第1話 魔法の言葉ピピカラポレリ
酔っ払いトランスヒューマンの父と、すっとぼけ母と、ネコになりたい女の子の、ちょっと変わった3人家族の日常系SF小説です。
第1話『幻のピピカラポレリ』
ーーー むかーしむかし、ある所にたくさんの壁に囲まれた「トアル星」という星がありました。その壁は透明で見えないのですが、確実にそこにあるのです。その壁を人々は「フツー」と呼んでいました。もしも「フツー」の壁を越えたり壊したりすると、みんなから嫌われたり、トアル星から追い出されるので、フツーの中で生活することが当たり前になっていました。フツーの中にいればみんなとケンカすることもなくて、安心していられます。フツーの中は幸せでした。
ある日、トアル星でとある事件が起こりました。突然空から虹色に光る流れ星が飛んできて、なんとトアル星に直撃したのです!チュドーーーン!!!!
星はめちゃくちゃになり、たくさんの人や生物が死にました。
……と思われましたが、めちゃくちゃに壊れたのはフツーの壁だけ。あとはぶつかった衝撃で、トアル星には虹の輪っかが出来ました。そしてその虹を見た人は、目がキラキラしだし、ある言葉をつぶやき始めました。「…ピ…ピカラ…ポ…レリ…」
その言葉は、魔法の呪文だったのです。「ピピカラポレリ」と唱えると、あら不思議。あんなことやこんなこと、どんなことも魔法の力で思い通り!
この事件の後から、トアル星の生活は大きく変わりました。フツーの壁がなくなったおかげで本当の自由を知り、毎日見えるキレイな虹のおかげでワクワクする心を手に入れ、魔法でなんでも好きなことを好きなように出来るようになりました。「トアル星なんて普通の名前はつまんないよ。そうだ!ピピカラポレリって名前にしよう!」と、誰かが言い始めて、トアル星は「ピピカラポレリ星」と呼ばれるようになりました。ーーー
ベッドで寝転がっている2人。
父「…という幻覚をこないだ見たんだ」
娘「ゲンカクってなに?」
父「起きてる時に見る夢みたいなもんさ。キノコ食べたら見えたんだ」
娘「ふーん」
父はベッドの横に置いてある小さな水ボングを手に取り、マリファナの葉に火をつける。ポコポコポコ…という音とともに、煙を一気に吸い込んだ。
娘「なんでピピカラポレリってなまえなの?」
父はまだポコポコと煙を吸っている。そしてほっぺをパンパンに膨らましたまま、娘を見つめてフリーズした。しばらくしてフゥーと煙を吐く。自分に向かってくる草っぽい臭いのする煙を、娘はうちわをパタパタ仰ぎ防御する。
父「わからん。なんせとーちゃんはキノコで魔法にかけられてたからな。」
娘「まほう…にじのほし…」
娘は想像してみた。とてもとてもキレイだった。
娘「ほんとうにそうなったらいいね!」
父に同意を求めたが、すでに寝ていた。いつもの「ぐーがー」というイビキが、もう聞こえてきそうだった。
娘は試してみたくなった。
人差し指を1本立てて
「……ピピカラポレリ!」
ぷぅふーーーー…
魔法は出た。しかしそれは、隣で寝ている父の屁だった。
つづく
漫画用の台本として、小説でも書いてみました。
そのうち漫画も書く予定です。
のんびりやります。
末永くよろしくお願いします。