小悪党3人組と領主様
事件は俺たちが一件目の家を見に行く途中で起こった。
目の前を物珍しそうに歩いていた少女が突然、見覚えのある3人組によって馬車に連れ込まれようとしていたのである。
しかしその男たちにとって不幸だったのが攫おうとした少女の抵抗が思いのほか強かったことと、少女を殴ろうとして躱された拳の先に俺がいたことであろう。
◇
あまりに唐突な出来事で俺は少女が攫われているのをただ見ているだけだった。
しかし男が振り上げた拳が自分に向いてやっと現実に帰った気分になり反射で拳を受けようとしたのだが、気づいた時には男を殴り飛ばして気絶させていた。
男たちは唖然。俺も唖然。
先に我に返ったのは男たちの方だった。
「お前なにしやがっッ!てめぇ昨日の飯屋のクソガキじゃねえか!やっぱ俺らの邪魔しに来たんだな!」
誰だこいつ。こんな厳ついオッサン知り合いにいたかな。
あ、居酒屋の大将か!顔似てねーけど。
ごめんな大将。邪魔する気はなかったんんだ。
そんなことを考えていると、男がキレた。
「シカトぶっこいてんじゃねーぞ!」
「うわあぶな。ああ、お前ら宿屋にいたヤツらか」
思い出した。そういえばいたわこんな奴ら。
「なめてんじゃねええええええ」
男が殴り掛かってくる。
あ、やべこれは避けられない。
そう思った瞬間体が勝手に男の漢に蹴りを入れた。
俺は蹴った時の感覚で吐きそうになり、男は白目を剥き泡を吹いて倒れ、周りの漢は自分のをおさえて青い顔をしていた。
隣にいたノエルが一人言のように言った。
「よし、私があげた女神の力はちゃんと発動したみたいね」
「え?これお前のせいなの?俺吐きそうなんだけど」
「別に自分のをやられたわけではないでしょう?」
そうだけども。やはり女にこの気持ちはわからんか。そう思い男に合掌をした。
騒ぎを聞きつけたのか、すぐに昨日の優男と同じ鎧を着た兵士が駆け付けた。
事情を聴かれた俺があったことを伝えた。
俺が何もしていなかった残りの一人は股間をおさえて震えていたので三人とも兵士に引き渡してそのまま行こうとしたのだが止められた。
「待ってください」
俺たちを止めたのは誘拐されそうになっていた少女だった。
少女は周りの兵士が止める前にこう言い放った。
「私はフェリアス=ジュリエット。このジュリエットの町の領主の娘です」
「はい?」
俺はめんどくさそうになったなと青く澄んだ空を見上げた。
なんやかんやで不動産屋は返され、俺とノエルはデカい屋敷の食堂のようなところで高そうな服を着たオッサンと刺身を食っていた。
助けたフェリアスとかいう少女はオッサンの隣に座っている。
「この度は娘を救ってくれたこと。本当に感謝している。褒美などもあるがまずは食ってくれ」
途中から話し方が雑になっているところを見るに、このオッサンは結構雑な性格なんだろう。
俺たちは軽く頭を下げてから食事を始めた。
普段食ったならうまいであろう刺身も今の俺には味は分からなかった。
ノエルはさすが女神というべきなのか「あ、これおいしいわね」とか言いながら食っていたが。
食事も終わり再びオッサンが口を開いた。
「どうだった?我が町の魚は」
「はい。とても美味しかったです」
「それは良かった。さて、改めて自己紹介をしようか。俺はガラエヌだこの町の領主をしている」
「娘のフェリアスと申します」
「旅人の檜山総一郎です」
「ノエルです」
「ふむソウイチロウとは変わった名だな」
「よく言われます」
ここは適当に話を合わせておく。
「では、ソウイチロウ殿ノエル殿。この度の我が娘を救っていただいた褒美として金貨200枚を渡す」
その言葉に俺とノエルまでもが目を見開いた。
「ま、待ってください領主様!俺...私たちは当然のことをしたまでです!そんな褒美をいただくことはできません」
「今回のような事を当然の事と言うか。その態度、立派である。なおの事おれはそなたたちに褒美を与えたいが、金は要らぬという。何か望むものはあるか」
その問いに答えたのは俺では無くノエルだった。
「ではご領主様。家を所望いたします。私たちはこの町で店を営みたいと考えております。そのための家をいただければと」
「そんなものでかまわぬのならすぐ用意させよう」
領主様はそう言って近くのメイドを呼び
「今すぐ店を営めるような家を用意し、即刻生活ができるよう整えよ」
と言った。
「「ありがとうございます」」
「お父様、よろしいでしょうか」
「ん?どうしたフェリアス」
そう言ってから退出しようとすると、待ったをかけたのはまたもフェリアスだった。
「お二人ともこの町に来て日が浅いと聞きます。そして私ももう16です。
将来この領を継ぐものとして町の雰囲気などを肌で感じておきたいのです。
なので私もお二人のお店を手伝いながら人々との交流がしたいのです」
「「?!」」
「なに?いやお前がそういうのならばお前に必要なことなのであろう」
「ソウイチロウ殿、ノエル殿このような落ち着きのない娘ではあるがどうか面倒を見てやってくれないだろうか」
そう言って領主様自ら頭を下げた。
俺にも、そしてノエルにもこの場でノーと言える根性はなかった。
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