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第4話

メニュー画面のありがたいところは右上に時刻が表示されるところだ。窓1つない洞窟の中では時間の感覚などすぐに狂ってしまう。


時刻は午後11時。1日で色々なことがあった俺たちは心身ともに疲れ切っていた。


1つ目小僧たちはもう隣の部屋に移動してしまった。妖怪らしく夜に活発に動くのかと思いきや普通に夜は眠いらしい。


俺と渡邉さんは初めの四畳半ほどの部屋に布団(1セット200DP)を並べていた。


「渡邉さん……起きてる?」

「うん」


身も心も疲れ切っているはずなのに不思議と目は冴えていた。


「ごめん」


今日1日、いうタイミングを逃していえなかった言葉を俺はついに言った。


本来、ボケーっとしていた俺だけがトラックに轢かれて死ぬべきだったはず。渡邉さんは俺を助けるために飛び込んできて……それで死んだ。


「こんなことに渡邉さんを巻き込んじゃって……ごめん」


俺は再度謝った。

渡邉さんは何も答えない。


しばらくの沈黙。


「私ね、今すっごく楽しい」


渡邉さんが答えた。


「学校での毎日も楽しかったよ。でも、どこか退屈だった」


渡邉さんの声が暗闇に響く。


「一つ目小僧にも会えて、仲村君とも仲良くなれた」


渡邉さんが笑った気がした。


「だから、仲村君。仲村君も今を楽しんで」

「……分かった。ありがとう」


それ以降俺たちは言葉を交わすこともなく、泥沼のような眠気に吸い込まれていった。




【2日目 ダンジョンルーム】


「へー、こんな妖怪がいるのが。おっかないな」

「でしょでしょ!」


俺は渡邉さんの私物の『妖怪大辞典』を読んでいた。この本には数百種類の妖怪がイラスト付きで丁寧に解説されている。


ダンジョンモンスターは俺たち2人が知っているモンスターでなければ召喚できない。今、動物を除くと召喚できるモンスターはわずかに数種類しかいない。


召喚するモンスターを増やすには俺が妖怪について知るしかないのだ。


「河童に船幽霊。海座頭、磯女、カニ入道……。海の妖怪ってこんなにいるのか」

「日本は島国だからね。やっぱり海に関係する妖怪の伝承は各地に点在してるよ」


渡邉さんは得意気に言った。


残りDPは3万ほど。食費に2000DPかかるとしても結構余裕がある。

もちろんダンジョン解放時にDPが0は困るが、もうちょっと使ってもバチは当たらないだろう。


そのためにも妖怪を知らなければ。

俺は食い入るように妖怪大辞典を読み進めた。



◇◆

渡邉の妖怪観察日記


1日目


今日から1つ目小僧の観察日記をつけることにします!


1つ目小僧は全部で10匹。

1人はネームドモンスターであとは名無しです。


ダン君以外の1つ目小僧は自我を持っていないようです。ダン君は少し寂しそうですね。仲間をつくってあげたいところですが、ネームドモンスターの数はダンジョンの階層の数に依存するらしく、それはまだ先になりそうです。


2日目


仲村君が妖怪大辞典を読んでいる間、一つ目小僧達が戦闘訓練を始めました。


やっぱり1番強いのはダン君。動きのキレが違いますね。


人間のように訓練した分だけ経験を積めてレベルが上がるようです。


3日目


仲村君はまだ妖怪大辞典を読んでいます。結構長いからまだかかりそうです。


一つ目小僧達はレベルアップしました。全員がレベル2になり、成長の早い子はもうレベル3になったようです。ステータスも全体的に上がりました。


【4日目 ダンジョンルーム】


ついに妖怪大辞典を読み終えた。

妖怪って奥が深いな……


「メニュー」


眉間を指で押しながら俺は召喚モンスターを確認する。


召喚可能になった妖怪は全部で972。随分と選択の幅が広がった。


「お疲れ様、仲村君」

「ああ、お疲れ。妖怪って奥が深いんだな」

「でしょでしょ。気に入った妖怪とかいた?」

加牟派理(がんばり)入道……かな」

「あはは、確かに面白い妖怪だよね」


加牟派理入道はトイレをしている最中に現れてトイレに鳥を放したり使用者便秘にさせたりする妖怪である。


「他にどんな妖怪を召喚するの!?」


渡邉さんは嬉しそうに俺に尋ねる。


「そうだな……」


俺は改めて眼下のメニュー画面に目を落とした。


妖怪は1匹1匹特性が異なる。そのためにもDPの振れ幅も大きい。


1番安い妖怪は『火の玉(5DP)』。1番高い妖怪は『だいだらぼっち(28京DP)』。買わせる気ないだろこれ。


「だいだらぼっちは『地面を削って山を作ったらそれが富士山になって削られた場所は琵琶湖になった』って伝承があるくらい巨大な妖怪だからね……」

「まあ、他の妖怪とは次元が違うか」


ちなみに2番目は『がしゃどくろ(500万DP)』。まだ現実味があるな。


●○


「じゃあこの妖怪でいいかな」

「うん、良いと思うよ」


新たに召喚された妖怪は女性の姿をしていた。


透き通るような白い肌に血のような赤い唇。妖艶な美女だ。

赤い和服を着ていて髪は綺麗に結われている。


前から見たらの話だが。


後ろに回り込むと後頭部に巨大な口。

唇の間から尖った牙が見える。


召喚したモンスターは『二口女』。後頭部に口がついた妖怪である。


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