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プロローグ

 グオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!


 森の厄災フォレストコングが咆哮をあげる。

 生い茂る草木がビリビリと震える。

 自然が広がっているが、ここはダンジョンの中だ。

 フォレストコングが、敵に「死の宣告」を与えるかのように胸を打ち鳴らす。

 すると、その振動でフロアが揺れた。

 木々にとまっていた鳥達が羽ばたき、逃げていったのを皮切りに――戦闘が始まった。


 フォレストコングに対峙しているのは私一人。

 本来はパーティを組んで倒さなければいけない敵だ。

 私のような若い女性一人で挑もうとしたら、無謀だと止められそうだが………問題ない。

 私なら一人でも倒すことができる。

 実際に今までも何度か倒している。


 ……と、こんなことを考えている間にもフォレストコングが巨体を高速回転させ、地響きと砂埃を引き連れて突っ込んで来た。

 だが、分かっていたことなので難なくかわす。

 私が余裕なのは、フォレストコングがどんな行動をとるか知っているからだ。

 何故知っているのかというと、『前世でプレイしたゲームで何度も対戦したから』。


 この高速前転で突っ込んできた後、フォレストコングはふらつく。

 わざわざ相手に隙を見せる攻撃を出すなんて馬鹿だなあと思うが、それは戦闘を派手にするための仕様だと思うので仕方ない。

 フォレストコングに罪はない。

 「ご愁傷さま」と呟きながらも遠慮無く剣で叩き斬る。

 このふらついている間に物理攻撃を入れると倒れ、少しの間、無防備となるスタン状態に陥らせることが出来るのだ。

 狙っていた通りにスタンになったので、ここぞとばかりにガンガン斬る。

 私は魔法の方が得意なのだが、攻撃力の高い魔法の発動には少し時間がかかる。

 スタン時間は短いので、斬り込んだ方がダメージを与えられるのだ。

 フォレストコングが回復して動き回り始めると距離をとり、遠距離魔法でダメージを与える。


 弱点がないため一気に体力を削れないが、稀に麻痺状態に陥らせることができる雷属性の魔法で攻撃していく。

 暫く続けていると、フォレストコングは立ち止まり、再び胸を打ち鳴らした。

 行動パターンが変更する兆候だ。


 次の攻撃は串刺し攻撃――鋭利な木の根が、途中から無数に飛び出して来るはずだ。

 貫通の効果があるので当たると防御していても相当ダメージを受ける。

 モズの早贄状態にはなりたくないの。

 回避出来るルートを辿りながら、更に次の行動を予測する。

 恐らく眷属の魔物を召喚するだろう。

 召喚されても倒すことは出来るが、時間がかかってしまうので面倒臭い。

 案の定、召喚を始めたのですかさず叩き斬り、詠唱をキャンセルさせた。

 さあ、また地道にダメージを入れていくかと構えたが……。

 フォレストコングは耳をつんざく雄叫びをあげて倒れた。


「あれ?」


 どうやら今の雄叫びは、断末魔の叫びだったようだ。

 思っていたよりもあっさりと倒せてしまった。


「……あれ。私、またレベルが上がったのかな?」


 フォレストコング程度で得られる経験値では、レベルアップしないようになっていたと思う。

 だが、積み重ねていた経験値が溜まったのかもしれない。


「こんなに強くならなくてもよかったんだけどなあ。悲しいほど一人で生きていけるなあ」


 人生二回目。

 ハーフエルフのマリアベルとして生きている今世でも、順調に『ぼっち』ライフを歩みそうだ。

 泣けちゃう。


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