなる
むっつ にくきは むらびとぞ
ななつ なくこも みなごろし
やっつ やがては よもあけて
ここのつ このみが はてるまで
とうで とうとう じごくいき
ひとつ あかごが うまれおち
ふたつ おにごと ばばのろい
みっつ ややこを まもるため
よっつ かくまい はかたてる
いつつ そのはか あばかれて
むっつ さしずぞ むらはちぶ
ななつ なくなく てをかける
やっつ わがこに わびながら
ここのつ このみを しゅらとなす
とうで じごくは ここにあり
・原文
ひとつ 人世の 人殺し
ふたつ 二親 涙して
みっつ 我が子を 手にかける
よっつ 宵い時 嘆くとき
いつつ この身は 修羅となる
むっつ 憎きは 村人ぞ
ななつ 泣く子も 皆殺し
やっつ やがては 夜も明けて
ここのつ この身が 果てるまで
とうで とうとう 地獄逝き
ひとつ 赤子が 生まれ落ち
ふたつ 鬼子と 婆呪い
みっつ 稚児を 守るため
よっつ 匿い 墓建てる
いつつ その墓 暴かれて
むっつ 指図ぞ 村八分
ななつ 泣く泣く 手を掛ける
やっつ 我が子に 詫びながら
ここのつ この身を 修羅と成す
とうで 地獄は ここに在り
・訳文
人の世の、人殺しの話。
両親共に涙を流しながら、我が子を殺してしまう。
夕暮れどき、嘆き、悲しみ、憎しみで心が修羅となってしまう。
憎しみを向ける相手は、全ての村人。
泣き叫ぶ子供だろうと容赦なく皆殺し。
やがて、夜が明けても、血濡れた修羅は止まらない。その身が果てるまで。
そして、とうとう息絶え、地獄へ落ちてしまった。
ある夫婦の間に、赤子が産まれる。
しかし、祈祷士の老婆が、「凶兆があった。この赤子は鬼子である。今殺さねば必ずこの村に災いが訪れるであろう」と、呪いの言葉を告げた。
夫婦は、産まれたばかりの我が子を守るため、子を匿って偽物の墓を作った。
しかし、村人はその墓を暴いてしまい、赤子の骸などないことがばれてしまった。
それから、夫婦は村八分にされ、働きに出ることも出来なくなってしまった。
追い詰められた夫婦は、愛する我が子に詫びながら、泣く泣く殺してしまった。
殺してしまって、悟る。
この世は地獄だ。この場所こそ地獄なのだと。
そうして、夫婦は修羅となり、村人たちを殺してしまった。