【エッセイ1話完結】書けない青年の苦悩
書けない青年の苦悩
青年はキーボードをたたいた。
インターネットでいつものように、「小説書けない」と「小説書くことがない」などどといった内容の事を検索した。
どこを調べても、とにかく書きましょうだとか、書きたいことを見つけましょう、だとか。
書けない。書くことがないのにも関わらずなぜ青年は小説を書きたがるのか。
それは少年時代の夢だった。
その少年は大好きなライトノベルがあって。
大好きなアニメがあって。
それに魅せられた少年は絶対ライトノベル作家になるんだってこころに誓いました。
面白い作品を読んで、自分もこんな面白い作品を書きたい。書けるようになりたいって。
そう思いました。
しかし、そんな感情も長くは続きませんでした。
8年前。
少年は初めて就職した就職先でパワハラにあいました。
その就職先のパワハラで少年は、病気になりました。
病名は統合失調症。
初めは、自分が病気になったことにあまり気付かず、まわりの人は心配してくれて、絶対治るからねと声をかけてくれました。
でも、病気は治りませんでした。
8年の歳月を経て、今でも病気は治っていません。
この病気で少年は大切なものを失いました。
本を読むとか。
書くとか。
嬉しい。楽しい。大好き。
といった感情。感覚。楽しむ力。感じる力。
それら全てを失いました。
統合失調症は100人に一人がなる病気。
その1人になんで俺がなってしまったんだろうって。
毎日苦しみました。
本がもう読めない。
本が楽しめない。
書くのも楽しめない。
もう8年前のような感覚で、本を読んだり、書いたりすることが出来ない。
なんでこんな人生になってしまったんだろうって。
なんでこんな苦しいことになってしまたんだろうって。
病気にならなきゃよかったって。
自分がなりたくてなったわけではないが、そう思った。
物語は共感。
共に感じると書いて、共感。
自分が面白い楽しいと思えることが書けて、はじめて人から評価され共感が生まれる。
感じる力の乏しい俺が何を書いても、もう共感してくれる人はいない。
そう思った。
言うなれば、目が見えない人が絵を書くとか。
耳の聞こえない人に、作曲をさせるとか。
そういう話。
でも、どうなんだろう。
今。
僕。
書いてるじゃん。
ここでキーボード叩いて文字打ちこんでるじゃん。
統合失調症になっても、感じる力が乏しくても。
読んでくれる人がいる。
大切に思ってくれる人がいる。
それって素晴らしいことなんじゃないかって。
それだけで価値あることなんじゃないかって。
統合失調症になっても人生は続く。
人生が終わったわけじゃない。
俺の5本の指さき。
両手。
両足。
キーボードを叩くために、頑張ってる。
だから。
全て失ったわけじゃない。
だから、少しでもいいから。
前を向いて頑張ろう。
後ろだって少し振り向いて、遠回りしてもいいから。
前を向いて、頑張ろう。
今日も頑張って、キーボード叩きます。