過ぎた時
馬鹿騒ぎばかりしている、8人の男女の幼馴染グループがあった。
その中でただ1人だけ、真面目で大人しい男がいた。その男は周りが祭り騒ぎを起こしても積極的に関わらず、その騒動を笑って見つめているだけだった。
何十年か過ぎその男以外皆死んでしまったある日、そのグループで中心的だった男が何故か当時の姿で蘇る。年老いた男は仰天するもその男と久々に過ごした馬鹿げた1日は何十年ぶりに感じた楽しいものであった。
その日の夕連れ、死んだ仲間達に思いを馳せたらしい中心だった男は、
「明日は昔皆でよく集まった廃坑で落ち合って思い出話をしよう」
と屈託のない笑みを浮かべて言った。
年老いた男は自分も若返った気分で笑顔で約束し別れた。
次の瞬間男が目覚めたのはベッドの上だった。周りにあるのはその男の性格が表れたような質素な部屋だけだった。
夢だと信じたくない男は年老いた身体を引きずるように走って廃坑に向かうが、着いた先には当たり前だが誰もいなかった。
自分は面白いことが出来ないから皆の気分を害さないようと自制し一歩後ろに下がって行動していた男は、そこで初めて自分はもっと彼らと積極的に関わりたかったのだと気付き、1人その廃坑で慟哭の声を上げたが、それで時が戻るはずもなかった。
嘆きの声は、薄暗い坑道にいつまで響いていた。