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第1話

【1日目。????】


老人の姿が消えしばしの暗闇。

体感時間にして2秒後、俺は再び光を知覚した。


俺が立っていたのは四角い部屋の中だった。

床、天井、壁は茶色い土でできていた。四畳半ほどの狭い部屋だ。


そして目の前に横たわる少女。


「おーい、渡邉さーん」

「……………」


俺は渡邉さんの肩を揺する。


「渡邉さーん?」

「むにゃむにゃ……もう食べられないよ」


うわっ、こんなテンプレな寝言を言うなんて……。


数分後、渡邉さんが目を開けた。


「あ、おはよう」

「おはよ……って仲村君!?」


渡邉さんは俺の顔を見るなり慌てて体を起こした。


「ご、ごめん、私寝てた!?」

「まあ」

「うわ……恥ずかしいよもー……」


渡邉さんは顔を赤らめた。

そして、


「あれ?……なんで私生きてるの?」


渡邉さんの顔は一気に真っ青になった。


●○


俺は懇切丁寧に今までの経緯を渡邉さんに説明した。

渡邉さんは数度俺の話に口を挟んだだけで、基本的に静かに話を聞いてくれた。


「そんなことが……不思議なこともあるもんだね……」

「俺が言うのもあれだけど……信じてくれるのか?」

「し、正直言ってまだ半信半疑だけど……仲村君は嘘をつく人じゃないと思うから……」


渡邉さんは伏せ目がちに言った。


「ありがとう。で、これからどうするかなんだけど……あれに触ってみたいと思う」


俺は部屋の隅に置いてある光る球体を指差す。


「あれは?」

「おそらくダンジョンコアだと思う。爺さんが言ってたやつだ」

「なるほど……」


俺はダンジョンコアに近づく。

ダンジョンコアはバスケットボールほどの大きさで蛍光灯のように輝いていた。


俺はダンジョンコアに手を触れた。ほんのりと暖かかった。


『転移者 ナカムラをダンジョンマスターに任命します』


ダンジョンコアはオレンジ色にぼんやりと輝いて、機械音を発した。


「おおっ!」

「アレクサみたい」


驚く俺たちを傍にダンジョンコアはさらに音声を発した。


『ダンジョンサポーターにワタナベを任命できます。任命しますか?』


俺はちらりと渡邉さんの顔を見る。

渡邉さんはコクリと頷いた。


「はい」

『転移者 ワタナベをダンジョンサポーターに任命しました』


俺は改めて渡邉さんの顔を見つめた。


「よろしく、渡邉さん」

「こちらこそ、仲村君」


●○


『それではダンジョンの運営方法についてご説明させていただきます』

「よろしくお願いします」

「お願いします」


俺たちはダンジョンコアの目の前に座り込んで頭を下げた。


『ダンジョンマスター、およびダンジョンサポーターは大きく、3つのことをすることが出来ます』

「あ、待って。メモ取るから」


渡邉さんは通学バッグから大学ノートと筆記用具を取り出した。


そう、ありがたいことに転移の際には身につけていたものもそのまま一緒に転送されるらしい。

死んだ時に持っていた俺たちの荷物は部屋の片隅に積み重なっていた。


「準備OKです。よろしくお願いします」

『……ダンジョンマスター、およびダンジョンサポーターは大きく、3つのことをすることが出来ます』


渡邉さんの言葉に呼応してダンジョンコアは話を始めた。


『1つ目にモンスターの召喚。2つ目にダンジョンの改造。3つ目にアイテムの購入です』


渡邉さんはサラサラとメモを取る。


『1つ目、モンスターの召喚について。

ダンジョンマスター、ダンジョンサポーターあらゆる生物をダンジョンのモンスターとして召喚することが出来ます。

召喚可能なモンスターはダンジョンマスターとダンジョンサポーターの両者が知識としてその基本的な生態や存在を知っているもののみです。ただし、お二人が考えたオリジナルの生物はこの限りではありません。

また、召喚の際には対象の生物の戦闘力に応じてDP(ダンジョンポイント)が必要です。DPについては後ほど解説します』


ふむ、あらゆる生物ということは犬や猿だけでなく空想上の動物も召喚できるということか。


『2つ目、ダンジョンの改造。

こちらもDPを消費することでダンジョンの構造を変えることが出来ます。

ダンジョンの1階層辺りの広さは500m×500m×100mと限りがありますが、DPを消費することで階層を追加することが出来ます。

さらに、ダンジョンの環境はDPを消費することでいつでも変更することが出来ます。また、トラップ等もDPを消費することで作ることが出来ます』


先程からちょいちょい出てくるDPという言葉。簡単にいうと通貨のようなものだろうか。なかなかに大切なものらしい。


『3つ目、アイテムの購入。

DPを消費してアイテムを購入することが出来ます。ダンジョンマスターとダンジョンサポーターが共通の認識をしてなければ購入することが出来ません。

アイテムには大きく分けて5種類のものがあります。

1つ目に食料。

2つ目に家具。

3つ目に武器。

4つ目に宝。

5つ目にスクロール。

宝とは名前の通りオーブや薬草など、市場において価値の高いものです。これを設置することで多数の冒険者をダンジョン内に招き入れることが出来ます。

スクロールは魔法や体術などのあらゆる技を覚えることができる書物です。希少性に応じてDPは高く設定されており、基本的には使い捨てです」


モンスターの時も同様だったが、召喚する物について2人とも理解していないと出来ないというのが少し複雑だ。

仮に俺がチワワを呼び出そうとしても、渡邉さんがチワワを知らなかったら呼び出せない……というわけか。


『続いてDPについて説明いたします。DPとはダンジョンポイントの略称で、ダンジョンのモンスター、アイテム、改造には欠かせないものです。

入手方法は3つあります。

1つ目に物をダンジョン内に吸収した時。アイテムや食料はもちろんのこと、生物の死体もこれに含まれます。生物の死体から得られるDPはそれ生物の生前の強さに応じて変わります。

2つ目にダンジョン内に生物が侵入した時。

これも生物の強さに応じて収入は変動します。

3つ目にダンジョン内に存在する魔素にからのものです。これはダンジョンの敷地と基本的に比例関係にあります。ちなみに現在は1日あたり1DPの収入です。

現在のDPは「メニュー」から確認できます。メニュー画面は「メニュー」と言うといつでも確認できます』


それだけ言うとダンジョンコアはオレンジ色に輝くのをやめ、白色に光り出した。白が通常モード、オレンジが説明モードって感じだろうか。


「よし、書けた。うわー字汚っ」


渡邉さんは自分のノートを見て呟いた。俺に言わせりゃずいぶん綺麗だが。


「言われた通り、DPってのを確認してみるか」

「そうだね、見てみよう」

「「メニュー!」」


俺たちの手元にに半透明の板が現れた。


——————————

ダンジョン解放まで残り30日

保有DP 10


モンスター

改造

アイテム

ステータス確認

——————————


「あれ……?たった10?」

「少なくね……?」

「ま、まあ1DPがどれくらいの価値かもまだわかんないし……」

「そ、そうだよな!」


俺は『アイテム』と書かれた場所をタップする。


———————————

アイテム(全て)

塩おにぎり 5DP

春巻き 4DP

ブロッコリー 2DP

シチュー 15DP

冷蔵庫 3000DP

カルピス(原液) 8DP

水 0DP

——————————


「た、たっか……」

「ええーー……」


おにぎり一個5DP。

ダンジョン解放まで30日ってあったから、今のDPと合わせても40DPしか貯まらない。

と言うことは1ヶ月をおにぎり8個で生き残れと言うこと。

おまけに1人じゃなくて2人で。


「無理だろ……」

「……仲村君、こう言うのはどうだろ?」

「うん?」

「私たちの荷物をDPに変えるんだよ。ほら、ダンジョンに物を吸収することでDPになるらしいじゃん」

「それだ!!」


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